KC-46A空中給油機が36時間連続飛行

米本土北部大西洋岸からグアム往復
搭乗3クルーが16回交代で2回空中給油受け
有事生じる膨大な空中給油要求に応えるための模索
RVSやBoom問題は2025-26年まで解決しないが・・・

KC-46 36hours.JPG11月18日、米空軍輸送コマンドは米北東部大西洋沿岸の基地を離陸したKC-46A空中給油機が、11月16~17日にかけ米本土を横断してハワイやグアム上空まで飛行し、途中でF-22に空中給油するなど36時間・16000NM以上の連続飛行で離陸基地に戻ることに成功したと発表しました。

米空軍輸送コマンド(AMC)はMike Minihan大将が2021年10月に司令官に就任以来、今年5月には同機で24時間連続飛行を行い、9月には「第1級不具合」であるRVSと給油ブーム問題を抱えつつも世界中での作戦投入にゴーサインを出し、更に10月25日にはパイロット1名によるKC-46運用試験飛行を行い、様々な意見がある中で膨大な対中国での空中給油要求に応えるための限界を探る挑戦を続けています

KC-46 cockpit.jpg何度もしつこくご紹介しているように、KC-46空中給油機は国防省や米軍にとって理想的な「固定価格契約」(契約時の設定価格を上回って生じたコストは企業負担になる)でスタートしましたが、エアバス社のA330原型給油機との泥沼の機種選定3回を繰り返す中でボーイングが無理な企業提案を行い、結果として3年遅れの2020年に機体提供開始後も、上記問題以外も含めた多数のトラブルに見舞われて、改善措置完了が2026年にまでずれ込む問題プロジェクトになっています

ボーイング社のKC-46関連「自腹超過負担額」も7000億円を上回る規模に膨れ上がっており、民間機部門期待のB-787墜落事故やコロナ航空不況、加えて大統領専用機の「背伸びしすぎ受注」もあり、大変厳しい企業運営を迫られており、11月中旬に同社軍事部門の大規模組織再編を打ち出しているところです

KC-46 RVS.jpg米空軍にとっても、米本土から遠く離れた西太平洋地域での対中国作戦を見据え、KC-135やKC-10給油機の老朽化で維持費が高騰する中、KC-46の早期運用態勢確立は作戦運用上の最優先課題の一つでしたが、当初2018年には運用開始予定が2022年9月まで4年以上遅れ、その上「第1級不具合」を抱えたままの「見切り発車」状態を受け入れた形となっています。

しかしそんな中でもMike Minihan司令官は、「不具合による運用制限の中でも、乗員や整備員に必要な訓練や各種手順の改善徹底を図ることで、リスクを抑えて実戦運用に提供可能だ。我々には今必要でなんだ。今の戦いに敗北すれば将来は無い」と悲壮な決意を隠すことなく堂々と語り、今年9月に作戦投入宣言を行ったところです

Minihan.jpg同時に前職が太平洋軍副司令官で対中国作戦の難しさを知り尽くしたMinihan司令官は、KC-46の最大能力発揮のため、様々な事前訓練やメディカル面での検証や配慮を行いつつ、連続飛行時間延伸の試みや「操縦者1名・給油操作員1名」での運用などに挑戦を続け、最前線の要求に対応しようと模索を続けています

今回の36時間連続飛行の概要は
Minihan2.jpg●ニューハンプシャー州Pease州空軍基地を離陸し、米本土を横断してハワイ沖でF-22への空中給油を行い、日付変更線を超えグアム島近海に進出した後に引き返してPease基地に帰還
●3組の乗員(パイロット、給油操作員、机上整備員)が搭乗し、36時間の中で16回交代しつつ連続飛行を継続

●36時間の中で、別のハワイを離陸したKC-46給油機から2回の空中給油を受けて連続飛行を継続

●機体には航空医官(flight surgeon)が同乗し、飛行中の操縦者等の身体データをNASAも採用しているアプリを用いて継続測定し、身体反応速度や疲労度などの結果分析から、現在の連続飛行制限などの見直しや必要な対策検討に利用する
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Minihan5.JPGC-130輸送機やKC-10空中給油機パイロットである米空軍輸送コマンド(AMC)Mike Minihan司令官には、今後も注目していきたいと思います。

特に、同司令官は輸送機や給油機だけでなく、他の作戦機にも搭乗員を減らしてローテーション交代での連続運用検討を提案しており、これが米空軍の保守本流である戦闘機族や爆撃機族にどのように対応するのかに興味津々です

Minihan6.jpgなおMinihan司令官は、部隊指揮官ポストについている間は、過去の部隊として又は部隊指揮官として授与された勲章しか制服に着用しない(規則上問題なし)との信念の持ち主として、米空軍内や軍事メディアでも良く知られた人物だそうです

 

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「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/

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「空軍長官:KC-46の固定価格契約は誤り」→https://holylandtokyo.com/2022/06/06/3323/
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