米国は敗北した半導体分野で何をすべきか

賃金格差から製造分野への参入は将来も困難
従来とは全く異なる次世代での異種や3重構造等がチャンス
新設計、新素材、新構造等で優位を取り戻せ

Hudson semi.jpg23日、世界的な半導体不足で自動車やスマホやゲーム機から近代兵器製造に至る様々な影響が出ている中、ハドソン研究所が「Sustaining US Microelectronics Leadership」とのwebセミナーを開催し、現世代での半導体製造では「既に戦いに敗北している」米国の半導体分野立て直し施策について意見交換を行っています

6月に「Regaining the Digital Advantage」とのレポートを発表したBryan Clark研究員主催のイベントで、下院軍事委員会の担当議員や空軍省の主任科学者、関連業界コンサルCEO等が参加して、現状分析や今後取るべき米国の政策について議論しています

Hudson Semicon.jpg単に「企業競争」で「戦いに敗北」しているだけでなく、偽物やマルウェアーが含まれた半導体が中国等から大量に輸入され、米軍装備や兵器にも含まれている可能性が高い現状を「too late to fix」だと認めざるを得ない深刻さの中ですが、次世代で主導権を取り戻したいとの取り組みです

残念ながら、この分野に基礎的知識がないため、ぼんやりとした24日付米空軍協会web記事の推測を含めた概要紹介しかできませんが、雰囲気を感じていただければ幸いです

半導体関連の現状認識
Clark.jpg世界的な半導体の安定供給や信頼性を回復することは、現時点では既に手遅れ状態にある。この安全や信頼性が確保できない供給体制は、半導体への外部からの悪用操作を招きやすい脆弱性となっている
米国防省は、このような供給体制の弱点を敵対国が利用し、スパイ活動や作戦時に当該半導体を搭載した装備の機能不全につながることを危惧している

中国は、半導体産業界に巧みなインセンティブを与え、国として半導体産業を互いに協力させて強固な態勢を作り上げることに良い仕事をしてきた
Hudoson Semi4.jpgまた半導体設計分野の急速な発展においても優秀さを示した。しかし彼らが焦点を当てたのは時代遅れとなりつつある世代の半導体製造であり、例えるなら、20世紀に入っても19世紀に中心だった鉄道や水力発電ダム建設に精力を注いだスターリンを見ているようだ

賃金レベルの格差から、次世代半導体でも劇的な変化が予期されていない製造分野で、米国が優位を確保することは今後も不可能だと考えるが、新素材や新構造を次世代半導体に導入する設計分野では、既に米国内で新たな関連研究開発が行われており、過去に設計分野で画期的成果を上げた経験もあり、今後とも注力すべき分野だ
半導体設計や新素材や新構造の半導体への導入(packaging)においては、「3重構造:triplets」や「異形半導体heterogeneous」が重要になると想定され、米国は現在の半導体生産には不向きでも、将来求められる「付加価値」追加に適している

今後、米国が執るべき施策
Hudoson Semi3.jpg米国の政策担当者は政治家も交え、次世代半導体で米国が世界的リーダーの地位を確保するため、米国が半導体分野で目指す方向やゴールをセットすることが必要である
目標やゴールを定めることは、政府投資の枠組みを構築することであり、その規模や継続可能なビジネスモデルを煮詰めることでもあり、その過程で投資妥当性の見極めも可能になる

米国は、新素材や新製造法や新機能部材の技術革新に向いた体制にあり、目指すべき方向を定めて、政府が投資すれば半導体分野での地位再確保が可能となる
Hudoson Semi5.jpg将来を左右する技術には、「チップへのシステム搭載:system on a chip」や「チップ構造の分散化:disaggregated chip architecture」や「異質構造:heterogeneous」などが考えられ、米国が主導権を取り戻すカギとなる分野となろう。50~60年代にベル研究所が担ったような、基礎科学分野における研究開発への政府の後押しが重要となる

また当面の半導体対策として、「ゼロ信頼性設計:zero trust architecture design」の考え方に注目すべき。仮に不良品やマルウェアを含む半導体がシステムに含まれていても、感染を封じ込め、拡散させないシステム強靭性の考え方や設計思想を導入&普及すべきである

約55分間の同セミナー映像


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「産業のコメ」と言われた(言われている)半導体分野の課題が、「too late to fix」とは苦しい戦いですが、つい最近まで海軍関連の課題をテーマとしてきたBryan Clark研究員(以前CSBA、今ハドソン)が、6月に「Regaining the Digital Advantage」とのレポートを出して新分野に挑戦する姿には活力を感じます

フェイク半導体やマルウェア仕込み半導体がどれほど軍需産業界に流入しているのか不明ですが、恐ろしい話です。過去記事でその状況をご覧ください

44ページの「Regaining the Digital Advantage」現物
http://media.hudson.org.s3.amazonaws.com/Clark%20Patt_Regaining%20the%20Digital%20Advantage.pdf

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