米豪主催で日韓インドネシアが参加
兵站を重点に従来の4倍規模の装備物資輸送
米軍兵站指揮所を始めて海外に設置
日本の補給拠点も有事用に再構築予定
4月7日付Defense-Newsは、米陸軍が7月から豪州を中心に行う隔年実施の米豪共同陸軍演習「Talisman Sabre」を、対中国を想定した兵站(物資輸送・補給・維持整備)に特化した演習として計画しており、日韓インドネシアを巻き込み、装備物資輸送量が従来比4倍規模になる史上最大規模の兵站演習になろうと紹介しています
先日取り上げたように、米陸軍は大きな課題となっている対中国作戦の兵站支援問題や、ウクライナの教訓から兵站改革の必要性を痛感し、陸軍内に専門の改革チームCFT(cross-functional teams)を創設して、米本土から遠く、かつ厳しい戦いが予期される戦域での「contested logistics」戦略や実施計画を煮詰めると発表しているところです。
米太平洋陸軍はその一環として、年間に複数回計画されている「Operation Pathways」演習を通じ、「兵站改革」に取り組むことになっており、特に昨年から力を入れているフィリピンでの同演習では、地域全体の兵站を支える「Theater Distribution Center」を設置して年間の同演習を支える体制を構築したり、フィリピン内複数拠点と連携して物資配分等する訓練をより複雑化して強化を予定しているようです
今年7月からの豪での「Talisman Sabre」演習は、これまで陸上作戦主体だったものを「兵站中心」に大きく変更して兵站重視を打ち出したもので、遅まきながらの感は否めませんが、米陸軍としての姿勢を良く反映しています。以下では今年の「Talisman Sabre」演習の特徴をご紹介します
●米太平洋陸軍の演習の兵站司令部は、従来ハワイのオアフ島に置かれていたが、今回は初めて海外設置に挑戦して豪州東海岸中部ブリスベーンに置き、他軍種や豪州のメンバーも同居する全く新しい合同兵站センター形態で行う
●豪州内2か所の兵站活動拠点も、実戦を想定して分散した2か所(一つは豪北海岸のTownsville、もう一つは約2600㎞離れた東海岸北部のDarwin)に置き、西太平洋地域の広大な兵站支援を体感する場とする
●経験のない17両のM1戦車輸送や400個もの備蓄パック輸送を含む輸送負荷を課し、事前備蓄品洋上保管船(Army Prepositioned Stock Afloat ship)や未整備な海岸に「映画プライベートライアン風に」上陸する着上陸輸送船(watercraft)、約400mの人工埠頭を活用する西太平洋の島々への物資輸送想定の訓練実施
●不整地海岸の上陸地点から兵站活動拠点Townsvilleまで、約160㎞を戦車部隊が自力で移動する訓練実施
●我の兵站活動全般に対する敵の妨害活動を付与し、兵站活動の強靭性や脆弱性を検証
●豪州の外来生物進入への厳しい姿勢に対応するため、例えば「マダラコウラナメクジ:leopard snail」が車両に付着して侵入しないよう、ハワイの施設で豪州へ持ち込む車両や装備の徹底的な洗浄を数か月かけて行っている
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同記事は、どの演習での実施事項か、演習外での実施かは明確にしていませんが、日本に既に配備されている「配送センター:distribution center」の「再構築・改編:reconfigure」を、米陸軍が計画していると説明しています
また記事は、フィリピンでの活動拠点が昨年演習時の4か所から、今年は9か所に増強されるとも報じており、対中国でアジアの重要なピースであるフィリピンと米国の関係が改善&強化されつつあるのであれば、それは素晴らしいことだと思います。
兵站支援関連の記事
「兵站改革目指しCFT設置」→https://holylandtokyo.com/2023/04/10/4469/
「ウの対中国教訓は兵站」→https://holylandtokyo.com/2022/06/17/3358/
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