米空軍がKC-YとKC-Zの検討予定に言及

KC-Yの要求性能を今秋に固めて調達方針を来春に
KC-Zは予定を数年早めて2024年には要求性能検討開始

blended wing3.jpg8月11日、米空軍マテリアルコマンドの「Life Cycle Industry Days」で米空軍の空中給油機計画担当Paul Waugh氏が、KC-46と将来給油機KC-Zの間を支える「つなぎ給油機KC-Y:bridge tanker」の要求性能を今秋にも固め、2023年春にはどのような方針で調達するか明らかにすると述べ、更にこれまで2030年代に入ってから検討するとしていた「KC-Z」について2024年から要求性能検討を開始すると説明しました

blended wing5.jpg先ず、「つなぎ給油機KC-Y:bridge tanker」については、Kendall空軍長官が今年3月に「機種選定はやらない方向」「ボーイング製KC-46の改良型で」との方向を示唆しましたが、対抗馬に名乗りを上げていたロッキードとエアバス社合同チームのLMXT(modified A330 Multi-Role Tanker Transport)に配慮したのか、その後同長官が「米空軍による正式な要求性能検討を踏まえて決定する」「技術動向分析を行って」等と慎重な発言をしているところです

「KC-Z」に関しては、第5世代戦闘機に随伴可能なステルス性を持つ機体までを含めた検討が示唆され、例えば最近BWB(blended wing body)機の技術成熟度を見極める情報収集が関連企業を巻き込んで行われるなどの動きがみられますが、これも空軍長官が従来の予定からの大幅前倒し検討を指示して予備的検討が6-7年前倒しの2023年から開始されることになったとWaugh氏が説明した模様です

「KC-Y」に関してWaugh氏は・・・
LMXT.jpg●米空軍から「requirements:要求性能など」が示されるのを待っており、それが公表された後、KC-Y検討をリードする米空軍輸送コマンドが細部を空軍司令部と詰め、統合要求性能評議会(Joint Requirements Oversight Council)などと調整して決定される。具体的な日程は把握していないが、今秋には要求性能が明らかになるだろう。そして調達方針(acquisition decision)は2023年春に決定されるだろう

●同時に我がマテリアルコマンドでは、2つの企業グループであるボーイングとロッキードからの提供情報などを踏まえた「技術動向の背景調査」を進めており、必要な情報提供を空軍省や空軍司令部に行っている

※ なお7月のFarnborough航空ショーでロッキード社担当幹部は、(機種選定の無いKC-Y機種決定ではなく、)「公平な競争の機会が与えられると期待している」と発言して米空軍の動きをけん制している

「KC-Z」に関してWaugh氏は・・・
KC-Z 3.jpg●当初は2030年代にKC-Zの要求性能等について固める方針だったが、Kendall空軍長官からもっと早く進めよとの指示があり、優先して検討を進めている
●マテリアルコマンドの「Life Cycle Management Center」は、空軍輸送コマンドと連携して2023年には「pre-analysis of alternatives:要求性能の事前検討」を開始し、2024年には同検討を公式に開始する

●その「analysis of alternatives:要求性能」検討を受け、「a family of systems」の中でのKC-Zの位置づけや性格付けを行い、それに基づいて情報提供要求(RFI: request for information)を発出し、KC-Zが追求する残存性、相互運用性、自立運用性程度に応じた実現可能性に関する情報収集を行って具体化に見受けた検討を深化する予定だ
●このKC-Z検討過程で得られた知見は、KC-Zだけでなく、KC-YやKC-46やKC-135の今後の計画にも生かされる予定である
/////////////////////////////////////////

KC-46A9.jpg8月10日~12日に開催された「Life Cycle Industry Days」会議から、「デジタル設計」「F-16の今後」そして「KC-YとZ検討の今後」についてご紹介してきました。

「東京の郊外より」でこの会議を取り上げるのは初めてだと思いますが、Kendall空軍長官やBrown空軍参謀総長が以前から述べてきた「2024年度予算案から本格的な革新」との言葉を予感させるものとなっています

単発の3つの話題だけでは全体像が見えませんが、今秋からの米空軍の動きを予感させるものとしてご紹介しておきます。空中給油機については、「KC-Y」でドロ沼機種選定を避けるためには、「KC-Z」のイメージも見据えつつ「KC-Y」はKC-46改良型でよいとの結論にしたいのでしょう

空中給油機検討の関連記事
「BWB機の技術動向調査」→https://holylandtokyo.com/2022/08/05/3508/
「将来給油機体制検討に企業へ情報提供依頼」→https://holylandtokyo.com/2022/07/11/3425/
「給油機のミニマム必要機数を削減」→https://holylandtokyo.com/2022/06/13/3319/
「KC-XYZの再検討再整理表明」→https://holylandtokyo.com/2022/04/18/3151/
「KC-Yにロッキードが名乗り」→https://holylandtokyo.com/2021/10/05/2260/
「つなぎ空中給油機KC-Yに着手へ」→https://holylandtokyo.com/2020/12/01/333/
「2016年当時の空中給油機後継プラン」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-09-22

世界の安保・軍事情報を伝えたい ブログ「東京の郊外より」支援の会
米国を中心とした世界の軍事メディアが報じている、世界の標準的な安全保障情報や軍事情報をご紹介するブログ「東京の郊外より・・・」を支援するファンクラブです。ご支援お願いいたします。
ブログサポーターご紹介ページ: 東京の郊外より・・・
お支援下さっている皆様、ありがとうございます! そのお気持ちで元気100倍です!!! ●赤ちょうちんサポーターの皆様(3000円/月) ●ランチサポーターの皆様(1000円/月)  mecha_mecha様  ●カフェサポーターの皆様(50...
タイトルとURLをコピーしました