イランとロシアが中東・アフリカで動く

イランは模擬空母を相手にホルムズ海峡で演習開始
ロシアはリビア派遣アセットを増強
小ネタ2件です

Russi Libia.jpg7月24日付米空軍協会web記事は、5月末からロシア空軍のMig-29やSu-24がリビアの反政府勢力支援に展開している件で最新の衛星写真から、追加で地対空ミサイル部隊や大型輸送機による兵員増強が進んでいると報じています

また7月27日付Military.com記事は、6月にホルムズ海峡に近い軍港で確認された「ニミッツ級米空母」そっくりの約2/3の大きさの模型空母が港付近から出た様子が衛星写真で確認されたと報じ、模型空母を使用したイラン革命防衛隊による米空母攻撃演習が行われるのではないかと伝えています

ロシアによるリビア反政府組織の「覆面」支援増強
Wagner Group2.jpgロシアによるリビア反政府グループ(Libyan National Army)支援は、ロシア軍の分身として活動するロシア民間軍事会社「Wagner Group」に兵器を提供する形で行われており、5月25日に米アフリカ軍のStephen Townsend司令官が会見で衛星写真を示し、少なくとも6機のMig-29が反政府組織支配地域であるリビア東部の飛行場で確認されたと発表して公になりました

同司令官は、「ロシアは長くリビア国内紛争への関与を完全に否定してきたが、ロシアが支援する反政府勢力への提供戦力を拡大したことは明らかで、反論の余地はない」、「我々はロシア軍Mig-29が、同じくロシア軍SU-35の護衛を受けつつリビアに飛来するのを、その過程も含め全て監視していた」と語り

Mig-29戦闘爆撃機が、当初シリア内のロシア軍展開基地に移動し、そこでロシア空軍の塗装から国籍識別表記などを消し、カモフラージュ塗装に塗りなおされた過程もフォローしていた」と明らかにし、ロシアの非道ぶりを訴えていました

7月24日付米空軍協会web記事によれば
SA-22.jpg米南アフリカ軍によれば、5月末に確認されたMig-29やSu-24に加え、追加のSu-24戦闘爆撃機、SA-22地対空ミサイル、戦闘装甲車、Il-76大型輸送機及び多くの人員が活動する様子が新たに確認された
米アフリカ軍作戦部長のBradford J. Gering海兵隊少将は、「ロシアは引き続き、民間軍事組織に対して支援を行うことで、好ましくない役割を果たしている」、「新たに確認された装備は、更なる攻勢作戦継続の意図を示している」と声明文で指摘している

更に米アフリカ軍声明は、「仮にロシア勢力がリビア海岸を支配することになれば、次に彼らは長射程のA2AD兵器を沿岸に展開するだろう」、「そうなれば、欧州南部側面に対する極めて深刻な現実的懸念となるだろう」と訴えている

「ニミッツ級米空母」そっくりの模型空母動く
iran_mockup_aircraft_c.jpg6月9日付のAP通信が、ホルムズ海峡に面する都市Bandar Abbasのイラン革命防衛隊港湾施設近傍の海上で、米空母ニミッツ級をやや小型にしたモックアップが確認できるとして、2015年に同様の模擬米空母を使用して行われた革命防衛隊の演習が計画されているのだろうと報じていましたが、当該模型空母が港湾から出て動き出したようです

このモックアップの存在をイラン政府や革命防衛隊関係者は認めていませんが、衛星写真からすると全長200m・幅50mで、本物のニミッツ級空母の全長300m・幅75mに比較すると約2/3の大きさだということです

speedboat Iran.jfif2015年に同様のモックアップが確認された際は、革命防衛隊の演習「Great Prophet 9」で使用され、小型のスピードボートの群れでモックアップを取り囲んで機関砲やロケット弾で攻撃し、最終的には地対艦ミサイルで攻撃して破壊しており、今回もそのような使用が見込まれます

7月27日付Military.com記事によれば
27日に公開されたMaxar Technologies社撮影の衛星写真は、模型空母がタグボートに曳航され、Bandar Abbas近郊の港湾からホルムズ海峡方向に向かっている様子をとらえている
空母の左上からは、革命防衛隊のものと推定される小型高速ボートが波しぶきをあげて模型空母に接近する様子も確認でき、攻撃訓練を行っているようにも見える

Fake CV Iran.jpg現在ペルシャ湾では米空母Eisenhowerが数か月間活動しているが、恐らく交代用と思われる空母ニミッツがホルムズ海峡を通過し、先週末にペルシャ湾に入ったばかりであり、「ニミッツ級空母」を模した模型空母への攻撃訓練は、米イラン関係を考えると挑発的である
ちょうど7月23日には、テヘラン発ベイルート行きのイラン民間機(Mahan Air社のA310型機)に対し、米空軍のF-15Eが2機で接近し、イラン民航機が回避旋回を行って乗客数名がけがをする事態が発生している

米軍側はこの事案についてイラン機が飛行ルートを外れ、シリア内の米軍事施設が存在する半径55nmの飛行禁止ゾーンに接近し、無線による呼びかけに応答せずて侵入したことから、ヨルダンから飛来して警戒飛行を行っていた2機のF-15Eを確認のため指向したと説明し、民航機の1000m以内には接近していないと説明している
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Mig-29.jpgイランの模擬空母はともかく、ロシアがロシア軍機の「国籍徽章」を消して、しかもロシア最新鋭戦闘機SU-35にエスコートさせてリビアに送り込んでいるという国際法を完全に無視する非道な行為に出ているにもかかわらず、コロナの混乱で誰もこれに関心を持つものはいない現状です

米アフリカ軍は「NATO南側面への脅威」と表現して国際社会に訴えていますが、米政権でさえ動きがあるのか不明です

最近は、日々発表される「今日のコロナ感染者数」にも何も感じなくなってきましたが、世界の安全保障問題について無関心・無反応になると、「いつか来た道」をたどりそうで心配です

それぞれの関連記事
「ロシアがリビアにMig-29」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-27
「ホルムズ海峡にイランが模擬米空母を設置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-10

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