ロッキードがLRASMとJASSM増産ライン開設

LRASMとJASSMあわせ年500発製造体制から
年間1000発製造体制用の生産ラインオープンと
ただ海空軍の予算要求総計は2024年度118発

LRASM4.jpg4月3日付米空軍協会web記事が、対中国や台湾有事に最もニーズが高いのに備蓄量が不足している兵器の一つで、射程約1000㎞の空中発射型の兄弟巡航ミサイルLRASM(対艦攻撃用)とJASSM(対地攻撃用)に関し、製造企業ロッキード社が2番目の製造ラインを開設して従来の2倍の生産能力(2弾種併せて年間500発強の従来製造能力から、年間計1000発体制に)を確保しつつあると報じています

特に台湾有事に最もニーズが高いと言われているLRASMは、研究者によれば800-1000発少なくとも必要だと見積もられていますが、現保有量は200発程度で、過去2022年までの調達量は年間海空軍併せて38発、2023年は88発で、必要数に達するのに10年必要だと各方面から懸念の声が上がっていたところです

JASSM Rapid Dragon.jpgちなみに、米議会で議論が始まっている2024年度予算案では、ウクライナの教訓から弾薬の調達数が増加しており、LRASMを海軍が91発、空軍が27発の計118発要求しているとのことで、更に米空軍は年間調達量を4倍にして、2028年まで計380発を契約したいと求めている模様です

LRASMは1発が約4億円だそうですが、ロッキードのLRASM担当営業責任者は、4月3日に米海軍協会Sea-Air-Space会議で、「国防省から弊社に対し、製造能力を大増強しろとの強い要請があり対応した」、「米軍からの要請に応じて対応可能な生産能力確保に取り組んでおり、従来のアラバマ州Troyの工場に第2製造ラインを開設し、自動化推進や製造効率改良に努めている」と説明しています。

JASSM7.jpgまた、地上攻撃型のJASSMとも構造や部品の共通性が高く、同じ製造ラインで生産可能と言うことで、柔軟にLRASMとJASSMの生産増強要望に対応できるとも同責任者は語っています

更に同ロッキード責任者は、米軍がウクライナに提供して活躍している多連装ロケット発射機HIMARSに、LRASMを搭載して発射できるよう改良に取り組んでいるとも語り、機動性のあるHIMARSに搭載して発射機の残存性を確保しつつ、空対艦ミサイルのLRASMを地対艦ミサイルとして活用しようとしていることを明らかにしています

また、現在は空軍B-1爆撃機と海軍FA-18からのみ発射可能なLRASMを、F-35戦闘機や対潜哨戒機P-8から発射できるよう取り組んでいるとも語りました
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B-1からのLRASM発射と標的命中映像約1分

ロシアによるウクライナ侵略勃発後、元米太平洋軍作戦部長やCSIS研究レポート等々から、LRASM生産増や備蓄増が極めて重要だとお伝えしてきましたが、現在でもLRASMとJASSMあわせ年500発製造可能で、その製造能力が1000発に拡大との話を聞き、拍子抜けいたしました(本当なのか、よく確認する必要を感じております)

LRASM6.jpgただ実際には、CSISレポートによれば、空対艦ミサイルLRASM、空対地ミサイルJASSM、艦対艦ミサイルSM-6、対艦トマホークミサイル等の新規発注&製造には(原材料や部品の確保を含めて)20か月以上が必要であるとの指摘もあり、「(大規模紛争の場合)保有備蓄量は僅か1週間で底をつく程度」の現状への危機感は持ち続ける必要があるのでしょう

それにしても、1発が約4億円程度のLRASMを、どうして年間100発程度調達して備蓄しておく動きが無かったのでしょうか・・・戦闘機や空母が優先で、弾薬は2の次との慣習が根強く残っていることが問題です。それから、LRASMやJASSM以外の弾薬兵器が、このように簡単に増産できるとは限りませんのでご注意を

LRASM不足関連の記事
「CSISが台湾有事のWar-Game」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「CSISも弾薬調達&提供問題レポート」→https://holylandtokyo.com/2023/02/16/4212/
「弾薬不足:産業基盤育成から」→https://holylandtokyo.com/2022/10/19/3758/
「ウ事案に学ぶ台湾事案への教訓9つ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/15/2806/

米空軍の弾薬関連予算
「2023年度予算案の各弾薬要求数」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-04-04

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「LRASM開発状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17-1
「米軍は対艦ミサイル開発に力点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-18
「ASB検討室の重視10項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04
「LRASMの試験開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-23
「新対艦ミサイルLRASM」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19

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