参入企業が60年変化ない固体ロケットモーター製造の革新へ
3Dプリント技術で新規投資極限し大量&迅速かつ安価に
パーツ自社生産でSupplyチェーン問題も回避へ
11月1日付 DefenseOne 記事が、ウクライナや中東紛争で需要が急増して製造が追いつかない各種ミサイルやロケットの推進装置・固体ロケットモーター製造に、3Dプリント技術を導入して新規設備投資を局限しつつ、大量迅速かつ安価な製造に挑戦するコロラド州の企業「Ursa Major社」を、同社製造責任者へのインタビューを交え紹介しています
Ursa Major社 は僅か18ヵ月前にこのプロジェクトを着想し、段階的に製造技術を確立しつつある企業ですが、既に今年試作したロケットモーター300基以上を試験燃焼させ、製造技術の確立と品質の安定に自信を深めていると、同社の製造責任者であるBill Murray氏は取材にアピールしています
Murray 氏は、実質上この市場を独占してきた2社 Aerojet Rocketdyne と Northrop Grumman では、柔軟性に欠けたロケットモーター生産方法が60年以上変わっておらず、長い納期の工具に依存し、部品不足に陥りやすい高価な生産ラインを使用していると現状の問題点を厳しく評価し、
例えば米海軍は、敵ミサイル迎撃に使用しているSM-3ミサイルの在庫を、過去1年間の中東方面での戦闘で使い果たしており、既に「持続不可能」な状態にあるが、世界的紛争により既存の生産ラインが圧迫されているため、国防総省が新たな生産ラインの育成に迫られていると状況を語っています
そこで Ursa Major社は、民間投資家の資金を活用して技術開発を促進する米国防省創設の枠組みから約 18億円の資金援助を受け、3Dプリント技術で高価な再設備投資を必要とせず、多様多種なロケットモーター製造を可能にする「Lynx」と呼ぶ新しい製造プロセス構築に取り組んで今に至っています。
また Murray氏は、既に大量の受注を抱えて余力のない関連サプライチェーンへの依存度を下げるため、多くの部品をコロラド州とオハイオ州で拡張中の自社工場で来年から 2026年かけ 段階的に「Lynx」方式で製造開始し、Stinger, Javelin, GMLRS や迎撃ミサイル用など、直径 2~22インチの多様なロケットモーターを大規模に製造開始する予定で準備を進めているとアピールしています
一方で同氏は、ロケットモーター需要は拡大を続けており、近未来で需要を満たせる見込みがない現状から、Ursa Major 社だけでなく、X-Bow や Anduril 等の新興企業も固体ロケット分野への参入を試みており、他にも多くの企業に参入余地がある激しい競争環境が続くとも予想し、油断はできないと語っています
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需要の高まりを受け、お金の匂いに誘われ競争が激化し、技術革新が起こって良質なものが安価に提供されるようになれば最高ですが、上で紹介した記事は「良い側面だけを切り取った営業トーク」のような感じもするので、今後は別の側面から本件を取り上げられるように考えます
とりあえず、「Ursa Major社」「Lynx」「3Dプリント」との言葉を Take Note しておきましょう。X-Bow や Anduri との企業名と共に・・・
弾薬の圧倒的不足間題
「英国は挽回に10年必要」→https://holylandtokyo.com/2023/03/23/4395/
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「CSIS レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
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「弾菜ロードマップ検討」→https://holylandtokyo.com/2023/02/09/4208/
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