4-5月にアラスカで予備試験し、6月にパラオでの演習で検証
大尉以下5名のチームがPACAFの命を受け挑戦し成功
7日間で100ソーティー分50ギガバイト情報を伝送
8月19日付米空軍協会web記事が、F-35運用開始以来の課題とされてきた、「AFNet:Air Force Network」に接続できない設備不十分な基地をF-35が拠点にした場合の膨大な蓄積データの伝送に関し、前線通信部隊の提案を太平洋空軍が予算を付けて検証させ、様々な許認可や組織の壁を乗り越えて世界中で使用可能な手法を生み出し、ACE構想(agile combat employment)推進に大きく貢献していると紹介しています
提案したのはグアムのアンダーセン基地に拠点を置く第644戦闘通信隊で、同部隊の大尉以下5名のチームが今年4月から5月にかけての30日間、西太平洋の離島に見立てたアラスカのアイルソン基地に展開し、F-35を開発したロッキード社や国防省ネットワークシステム庁、更に各地の戦闘通信部隊と連携しつつ、同部隊が保有する約250㎏の機動展開用通信キットを少し改良し、各種ネットワーク連接許可を「官僚制の壁」を乗り越えて獲得し、衛星通信利用許可も得て成功したということです
アラスカでの30日間の検証の成果は、直ちに6月に実施された「Valiant Shield」演習でも試され、パラオに展開したF-35データの伝送利用に成功した模様で、F-35が世界中のどの辺鄙な場所を拠点として活動しても、「空飛ぶ計算機」とか「空飛ぶデータセンター」と呼ばれるF-35集積蓄積したデータを迅速に共有して有効活用可能にする基礎技術が確立された模様です
具体的に第644戦闘通信隊の大尉以下5名のチームが、どのような手法を用いて長年の課題を克服したかまんぐーすは記事から理解できませんでしたが、5名のチームを率いた大尉は、12年の空軍キャリアのうちの9年間も各地に展開してネットワーク構築する業務に従事し、陸海海兵隊のほか同盟国との現地調整に当たってきた経験を持つ「現場を熟知した」人材で、現場目線で温めてきたアイディアをチャンスを生かして実現したようです
記事には、通常辺鄙な展開先に確立される通信速度や通信容量の細い戦術ネットワークを組み合わせ、少し大きい衛星通信用のアンテナを用い、太平洋空軍司令部の「お墨付き」を背景に各種のネットワーク接続許可や衛星通信使用許可も得て実現に至ったと説明されています。また、F-35展開先に必ずしも通信ネットワーク装備を展開させなくても、「hub-and-spoke concept」で実現可能なシステム構成になっているようです
様々な試行錯誤を経てネットワークを構築し、最終的にアラスカのアイルソン基地で、「7日間でF-35が蓄積した100ソーティー分の情報50ギガバイト分を伝送」できたことがどれほどの意味を持つのかまんぐーすは説明できませんが、同チームの軍曹は「これで世界中のどこにF-35が降り立っても、データを共有できる」と語っています
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F-35が「空飛ぶ計算機」とか「空飛ぶデータセンター」と呼ばれる意味をよく理解しておらず、記事が伝えようとしているこの試験の意義を十分に把握できていないまんぐーすですが、通信ネットーク構築と言う極めて重要ながら一部の専門家しか理解していない事項が、「軍事組織の官僚機構」の中で「最適化」されずに放置されている様子が伺えるような気がします
記事の中には「官僚機構」「許可申請」との言葉が何回か使用され、太平洋空軍司令部の「お墨付き」で壁を乗り越えていった様子が示唆されており、現場の意見やアイディアが改善に結び付きにくい現状を暴露した事例のような気がしてなりません
SpaceXがロシアの妨害に負けず、「Starlink」を生かしてウクライナのネット接続を守った迅速適切な対応を、国防省電子戦担当幹部が「涙が出るほど素晴らしい」「国防省ではこれほど迅速な対応はできない」と吐露した教訓も生々しいところですが、なかなが巨大な軍事組織が変われない事例が一つF-35関連で明らかになったと理解しています
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