中国がテストした新兵器FOBSを巡る米国防省の動き

10月27日のMilley統参議長発言で国防省の懸念表面化
同日の国防省報道官会見でも発言
6月から中国タスクフォース編成し隔週で会議開催

Austin.jpg10月27日、Milley統合参謀本部議長が8月に中国が実施した新兵器FOBSに関する危機感をTVインタビューで明らかにし、また本件関連でKirby国防省報道官がAustin国防長官が主宰する対中国検討会が定期開催されている様子を記者会見で語っていますのでご紹介しておきます

まず、10月中旬にFT誌が最初に報じた8月に中国が実施したとされるFOBS(Fractional Orbital Bombardment System)試験ですが、中国は宇宙技術開発試験だと認めていませんが、FOBSは低角度で発射され150マイル程度の宇宙低軌道レベルにしか上昇しない核搭載ミサイルで、一般のICBMが北米大陸北極海沿岸のICBM警戒レーダーで米本土着弾の30分前に探知されるのに対し、FOBSは低高度で探知されにくく、5分程度の対処余裕しかないとされるものです

FOBS.jpgまたFOBSは、米国のミサイル防衛監視網がない南半球経由で米本土を攻撃することも原理的に可能で、「背後から攻撃可能」な新兵器と言われています。この兵器はフルシュチョフ時代のソ連が1970年代に一時保有していましたが、潜水艦搭載のSLBMが開発され、1970年代後半に戦略兵器制限条約SALTⅡで弾道保有上限が議論されるにつれて役割を終えたものです

FT誌が10月に入って報じる前、9月下旬にKendall空軍長官がぼんやり危機感を語っており、米国防省としてフォローしていたと思われますが、FT誌報道の際に国防省報道官はコメントを避けていました

9月下旬に空軍長官がFOBSの存在を示唆
「空軍長官:中国が亡霊核兵器FOBS開発の可能性示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21

Milley.jpgところが10月27日放送のBloomberg TVのインタビューでMilley統参議長が、中国が新型の核搭載可能な極超音速兵器試験を実施したことを認め、「我々は極めて重大な極超音速兵器システム試験を目撃した。極めて憂慮すべき状態にある」、「スプートニク・ショックのようだと例えるのが適当かわからないが、極めてそれに近いものと私は考えている。我々皆が強い関心を持っている」と発言する様子が放映され、米国防省の危機感が明らかになりました

そんな中、同27日の記者会見でKirby国防省報道官が、Austin国防長官の指示で6月に中国タスクフォース編成し、隔週で主要幹部や軍人リーダーを集めた会議を開催していること等を説明していますので、ご紹介しておきます

10月27日付米空軍協会web記事によれば
Kirby.jpg●Austin国防長官は1月の国防長官就任前の議会証言で、中国を米国防省にとっての「pacing challenge」と表現し、機会あるごとに中国の攻勢的な動きや軍事技術進歩に警戒を示してきた
●その流れで国防長官は、6月にインドアジア太平洋担当Ely S. Ratner国防次官補代理をリーダーとするTask-Forceを立ち上げ、精力的に専門家への聞き取りや関連レポート等文献のレビューを実施させている

●また、Task-Forceが事務局を務め、長官が主導するブリーフィング&検討会を隔週で計画し、各軍種の長官や参謀総長、地域戦闘コマンド司令官、その他関係幹部を参加させ、情勢報告のほか、作戦コンセプトや訓練計画、予算配分や優先事業などなど、「世界的な体制見直し:global posture review」や次の「National Defense Strategy」に繋がる議論が行われている
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FOBS2.jpgKirby国防省報道官の会見とBloomberg TVのMilley統参議長インタビュー放送の時系列関係が不明ですが、10月27日を境に、「FOBS」との兵器が新たな安全保障上の大きなトピックになったということです

まんぐーすも即席Google勉強の途上ですが、以下の過去記事に若干の解説を乗せていますので、ご興味のある方はご覧ください

FOBS解説の動画(約15分)

9月下旬に空軍長官がFOBSの存在を示唆
「空軍長官:中国が亡霊核兵器FOBS開発の可能性示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-21

米軍の極超音速兵器開発
「米陸軍の極超音速兵器部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-14
「米空軍が3度目の正直でHAWC成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-09-28
「最近の状況整理&2段目ロケット試験成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-27
「米艦艇搭載は2025年頃か」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-24
「豪州とも協力」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-01
「今頃学会と情報収集枠組み」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-28
「3月の極超音速兵器テストは誤差20㎝」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-14
「3軍協力で極超音速兵器開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-15-1
「ボディー試験に成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-22
「空軍開発本格化」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-16
「攻防両面で超超音速兵器話題」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-09-08-1
「防御手段無し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2018-03-21-1
「宇宙センサー整備が急務」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-31

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