米空軍が電動ヘリeVTOLでACE構想推進へ

不便な展開基地での輸送や救助救難任務に
C-130輸送機で一度に数機空輸可能なeVTOL
複数の民生用試作開発機を評価やテスト中
5月のACE演習で一部を試験活用へ

S4.jpg3月31日付Defense-Newsは、米空軍が2020年2月から当時のRoper次官補主導で始めた民生用電動へり(eVTOL:electric vertical-takeoff-and-landing)導入検討(Agility Primeプロジェクト)に関し、3月末に候補の一つで輸送機搭載&輸送試験を行い、5月には本格的な演習(Exercise Bushwhacker)で試作中の電動ヘリの搭載・輸送・組み立て等の検証を計画していると報じています

このような電動ヘリは、米空軍が対中国・対ロシアを想定して全世界で取り組む戦力の分散&機動的運用構想ACE(agile combat employment)における人員や物資輸送、更には救難救助用での活用がメインに想定されているアイディアですが、幾つかの特徴があります

Hexa2.jpg一つは、米空軍が要求性能を出して企業に開発させる方式ではなく、民生用に様々な企業やベンチャーが開発・試作しているものをできるだけ活用し、開発費投入を抑える方式を追求していることで、今回C-130(特殊作戦用HC-130J)に搭載された「Hexa」も、現状では搭載重量や航続距離の点でまだまだですが、その可能性と将来性に賭けている段階です

もう一つは、小型ドローン市場が活性化した際の大きな反省事項として、国防省や国が積極的に関与せずに民間企業の競争に任せていた結果、コストを重視した小型ドローン企業が部品の大半を中国のサプライチェーンに依存することとなり、国防省や米政府機関の導入や使用が困難に直面した苦い過去を踏まえている点で、eVTOLではその過ちを繰り返さないように、民生用の開発であっても「前広に」米軍として関与して行こうとの意図が背景にある点です

米空軍としては、100nm先の場所に、3-8名を輸送でき、速度が100マイル/h程度の電動ヘリ(eVTOL)を、2023年までには実用可能なオプションにまで煮詰めたいとの目標を掲げており、12以上の企業から様々な民生用開発品情報を入手するなど、楽しみなのでご紹介しておきます

3月31日付Defense-News記事によれば
Agility Prime2.jpg2020年2月に開始された「Agility Prime」プロジェクトでは、(取り組みの一つとして)、6企業から民生用のeVTOL開発の情報提供を受け、2020年12月にJoby社の「S4」に米空軍として耐空証明を付与したところであるが、様々な開発途上の技術を生かし、米空軍は2023年までに実用的な形(program of record by 2023)にまとめたいと考えている
(注:6企業は、Phenix Solutions, Joby Aviation, Elroy Air, Moog, Beta Technologies、Lift Aircraft.)

「Agility Prime」プロジェクト担当のJames Bieryla氏は、「我々は従来とは異なる調達法にトライしている」、「厳格な要求性能提示するのではなく、逆の手法で行っている。皆さんの企業では何が出来ますか、と問いかけ、12企業以上から情報を得ることができた。様々な分野で特徴を持つこれら情報をさらに発展させるように促進したいと考えている」と語った
S4 2.jpg同プロジェクトの一環として、3月23-24日に第355航空団(A-10攻撃機を主に、HH-60やHC-130からなる救難部隊を保有)で行われたHC-130J輸送機への搭載試験は、情報提供があった一つであるLift Aircraft社の「Hexa」を使用して行われた

「Hexa」は卵のような形状をした機体で、水上にも着水することができる。3月末の試験ではC-130輸送機に1機のみ搭載したが、機内スペースからすればC-130に一度に「Hexa」を5-6機搭載可能と考えられている。また搭載試験では、「Hexa」1機と支援機材搭載に45分を要したが、手順化すれば15分で搭載可能と考えられる
現時点では「Hexa」は15分程度しか連続飛行できず、1名しか搭乗できないが、基本技術を生かして搭載量を増やすことは可能であろうし、操縦は大部分が自動化されており習熟は容易で、完全自動化運用も開発中である

Hexa.jpgしかし、このようなeVTOLはエンジン駆動と比較して極めて静粛なことから、また輸送の容易性等から、最前線の展開基地での物資輸送の他、偵察要員輸送や安全確保要員の事前派遣等に有用だと、前線部隊から潜在的能力への期待は大きい
米空軍では、複数の候補機体や要素技術の確認試験を行っており、初期段階の各種アイディアに対し、どのように米空軍が関与して行くか等について検討している。その取り組みは民生用として、皆を助ける技術に成熟する可能性を秘めている
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「Hexa」(翼無し)や「S4」(翼あり)の写真からご覧いただけるように、SF映画から飛び出してきたような形状の機体です。そのほかにも「eVTOL」情報収集対象の機体には、興味深い機体が含まれています

Agility Prime.jpg蓄電池でどれだけ推力が得られるのか? どれだけ航続距離が確保できるのか等々、興味は尽きませんが、夢のある話なのでご紹介しておきます

米空軍のACE構想実現には極めて懐疑的なまんぐーすですが、米空軍や専門家の前向きな「知恵だし」や努力には頭が下がります。日本人も知恵を絞らないと・・・と痛切に感じます

米空軍の戦力分散運用ACE関連
「F-15Eに完成弾JDAM輸送任務を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-04
「GuamでF-35とF-16が不整地離着陸」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-28
「米空軍若手がACEの課題を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-13
「中東派遣F-35部隊も挑戦」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-19
「三沢でACE訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-21
「太平洋空軍がACEに動く」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-12
「太平洋空軍司令官がACEを語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-12-10-1
「有事に在日米軍戦闘機は分散後退」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02
「F-22でACEを訓練」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2017-03-08

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