米国防省が気候変動対処プランCAPを発表

CO2削減計画でなく、気候変動下でも作戦能力を維持するための対処指針
1月28日付のバイデン大統領令を受けた全省庁取り組みの一環

CAP DOD.jpg7日Austion国防長官が、バイデン大統領による大統領令を受けた米国政府全体の取り組みの一環として、国防省の気候変動対処プランをまとめたCAP(Climate Adaptation Plan)を公開し、国防省の取り組む姿勢を国防長官声明として発表しました

まんぐーすは誤解して、CO2排出削減活動の指針かと考えていましたが、世界中で猛威を振るっている異常気象下での米国防省と米軍の作戦遂行能力維持のための対処指針をまとめたプランです

ハリケーンによって壊滅的被害を受けたフロリダの空軍基地や、洪水で水没した陸軍や海兵隊基地の惨状が、日常的なニュースになりつつある中での国防長官の声明は、「気候変動は国家安全保障にとっての、生存に係る脅威だ」、「気候変動の加速に伴い、我に係るコストや被害は加速度的に増加するだろう」から始まり、「国防省は避けられない被害に備え、迅速かつ大胆に、課題に挑戦しなければならない」と危機感あふれるものとなっています

CAP View.jpgこのような危機感を受け、対処方針を示したCAP(Climate Adaptation Plan)では、あらゆる研究やデータや革新を取り込んで立ち向かうべき課題だと大前提を置き、米国防省と米軍の全ての意思決定、教育訓練、装備品調達、施設整備、サプライチェーンなど多様な側面から取り組む必要を訴え、併せて国防省外の様々な国家機関や研究機関や民間企業や団体、更に同盟国等との連携の必要性を訴えています

CAPは目指すところとして、気候変動がもたらす厳しい自然環境の中でも、作戦運用の能力を維持し、国家の負託にこたえることだとし、5つの重視ポイントを挙げていますので、当然と言えば当然の内容ですが、日本を振り返る際の参考としてご紹介いたします

1.climate-informed decision-making
・ 最新の科学的知見とデータを絶えず入手し、気候変動が及ぼす影響を可能な限り最善の努力で予想し、資源配分と作戦運用の意思決定の基礎とする。この取り組みは、他の4つの重視ポイントの基盤でもある
2. training and equipping a climate-ready force
・ 厳しい気象状況やその結果として生ずる過酷な作戦環境下でも任務を遂行可能な米軍部隊を維持育成するため、予想される気候変動に応じた部隊訓練を常に意識し、必要な装備品の研究や調達を継続的に効率的に進める着意が不可欠である

3. resiliently built and natural infrastructure
Austin.jpg・ 我々は機動力を飛躍的に向上させつつあるが、依然として各地の基地や施設、更に自然環境が米軍戦力発揮の基盤であり、基地や施設の機能不全や、作戦環境の変化は、任務遂行に大きな負の影響を与える。気候変動の影響を謙虚に見積もり、施設の耐性を再評価し、自然インフラの変化を予測し、耐久性と効率性とコストを勘案した新基準の考慮が必要である
4. supply chain resilience and innovation
・ 国防省や米軍の活動はサプライチェーンに大きく依存しており、気候変動に対する対処は、サプライチェーンも含めて取り組みべき課題である。その一環として、米軍や国防省のエネルギー消費量を削減する事で、特に戦力の分散運用を目指す中、兵站負荷を削減することが可能な点を肝に銘ずるべきである

5.enhanced adaptation and resilience through collaboration.
・ 上記のような重視ポイントを遂行するには、官民を問わず多様な組織や団体との協力か不可欠であり、それら内外との協力関係強化は、国防省レベル、各軍種レベル、各地域コマンドから全世界の基地や部隊レベルでも重視されるべき事項である
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32ページのCAP(Climate Adaptation Plan:9月1日付)
https://media.defense.gov/2021/Oct/07/2002869699/-1/-1/0/DEPARTMENT-OF-DEFENSE-CLIMATE-ADAPTATION-PLAN-2.PDF
Austin国防長官の声明(10月7日付)
https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/2803761/statement-by-secretary-of-defense-lloyd-j-austin-iii-on-the-department-of-defen/

CAP DOD2.jpgどの重要ポイント(Five lines of effort)も、その通りの内容ながら、その実行実現は一朝一夕にできそうもない課題です
ただ、既に現実問題として、気候変動の影響は日常レベルで日々発生しており、米軍だけでなく、自衛隊もその対応に追われているのが現実です

5つのポイントの最初に上げられている、最新の多様な知見やデータや経験を基礎とした意思決定の段階から、世界各国の連携が進むことを祈念いたします

気候変動関連の記事
「海軍長官が気候変動対処を重視事項に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-08-20
「自然災害で米軍予算が枯渇」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-03-24

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