約1年遅れで E-7価格に米空軍とボーイング合意!?

2027年初号機領が28年にずれ込み
とりあえずプロトタイプ2機を3800億円で発注

E-7 Wedgetail2.jpg8月9日、米空軍は最優先事業として取り組んでいるE-3早期普戒管制機の後継E-7Aの導入に関し、難交渉の末に当初計画より約1年遅れで、ポーイングと「プロトタイプの E-TA」2機の製造契約を約3800億円で締結したと発表しました。

米空軍は長期的には、老朽化で稼働率が2割程度にまで落ち込んでいるE-3の後継体制として、宇宙アセットによる地上及び空中移動目標監視体制を確立する構想を持っていますが、技術的にも予算的にも同体制確立にはまだ時間が必要なことから、「暫定的な体制」として 2027年にE-7初号機を受領し、2032年までに計26機の体制を構築する計画を持っていました

Calhoun Boeing.jpgしかし、ボーイング前CEOのでたらめな契約獲得優先姿勢が原因で、固定価格契約 KC-46と T-7で 1兆円自腹支払いを強いられているポーイング社は、CEOに David Calhoun 氏が就任した 2020年4月以降、厳しい事業精査方針の下で、開発案件のリスク査定を厳格化して受注価格を設定する方針が掲げられ、E-7に関しても米空軍特別仕様部分の価格で米空軍側と2倍の開きが生じ、2023年8月頃から価格交渉が約1年に渡り頓挫状態に陥っていたところでした

E-7 は既に豪、韓、トルコが導入済、更に英も近く受領予定の機体で、NATOも米に続いて発注した国際標準に向かうアセットですが、米空軍は、昨今の中国のサイバー戦能力や航空機攻撃能力強化傾向から、「他国機と相互運用性を維持しながら、米空軍独自の仕様も要求」するものの、「英空軍発注仕様の機体と大きな変化はない」と主張し、ボーイングの姿勢に困惑していた1年間でした

E-7.jpg8月9日のプロトタイプ2機契約発表でも、プロトタイプ2機分の価格約 3800億円のみが公表され、2024年7月に計 26機の製造価格について一定の合意がなされたとの報道をフォローするような計画全体の「値札」情報は明らかにならなかったようで、米空軍の当初計画2027年に初号機受領(水面下では更なる前倒し導入を各方面で画策)の目論見は崩れ、少なくとも 2028年以降に遅れることが明らかになったのみでした
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E-3の稼働率急落と中国脅威の高まりを受け、米空軍制服幹部は 2023年前半には声をそろえ、一刻も早くE-7を導入したいと訴えていましたが、その後は上記のような「音なし」の停滞期に入っていました

E-7 Wedgetail4.jpg約1年の停滞を経て話が進展した背景は定かではありませんが、厳格な価格設定方針を打ち出していたCEOの Calhoun 氏が、主力旅客機「B-737MAX」の連続墜落事故や扉吹っ飛び事故で3月25日に2024年末までの CEO 退任を発表し、未だ後任が決められない厳しい現状ですが、この Calhoun 氏退任発表が何らかの「風向きの変化」に繋がったのかもしれません

大きな負の造産「KC-47 空中給油機」や「T-7 練習機」はまだまだ危機を脱したとは言い難い状況で、民間部門の柱「B-737MAX」問題も底が見えない現状ですが、米空軍の活動にE-7は不可欠なアセットですので、その早期導入を期待したいと思います

米軍とボーイングの価格交渉難航
「空軍とボーイングの価格交渉難航」→https://halylandtokyo.com/2024/03/11/5621/

世界的に導入が進むE-7
「NATOもE-7導入へ」→https://holylandtokyo.com/2023/11/21/5262/
「今後の能力向上を米英豪共同で」→https://holylandtokyo.com/2023/07/21/4871/
「E-7とE-3違いを概観」→https://holylandtokyo.com/2023/03/30/4447
「初号機を 2027 年納入契約」→https://holylandtokyo.com/2023/03/06/4358/
「導入を正式発表」→https://holylandtokyo.com/2022/04/28/3186/
「E-3は2023年から退役へ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/01/3074/
「後継機検討のRFI」→https://holylandtokyo.com/2022103/01/2711
「米空軍航空機は高齢」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-27

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