2035年紛争想定でミッチェル研究所が空軍幹部や業界&同盟国関係者60名と実施
「現空軍計画の2035年体制」と「より積極的装備導入体制」の作戦有効性比較
「抑止のための戦力展開」「台湾侵略対応」「侵略後の長期戦対応」の3段階で結果比較
「まんぐーす」は、末尾紹介のリンクからDownload可能な報告書全体や発表会で使用のスライド資料を全て見たわけではありませんが、このWar-Gameや報告書作成に多くの米空軍幹部が軍需産業や同盟国関係者と共に関わっており、米空軍幹部の「頭の中や発想」を同報告書は強く反映していると邪推しておりますので、同報告書を紹介する同日付米空軍協会web記事から、「概要の概要つまみ食い」で取り上げます
【War-Gameの設定】
●War-Gameに基づく報告書の名称は「Rebuilding American Airpower: Balancing the Air Force’s Combat Forces for Peer Conflict」
●政府予算を使用した本研究の統括は、元国防次官補代理として同種War-Game経験を持つ同研究所のMark Gunzinger研究員(元空軍大佐:爆撃機操縦者)
●War-Game参加者は、米空軍幹部の他、軍需産業や同盟国関係者約60名
●2035年時点での中国による台湾侵攻を想定し、「現在の米空軍計画に基づく2035年体制」(Team Doolittle:TD)と「より積極的装備導入を行った場合の2035年体制」(Team Mitchell:TM)が、
・「TD」は、現在の米空軍の戦力造成計画に基づいた2035年の米空軍を想定
・「TM」は、同研究所が仮想設定した戦力構成で、戦闘機の総数は「TD」より少ないが、現調達計画より多くの次期爆撃機B-21、次期制空機F-47、無人ウイングマンCCAや早期警戒管制機E-7を装備した米空軍を想定
●上記2チームが、紛争の3段階への対応(「抑止のための戦力展開対応」「台湾侵略対応」「侵略後の長期戦対応」)を行った結果を比較して分析
【War-Gameの結果】
●「抑止のための戦力展開対応段階」
→両チームとも配備検討時の見積では、中国軍のミサイル射程内に接近するほど、ミサイル攻撃被害により「出撃可能数」が抑制される予想となり、中国軍のミサイル射程範囲内で、同ミサイル攻撃の被害が予期される「第1列島線」の米軍基地に配備する戦力数と、攻撃を受けにくい遠方配備の戦力量配分に苦心
→検討の末、両チームは一部部隊を前進配備し、残りをより遠方待機とした。その結果、継続的な攻撃作戦は困難で、「断続的な:in pulses」攻撃作戦のみ可能となった
→次段階の作戦結果からは、両チームとも、離陸後の戦いよりも中国ミサイル攻撃による地上での被害大が判明
●「台湾侵略対応段階」
→「TD」は、非ステルス航空機とスタンドオフ兵器に大きく依存するため、台湾侵攻部隊の撃退に注力した。一方で「TM」は、台湾侵攻部隊の撃退とともに、中国本土深くを十分攻撃可能なF-47、B-21、その他の能力も備え、十分な長距離侵攻攻撃や空爆作戦の成果をあげ、両チームに大きな差が出た
→中国軍は台湾侵略作戦継続のため、国内部隊を台湾正面へ継続移動&投入の必要があるが、「TD」はこれを阻止する手段が不十分で、「TM」が保有する戦略的攻撃能力は台湾侵略阻止につながる可能性を見せた
●「侵略後の長期戦対応段階」
→両チームとも戦力の消耗が激しく、長期戦を維持することはできなかった。これは過去30年間に渡り、米空軍の戦闘航空アセット数を削減し続けてきた結果である
【War-Game結果からの提言等:12提言の一部】
●米空軍のstand-in部隊とstandoff部隊のバランスを再調整する必要性あり。敵に戦略の変更、つまり防御への転換を強要する戦略的攻撃の重要性を再評価・再検討すべき
●「TD」が基礎としている短距離で非侵入型の部隊への依存ではなく、「TM」のような航続距離
が長い突破力ある部隊を追求すべきで、このため、B-21爆撃機やF-47戦闘機の開発を加速し増産すべき
●敵に妨害されやすい「long-range kill chains」への依存ではなく、外部システムへの依存が少ない「organic kill chains」活用の部隊構築を目指すべき。Game間、両チームが中国による米軍C3ISRT妨害を克服すべく、「long-range kill chains」への依存を減らす可能性を追求した。B-21やF-47の開発加速&増産もこの方向と合致
●衛星ベースと航空機ベースISRシステムの適正混合運用を追求すべき
●空軍基地の防御能力強化
●対中国作戦で重要性が低下する戦力(主に米陸軍)を削減し、海軍省と空軍省に資源を再配分すべき。例えば、第一列島線と第二列島線にある海空軍の作戦拠点防衛のための追加資金に配分すべき
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以前から米空軍協会が主張している「中国内陸部への攻撃」や「次期戦闘機と爆撃機であるF-47とB-21の開発加速と増産」を導くための、「出来レース」的な「War-Game設定と結果分析」のような気がしますが、この研究に国防省予算が投入され、多くの米空軍幹部が同盟国関係者と共に参加し、結果の評価分析や報告書のまとめに関わっている点を踏まえてみるべきでしょう。
台湾有事における「中国内陸部への攻撃」は、2010年代初頭のエアシーバトルConcept検討時に、核戦争へのエスカレーションを招く可能性アリとして葬られたオプションと記憶していますが、米国内の専門家の間で、どの程度の必要性や不可避感をもって考えられているのでしょうか? ウクライナ事案や昨今のトランプ政権の状況から、ハードルが低下しているのでしょうか???
ミッチェル研究所の当該レポートwebサイト
https://www.mitchellaerospacepower.org/rebuilding-american-airpower-balancing-the-air-forces-combat-forces-for-peer-conflict/
「long-range」ではなく「organic」なkillチェーンを目指すべきとの2025年9月記事
→https://www.airandspaceforces.com/long-range-kill-chains-edge-processing/
ミッチェル研究所レポート紹介記事
「台湾正面に旧式戦闘機ドローン大量配備」→https://holylandtokyo.com/2026/03/30/14333/
「F-47は300機、B-21は200機以上必要」→https://holylandtokyo.com/2026/02/19/13938/
「GD構想は北極圏防衛再構築が鍵」→https://holylandtokyo.com/2025/10/16/12736/
「CCAは維持整備負担軽減がカギ」→https://holylandtokyo.com/2025/06/24/11554/


4月9日に米空軍協会ミッチェル研究所が、中国による2035年の台湾侵攻を想定した米空軍戦力の対処有効性を検証するWar-Game結果をまとめた報告書発表会を行い、「現在の米空軍計画に基づく2035年体制」と「より積極的装備導入を行った場合の2035年体制」で作戦した2ケースの結果比較を基に、同シナリオで活躍の場が少ない米陸軍から海空軍への資源シフトの必要性を含む、現在の米空軍計画で改善を擁する12項目を提言しています。
