米豪軍事関係に関するミニ分析

logo.jpg10日、防衛省防衛研究所が定期的にwebサイトに掲載する「ブリーフィング・メモ」(4ページ程度の地域情勢分析)の8・9月号に、20代の若手研究者による「米国のアジア太平洋リバランスと米豪同盟」が掲載されました。
近年急速に強化された米豪関係は、英国よりも豪州、との印象をアジア太平洋地域に放っていますが、その辺りを「豪州からの視点」を入れて整理分析していますのでご紹介します。
なお筆者の石原雄介氏は、豪州安全保障を専攻してオーストラリア国立大学の修士を取得した方で、2010年防衛研究所入所です。
最近の米豪関係強化の経緯
米豪は2010年11月にAUSMIN(2+2)を開催し、米軍の戦力態勢の見直しに関する2国間のワーキンググループを設置2011年11月に態勢見直しに関するイニシアチブ発表
●具体的には、2012年から2017年にかけて2,500人規模の海兵隊空陸任務部隊(MAGTF)を毎年4月から9月の乾期に派遣(段階的に増員)する他、海空軍分野でも協力強化を検討中
米豪関係強化の「3つの一致」
AUsmithDM.jpgまず豪州軍も「リバランス」を模索中。2013年以降にアフガンから1500名の豪軍が撤退し、更にソロモン諸島における国家再建事業及び東ティモールでの国際安定化部隊に参加する部隊を撤退させる方向で検討している。
●豪は2014年から27,500トンに達する強襲揚陸艦(LHD)を2隻導入するが、大型揚陸艦を運用し、人道支援/災害救援(HA/DR)や安定化作戦を行うためには米海兵隊との訓練が重要との判断もある
●以上のようにスミス豪国防大臣は、豪州により近い地域において、豪軍が共同訓練や能力構築支援などを通じた関与の強化を模索している。
次に、米豪の安全保障専門家の一部では近年「インド太平洋」と呼ばれる概念が徐々に使用されるようになっている。
●インド洋と東南アジアの重要性がますます指摘されるなかで、インド洋・東南アジア・太平洋に面する「島大陸」としての豪州の地理的な価値が再認識されている
top.jpg最後に、最も重要な要因は、一連のイニシアチブを通じて米豪が共通の戦略的メッセージを送る意図を有している点
●中国やインドが台頭する現実の戦略環境の変化を踏まえ、さらに、米豪の国内外で「パワーシフト」議論や米国の衰退論が登場する中で、米国が引き続き地域で役割を果たし、また米豪関係が今後も強力な同盟であり続けることを示す狙いがある。
そんな米豪関係にも批判者が
●2012年5月、スミス国防大臣は豪予算の赤字解消の一環として2012・13年度の国防予算を9億7,100万豪ドル、将来見通しで2015・16年度までで合計54億5,400万豪ドルを削減することを発表。国防予算が1938年以来初めてGDPの1.56%にまで低下することになる模様
●予算削減発表を捉えて、アーミテージ元国務副長官は、米国が同盟と地域に対する関与を維持する一方で、豪州はただ乗りして国防予算を削減しているとの批判を行った
●また、ロックリアー太平洋軍司令官は7月に豪州を訪問し、NATOにおいて米国は同盟国にGDP2%の国防予算を期待していると発言して豪を刺激した
石原雄介氏による豪州サポート
Darwin.jpg●2011年11月発表の態勢見直しイニシアチブに沿って、豪軍施設を改修しつつ米軍が活用したり、米豪共同訓練に地域諸国を招いたりすることで、新たな基地建設などの大きな出費を伴わない形で地域関与を強化する努力を行っている。
●現在も検討が両国で進行中であり、スターリング海軍基地への米海軍のアクセス強化やインド洋に浮かぶ豪領ココス島の共同使用などの新しいイニシアチブが発表される可能性がある。
●また、より広範な地域諸国を巻き込んだイニシアチブが打ち出されていく可能性もある。
懸念事項は、米豪が現在関わっている軍事作戦、特にアフガニスタンの国家再建と安定化がうまく進むかどうかである
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豪州軍の国内事情については勉強になりましたまたアーミテージ氏が、日本だけでなく欧州も批判していたことも参考になりました。軍人であるロックリア海軍大将が軍事費のGDP比率にまで言及する「政治的」発言を行っていることも初めて知りました。
これらに比べれば、日本への態度はまだやさしいですね
ASBM DF-21D2.jpgしかし防衛省の職位としての立場でしょうか・・・若い石原さんには酷かもしれませんが、どうして米豪関係強化の背景に「中国の脅威」と書けないのでしょうか? 東南アジア諸国を鍛えるための米軍の拠点だとなぜ書けないのでしょうか?
中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの被害を受けにくいとの地理的位置の重要性をなぜ強調しないのでしょうか?
米豪軍が、日本やグアム島からの部隊避難訓練を行っていることになぜ触れないのでしょうか?
防衛研究所の若手には、慶応法学部卒業の方が増えているように思いますが、引っ張ってもらった先輩に迷惑わかけられないし・・・てな遠慮でしょうか? 残念だし、モッタイナイデスネ・・・。
「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「米豪が60周年同盟強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-17
「米豪が新協定締結へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-07
「米海軍は日本から豪へ移動」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2
「豪との関係強化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-09
「豪が米のF-35計画精査へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-29
「豪は14機のみ購入確約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-27
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