Kendall空軍長官が改めて強い思いを語る
米空軍幹部の発言から同長官の重視姿勢を探る
3月18日付Defense-Newsが、剛腕Kendall空軍長官が昨年12月の講演で語った「7つの優先事項」の2つを占める「次期制空機NGAD」と「B-21ステルス爆撃機」への「自立型無人随伴」について、3月3日の米空軍協会総会と3月9日のMcAleese conferenceで語った内容を紹介しています
端的に言うと、同長官はこの2つの無人機ウイングマンを非常に重視しており、費用対効果や実現可能性を厳しく精査する姿勢を示しつつも、米空軍司令部幹部や米空軍研究開発部門も驚くほどの熱意で取り組んでおり、さすが2023年度予算への具体的盛り込みは時期尚早なようですが、NGADとB-21にそれぞれ別々の自立型無人ウイングマン機(autonomous combat drones)を開発する方向で突き進んでいる様子です
先ず2021年12月の発言の復習
●今ある検討中のコンセプトでは、F-35と次期制空機NGADは、5機以下の無人ウイングマン機とチームとして運用し、有人機操縦者が無人随伴機を操るイメージである。このイメージは多くのチャンスや機会を我々に与えてくれるが、我々は費用対効果や実現可能性を精緻に見極め、今後の進め方を検討する必要がある
●B-21次期爆撃機は高価なアセットであり、その能力を航続距離や兵器搭載面で「増幅」して投入したい。そして無人随伴アセットに委ねたい。それら無人機はB-21操縦者に管制され、強固な敵と対峙するイメージだが、今研究されている戦闘機やNGAD用の「Skyborg」とは別の新アセットを考えている。2023年度予算に2つの新型機予算を組み込む予定だ
●我々はこの新規開発に当たり従来計画に縛られず大きな変更を行う。ただこの際、リスク低減策を学び、成熟技術利用やプロトタイプ利用や各種デジタル設計技術を最大限活用し、必要なものを見極め前進する。2つの新型機開発は秘密プロジェクトとなるため多くを公開できない
今年3月3日米空軍協会総会の発言
●NGADは、NGAD操縦者が管制する5機までの自律的で損耗覚悟の無人機とチームを組む。F-35も無人機と編隊を組む方向である
●米空軍は以前から説明してきたように、単一システムではなく「family of systems」で任務を遂行する方向性を固める必要があり、開発中のB-21爆撃機にも、NGADと同様にチームを組む自律的無人機開発も含む
●ただ、昨年述べた2023年度予算に盛り込む件については、より多くの航続距離やセンサーや兵器等の搭載量を確保する必要があること、また価格が有人機の半分程度であって欲しいこと等もあり、まだまだ細部を詰める必要があるため、関連検討研究予算を要求することとしている
●(別の記者懇談の中で)B-21用の無人随伴機についてはNGADに比べ検討が初期段階でコスト検討も「推定レベル」にあるが、NGAD用はより成熟しており確信を深めつつある
3月9日のMcAleese conference発言
●3日の米空軍協会総会の場で、小規模企業を含む複数の企業と意見交換を行い、自立型無人機に関する「極めて興味深い企業の取り組み」について情報を得ることができた。導入する(2機種の)無人機は、常に最新の新技術を取り入れて改善できるような形態である必要がある
●「明らかなのは、前進して大きな一歩を踏み出す準備が出来ていることである。どれだけの期間が必要かわからないが、成し遂げる覚悟である」
米空軍の関係幹部発言
●米空軍司令部計画部長Clint Hinote中将
現時点に必要なアプローチとして、広範な様々なオプションを吟味している。「中には極めて特異な能力を追求した提案や低価格追求のもの、航続距離や速度や搭載能力などの各要素の一分野に優れたタイプなど様々だ」
kendall長官の問題認識として、近年の航空機開発が高額になり過ぎていることから、支えうる低価格で必要な能力を獲得提供する必要がある点を強調し、「やり方を変えなければ、予算的に米空軍を維持できなくなる」
●Darlene Costello空軍技術開発担当次官補代理
kendall長官が重視する自立型無人機と有人機の編隊運用が、どれほど将来想定される戦闘状況で有効か、また費用対効果面で有効かについて分析を進めている。有効性が証明できれば具体化に進むが、それは2022年ではない
また、NGADより少し遅れているB-21随伴無人機については、NGADと少し異なる分析が必要であり、要求性能も異なるだろう。空軍研究所から広範な情報を得て自立化無人機の分析検討を進めている
●米空軍研究所長Heather Pringle少将
2021年のSkyborg計画(無人ウイングマン計画)関連試験は成功裏に進み、「無人機自立飛行のコア技術が複数の航空機で能力を発揮し、大変興奮した1年だった」
そしてこのコア技術を、GA社のMQ-20 Avenger やKratos社のXQ-58A Valkyrieにも展開し、F-16改良型無人機のX-62A VISTAにも持ち込むことを計画している
●先進航空機ライフサイクル管理担当Dale White准将
Kendall空軍長官の自立型無人機と有人機の編隊運用重視姿勢により、空軍「Life Cycle Management Center」は、米空軍研究所AFRLや空軍作戦運用部署との連携が一層密になっている
米軍が対テロから本格紛争への大きなシフトに挑む中で、自立型無人機と有人機の編隊運用はますます重要性が高まっており、「前線からの要求の焦点の一つで、開発一歩ごとに連携を図っている」
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Kendall空軍長官の部下である米空軍幹部の皆さんの発言ぶりから、空軍長官の剛腕と2種類の無人ウイングマン開発熱意に振り回されている様子を感じてしまうのですが、邪推が過ぎるでしょうか?
同空軍長官は、国防省開発調達担当次官としてF-35問題や米海軍空母やLCS開発問題を仕切ってきた苦労人ですから、コスト管理や実現可能性を冷徹に見極め、「引き際」の判断もできる方でしょうから期待いたしましょう。
でも思うんですが、対中国の西太平洋で、F-35やNGADやB-21の無人随伴機をどこから発進して運用するのでしょうか? 日本も関係ないとは言えません。机上検討やWar-Game状況が気になります
2021年12月9日の同長官講演
「7つの優先事項を語る」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-12-12
無人機ウイングマン構想
「無人機自立化の定義を明確にせよ」→https://holylandtokyo.com/2022/03/10/2716/
「頭脳ACSを2機種目で試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holylandtokyo.com/2021/05/17/1489/
「多用途ドローン投下試験成功」→https://holylandtokyo.com/2021/04/09/103/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1
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「極超音速兵器は少数で良い」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「極超音速兵器の重要性は?」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「7つの優先事項を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/12/13/2521/
「B-21を5機製造中」→https://holylandtokyo.com/2021/09/27/2270/
「中国が核兵器FOBS開発の可能性」→https://holylandtokyo.com/2021/09/22/2264/
「長官着任時の思い」→https://holylandtokyo.com/2021/09/03/2138/
「上院で所信を語る」→https://holylandtokyo.com/2021/05/28/1786/
「Kendall氏をご紹介」→https://holylandtokyo.com/2021/04/30/120/