「自立化autonomous」無人機の分類定義を明確にせよ

自動車の自動運転レベル定義が5段階あるように
技術者と運用者と政策決定者と議会の共通理解のためにも
国防省の無人機の現有定義は大きさ重量飛行高度でのみ分類

Penney5.jpg2月10日、米空軍協会ミッチェル研究所のHeather Penney研究員が、レポート「Beyond Pixie Dust: A Framework for Understanding and Developing Autonomy in Unmanned Aircraft」の概要プレゼンを行い、無人機導入が急速に進む中、「自立化autonomous」との言葉の定義が曖昧なため、技術者と運用者と政策決定者の間の意思疎通に誤解や誤認識が生まれ、無人機の普及や運用に支障をきたしていると警鐘を鳴らしています

Penney研究員は、国防省は無人機の大きさや重量、又は飛行高度によってのみ無人機をクラス分類しているが、自動車業界が自動運転レベルを5段階で定義し、技術者と新車構想者と消費者の自動運転レベルの共通認識を構築している好事例を取り上げつつ、無人機の「自立化autonomous」議論にも明確な共通定義を設けて円滑な議論の基礎を提供すべきだと提言しています

XQ-58A Valkyrie2.jpg例えば同研究員は、現在の無人機の議論では、単に無人機の行動をプログラムによって事前規定しその通りに飛行させる「自動化automation」と、状況を機械学習させ、環境に応じて無人機に行動を判断させる「自立化autonomous」も区別も曖昧なまま技術者と運用者側の議論が進んで途中でプロジェクトが振出しに戻ったり、予算要求時点で議会との意思疎通が混乱しているケースが散見されると問題を指摘しています

このプレゼンを紹介する米空軍協会web記事は、具体的にPenney研究員が提案する「自立化autonomous」議論用の「共通の用語common lexicon」や「自立化程度の分類法」について言及していませんが、実際のレポート発表まで秘密なのかもしれません

2月10日付米空軍協会web記事によればPenney研究員は
Penney6.jpg●来る本格紛争では、強固に防御された空域での戦いが予想され、味方戦力に経験したことのないレベルの多くの損耗が予想されることから、無人機に対する需要は急拡大を続けている。また高度に組織化された敵を混乱させる手段としても、無人機への期待は高まっている
●このように需要が拡大する無人機であるが、様々なレベルの「自立度」の無人機が混在していることから、自律的な無人機とは何なのか、自動化なのか自立化なのか等々、議論の土台となる言葉や用語の曖昧さから、技術者と無人システムを要求する現場運用者間の意志疎通に混乱が生じている

●また、無人機の急速な増加は作戦コンセプトやドクトリンの見直しを迫るものであるが、議論の土台となる用語の定義や言葉の意味の混乱から、現場運用者と司令部勤務者、更には意思決定者間での議論の深化を阻害している
●無人機への関心は米議会でも高まっているが、国防省や各軍種の無人機関連予算要求を議員に伝える際にも、自動化なのか自立化なのか、自立化のレベルは・・・と言った極めて基礎的なレベルの基礎的性能に関する意思疎通が円滑に進まず、相互の不信感につながっている現状もある

●このような問題意識はペンタゴン内にもあるが、依然として無人機に関する議論はその大きさや重量、又は飛行高度で区分されるカテゴリー分類のみで、現場のニーズに対応できておらず、我々のこのレポートがより優れた視点を提供できると確信している
●まず、事前に規定された行動を厳格に繰り返すようなプリプログラムされた「自動化automation」と、独立して自ら環境や状況を機械学習して状況適応型の行動をとる「自立化autonomous」が明確に異なることを理解して議論すべきである

●また「自立化autonomous」に関しては、自動車工業会が設定したような、自立化程度に応じた5段階のレベル設定が参考になる。自動車では、0-2レベルは人間が必ず制御しながら自立化を利用するレベル、3-4レベルは自立化システムが大部分の場面で制御するが、人間が時に介入するレベル、5レベルは全ての環境で自立化システムが人間の介入なしに安全運転を確保できるレベルと規定されており参考になる
Penney4.jpg●自立化レベルの明確な定義は、有人機と無人機の編隊編成成功にも欠かせない。有人機操縦者の自立化無人機への不信感や懐疑感を払しょくし、有効な作戦運用法確立に結び付けるかは、自立化無人機の性能や能力への理解程度にかかっているが、その基礎が確立されていないのが現状である

●敵対的な国では無人機の導入が急速に進んでおり、これへの対処を考える上でも議論の基礎となるのは、「自立化」の明確な定義と関連する用語の設定である
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流行の言葉やキャッチフレーズが独り歩きし、その言葉の定義が曖昧なまま議論が発散する・・・。
軍事の世界ではよくあることで、最近はあまり耳にしなくなった「A2AD」との言葉も、定義が曖昧なことから米海軍が使用を制限して以降、急速に見聞きすることが少なくなりました

Penney.jpg無人機は急速に増加しており、戦い方を大きく変える可能性がありますが、戦闘機パイロットをはじめとする組織的抵抗から、「いい加減に」「なし崩し的に」導入が進む可能性が高く、特に注意が必要でしょう

ちなみにHeather Penney研究員は、元米空軍F-16パイロットです

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