米特殊作戦軍の予算削減に危機感訴え

SOF経験の陸空海兵隊OB3名の連名投稿
21年度予算案で5%減の扱いに危機感を

SOF2.jpg5月4日付MIlitaryTimesが、3名の米特殊作戦軍OBが寄稿した特殊作戦軍予算削減への反対意見を掲載し、中国やロシアとの本格紛争に備えるためには、本格紛争の各段階において特殊作戦軍の能力が欠かせないとの訴えを紹介しています

この寄稿は、ちょうど40年前に実行され失敗に終わった1980年4月24-25日のイラン大使館人質救出作戦の教訓などを振り返るイベントに合わせる形で行われたもののようですが、2018年の国家防衛戦略NDSで示された対テロから本格紛争への備えへの掛け声のもと、特殊作戦部隊(SOF:special operations forces)への誤った認識で、再び「日陰者」扱いされることへの危機感を訴えています

特殊作戦部隊は秘密のベールに包まれている部分が大半なので、その重要性を主張するのは難しいと思うのですが、中国やロシアと相手にした本格紛争前のグレーゾーン期間と本格紛争での重要性を、想像以上に踏み込んで主張しており、中国やロシアの弱点に踏み込んだ記述もあり興味深いのでご紹介しておきます

筆者は、元特殊作戦軍副司令官の退役空軍中将、同じく元参謀長の退役海兵隊少将、そしてSOF応援団体の会長である退役陸軍大佐の3名です

4日付MIlitaryTimes記事によれば
OEC.jpg4月27日の週、失敗に終わった40年前のイラン大使館人質救出作戦「Operation Eagle Claw」の犠牲者を追悼し、その後の米軍における特殊作戦部隊復活への取り組みを振り返る取り組みを、多くの米軍人OBや現役運人が行った
それは、40年前のイランの砂漠での屈辱から2001年のアフガンの山々での作戦までの特殊作戦部隊の再生や、またビンラディン暗殺作戦やISIS掃討作戦での特殊部隊の働き、それを可能にしたGoldwater-Nichols法の超党派Nunn-Cohen改正にまで及ぶ、長い道のりと教訓を追体験することでもあった

しかし今、国家防衛戦略NDSによる本格紛争重視の流れに押され、20年近くに及ぶ対テロ戦で活躍した特殊作戦部隊SOFへの投資が見直されようとしており、2021年度予算案では、米軍全体からすると僅か2%でしかない特殊作戦軍SOCOM予算が5%削減され、装備調達費は12%も削減される案となっている
●この削減は、現在進行中の紛争での活動を危機にさらすものであるとともに、将来の大国間紛争への備えをおろそかにするものだと危惧される

SOF.jpg対テロ作戦でない本格紛争では、特殊作戦部隊の能力は重要ではないとの非現実的な考えが蔓延していることは残念である。中国やロシアは、本格紛争が始まる前から不正規な戦いで米国と追い詰めようと膨大な戦力や能力を保有しており、その戦力は本格紛争開始後には米国攻撃や自国防御にも転用されるものである
●まず本格紛争以前のグレーゾーン段階を考えてみると、現時点においても、ロシアはハイブリッド戦に全力を投入しており、中国もまたグレーゾーンでの作戦を好んでいることは明らかになっている。彼らは武力紛争になることを避けつつ、米国の同盟国や友好国に影響力を拡大しようとして、金の力で影響力を拡大したり、SNSやインターネットなどの最新技術を駆使して広く国民に作用しようと浸透を試みている

米国は同盟国などともに、すべての政府機関が協力し、中国やロシアの動きを阻止する必要があるが、SOFはこれらのネットワーク構築に取り組み、非対称な脅威を撃退すべく、対テロ作戦と並行して努力している
本格紛争段階においてロシアは兵器管理枠組みに違反して長射程ミサイルや対艦ミサイルを配備し、その防御範囲をNATO領域にまで拡大しているし、中国も同様に弾道ミサイル体系を強化して西太平洋に拒否領域を拡大している。SOFは同盟国等とともに中露の周辺領域防御の穴を突き、両国に作戦レベルでのジレンマを引き起こし、その防御網を弱体化させることができる

加えて中国は、多くの物資を外国からの輸入に頼る戦略的に脆弱な問題を抱えており、長期間にわたる軍事作戦を支える物資供給交通網は格好の阻止の対象となっている。SOFはこの戦略的な阻止作戦で緊要な役割を担っており、中国に耐えがたいダメージを与えうる
SOF4.jpg約40年前の屈辱的作戦から2001年に対テロ作戦を開始するまでの復活については先に触れたが、その間にも、冷戦においてSOFは米国益のために重要な役割を果たしてきた。しかし、熱い戦いに至る前段階での見えざる戦いでのSOFの働きは目に見えず、SOFも「quiet professionals」を旨として黙々と任務を遂行した

SOFは急に増強することができない部隊であり、中国やロシアが得意とする不正規戦やグレーゾーンで重要な役割を持ち、本格紛争でも敵の弱点を突く作戦に不可欠な部隊である。意思決定者はそのことを肝に銘じ、その予算削減が取り返しのつかない結果を招くことを再度思い返すべきである。「Operation Eagle Claw」を忘れるな
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Wikipediaイラン大使館人質救出作戦:Operation Eagle Claw」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E4%BD%9C%E6%88%A6

中国やロシアが、金にものを言わせて中小国に浸潤を試み、影響力を行使しようとする試みを草の根で阻止しようと努力する特殊作戦部隊の声を以前アフリカを例にご紹介したことがありますが、そのような戦力をアジア太平洋地域に再配分しようとの検討が国防省で進んでいます。一長一短があり、予算が厳しい中、厳しい選択を米国防省、いや米国は迫られています

紛争時のSOFの重要な役割を訴えるため、3名の筆者は「both Russia and China have substantial holes in their territorial defense」とか、「China’s strategic shortcomings is the fact it cannot feed itself」と中露の弱点を指摘し、その弱点を突くためにSOFが重要だと主張していますが、中露の領土への極秘潜入作戦とか、交通網の隠密爆破・破壊作戦とか、映画のようなシーンをイメージしてしまいます

これほど具体的に中露の弱点を指摘した話は現役軍人ではできませんので、「Take Note」しておきたいと思います

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