将来の負傷者搬送担う多用途無人機ARES初飛行

陸空軍の共同研究でティルローター初飛行1分間を2回
負傷者搬送・兵員物資輸送・ISR等でACE構想を支える
共通機体のモジュール変更で多様な任務に対応目指す

ARES Piasecki2.jpg9月6日、本格紛争における分散運用をACE構想で追求する米空軍が米陸軍と共同で資金提供し、米空軍用を空軍研究所の技術革新追求部署 AFWERX と新興回転機企業が協力して開発中の、前線での負傷者搬送や人員物資空輸やISR 任務を担う無人回転型機(ティルロータ一型)の初飛行に成功した模様です。

初飛行は Plasecki Aircraft 社のペンシルバニア州エシントンの施設で行われ、地上に係留されたままの試験機を約1分間ホバリングさせる初飛行だったようですが、1分間の飛行を 2回 実施して最新の 3重フライバイワイヤ飛行制御システムが安全に機能することを確認したとのことです

ARES Piasecki3.jpgこの機体は ARES-DV (再構成可能システム実証機: Aerial Reconfigurable Embedded System Demonstration Vehicle)と呼ばれ、共通の機体に、任務に応じて異なったモジュールを組み込み「機体を再構成可能」な形態を目指すことから名づけられており、加えて水素燃料電池で駆動する VTOL 航空機の実証をARES-DV を使ってPiasecki Aircrat 社に求める契約が、2023年11月に約55億円の陸空軍共同資金で締結されているとのことです

9月6日の初飛行は ARES-DV の基礎能力実証の第一歩ですが、今後は地面効果の内外でのホバリング性能確認を経て前方飛行試験へと進む予定で、飛行可能範囲を試験で確認後、陸軍が開発主担当の Mobile Multiple Mission Module(M4)を搭載して負傷者搬送(CASEVAC)試験に臨む予定とのことです

ARES Piasecki.jpgただ本件を報じる9月10日付米空軍協会 web 記事は、現時点で ARES-DV試験機の離陸重量や行動半径は非公開で、今後の飛行試験スケジュールや飛行回数についても情報公表がなかったと報じています

Piasecki Aircraft 社は初飛行成功を受け、「自律型負傷者搬送(CASEVAC)、貸物補給、および分散する小規模戦闘部隊支援等の多目的機能に革命をもたらす ARES の可能性を示す第一歩と声明を発表し、米空軍全体で追及している西太平洋地域での対中国想定ACE 構想を担う意気込みを示しています
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ARES Piasecki4.jpg本格紛争で敵の攻撃被害を避けるため、戦力を分散しかつ戦力を移動させて運用するACE(Agile Combat Employment)構想ですが、そのような環境で生じた負傷兵や被撃墜された搭乗員の救助搬送は、極めて重い未着手課題として残されています

特に西太平洋や台湾周辺での被撃墜や機体から脱出した搭乗員の救助は、未だに米空軍として「隠しておきたい大問題」で、そのような背景から突然無人機ウイングマン CCA大量導入の判断が下されたものと邪推しております

現時点で ARESは、あくまで患者を後方に搭乗員の人命リスクを低く搬送空輸することを狙っており、例えば海面やジャングルから搭乗員をピックアップして生還させる機能までは狙っていないと想像しますが、軍として絶対に必要な機能ですので進展に期待したいと思います

救難救助体制の再検討
「対中国作戦のレスキューは迷走中」→https://holylandtokyo.com/2023/05/23/4592/
「対中国の救難救助態勢が今ごろ大問題」→https://holylandtokyo.com/2022/07/15/3463/
「米空軍トップが語る」→https://holylandtokyo.com/2022/09/08/3614/

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