引き続き対中国での救急救助体制は迷走中
F-15戦闘機にHH-60Wヘリを攻撃させて電子妨害装置の効果確認とか
しかも州空軍救難部隊と州空軍戦闘機部隊による試験
試験の細部は「作戦運用上の非公開事項」として明らかになっていませんが、試験の目的等について関係者幹部は、「過去20年間の対テロ作戦での脅威対処から、アジア太平洋地域での本格的紛争対処への円滑な移行を支援するため」と説明し、W型がこの種の評価受けるのは「初めて」で、「海上において戦闘機から攻撃を受けた場合の、(敵攻撃機のセンサーや兵器システムを妨害する)対処装備の有効性を評価し、将来の同ヘリ訓練や装備品改良に活用するため」と、今更ながら語っています
約2年ぶりに「迷走中」の「対中国の救難体制ばなし」ですので復習
●新しいW型は、G型より強力なエンジンを備えて搭載燃料を増やし、活動範囲を少し拡大したほか、搭乗員スペースの防弾能力強化に加え、改良型レーダーやミサイル探知警報システムといった最新の生存性向上装置を搭載した機体だが、量産機製造契約の2019年時には113機導入を予定してものが、2023年度予算案で85機に調達機数を削減する方針変更が明らかにされた
(ただし米議会は救難救助任務の重要性にかんがみ、2024年に追加で10機、2025年にさらに追加で4機の調達資金を予算に追加し、米空軍の2026年度予算要求には、W型100機分の予算が計上されている)
●HH-60W機数削減の理由は、当時の空軍省計画部長や空軍作戦部長が議会証言しているように、「(想定される対中国の厳しい作戦環境では、)速度270㎞程度でC-130から空中給油を受ける必要があるアセット(HH-60W)では任務遂行が困難である」、「HH-60Wはイラクやアフガン用に導入したもので、対中国用ではない」からで、
●当時の空軍参謀総長以下の幹部は、HH-60Wでは対応不能な、対中国での遠方CSAR(Combat Search & Rescue)任務には、製造ラインが閉じダウンバーストが強すぎるオスプレイは対象外だが、他の可能性がある機体を調査しているとして、米陸軍が当時検討(2024年に計画中止済)の将来長距離攻撃ヘリFLRAA用のティルローター型機「Bell V-280」や、Sikorsky-Boeing社製の「Difiant X」へり等含め、視野を広げて見ていると説明していた
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対中国で、母国から遠い中国大陸近傍での戦いを強いられる米軍兵士にとって、航空機や艦艇が撃墜撃沈されたり、展開先の地上で負傷した場合に、友軍が必ず救出してくれるとの「安心感」「信頼感」は士気に直結し、救命救助活動が「道徳的義務:moral imperative」とも表現される所以ですから、同任務遂行不可能なエリアでの作戦は、米国世論を踏まえれば、米国政権や米軍指揮官にとって命令不可能と言えるほどハードルが高い任務なはずです
そんな軍事作戦遂行の基盤中の基盤である「CSAR:捜索救助任務」構想が、対中国作戦に関して、今頃になっても定まっていないこと自体が驚くべきことですが、無人機の使用検討等があるものの、実質的に「打つ手なし」が現実であり、弾薬確保や前線への輸送能力欠如と相まって、対中国作戦の基礎が揺らいでいる厳しい実態がここにあります
日本にとっても極めて重大な課題です。東シナ海や台湾近傍で米軍機や米艦艇が撃墜撃沈され、救助を求める米軍兵士に、同盟国である日本が救助活動を提供できなかった場合、また先日ご紹介した「患者輸送機能」を提供できなかった場合、米国民感情からも、米軍兵士から見ても許容できるものではなく、日米同盟の根幹を揺さぶるものとなりえることを、日本は認識しておくべきでしょう。
救難救助体制の再検討
「対中国救難検討は引き続き迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/
電動ヘリ&固定翼導入検討「Agility Prime」計画
「固定翼型3か月のお試し試験終了」→https://holylandtokyo.com/2024/02/08/5523/
「固定翼機Aliaの試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/12/05/5267/
「Joby社電動ヘリで試験開始」→https://holylandtokyo.com/2023/10/05/5076
「電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ」→https://holylandtokyo.com/2021/04/13/105/
患者空輸部隊の苦闘
「アジア太平洋大演習で部隊が苦闘」→https://holylandtokyo.com/2025/08/29/12516/
「対中国に備えた取り組み」→https://holylandtokyo.com/2023/06/27/4772/

