フロノイ女史が中国抑止を再び語る

Austinじゃなくてフロノイのはずだったのに・・・
CNAS共同創設者が再び中国抑止を語ります
元国防省No3の政策担当次官(2009-12)

Flournoy5.jpg10月6日、バイデン政権の国防長官候補ダントツNo1だったMichèle Flournoy女史が、Atlantic Council主催で「いかに中国を抑止するか」とのテーマで登場し、米国や西側同盟が軍事力強化を一定レベルに強化完了する2030年までに中国は台湾侵攻を企てる恐れが高いことから、誰も真剣に考えていない2030年までに専従する担当幹部を配置し、最新技術を既存装備と結び付ける施策に注力する必要性&重要性などを訴えています。

Flournoy4.jpegFlournoy女史は国防省No3の政策担当次官を2009年から約3年間勤め、それ以前の国防省経験も含め複数回のQDR等政策文書とりまとめに従事した「プロ」で、バイデン政権誕生時には9割以上の専門家が「次期国防長官確実」と予想していた人物ですが、結果的には「米産軍複合体の闇を感じる」と噂された最終盤でのドンデン返しで、全く存在感がない現在のAustin国防長官が誕生した経緯を経験した人材です。

昨年4月に同テーマでの発言をご紹介(末尾の過去記事参照)して以来のブログ「東京の郊外より」登場ですが、まんぐーす的には非常に興味深い視点だと感じましたので、久々にFlournoy節を取り上げさせていただきます

Michèle Flournoy女史はWeb講演で
Flournoy7.jpg●米国防省や各軍種の新たな装備品や能力造成計画の大半は、2030年代戦力化を目指しているが、習近平は米国や西側同盟国が完全に新戦力体系を手にする前ならば、中国による台湾侵攻の「可能性の窓」が開いていると見なす可能性がある
●米国防省は、2020年代後半に中国による台湾侵攻可能性が高いことを強く認識し、この中期的大課題に専従する人材を配置することから始めるべきである

Flournoy.jpeg●このような中国にとっての「可能性の窓」が生まれる背景には、国防省や各軍種参謀総長が2030年以降を見据えた長期的戦力造成を考えている一方で、最前線の地域戦闘コマンド司令官が2-3年先の短期的視点に集中する傾向があるからで、結果的に2020年代後半の中期的問題を誰も日常的に考えていない状態に陥っている
●この中期的課題に専従担当する人材を配置したら、国防省は「アポロ13号対処」に学んで取り組むべきだ。つまりアポロ13号事故の際、皆が知恵を出し合い、宇宙船内に存在するものだけを活用して乗員3名を無事地球に帰還させたように、開発中の将来技術を待つのではなく、現存する技術を最大限に活用して最大限の能力を獲得し、習近平中国を抑止&撃退することを考えるべきだ

Flournoy6.jpg●具体的には、西太平洋や中国近傍の戦闘エリアで圧倒的な戦力数的不利に米軍は直面するが、有人機と安価な無人機を組み合わせた一体運用(Kendall空軍長官がCCA:ollaborative combat aircraftと呼称する安価な無人機ウイングマンの活用)などにより、近未来でも数的不利のギャップを埋めることが可能になるだろう
●この際、ウクライナでのロシア軍の「役立たずぶり」を見て、実戦経験のない中国軍を「ロシア軍と同じく役立たず」と楽観視したくなる誘惑に負けてはならない。中国軍は多くの問題を抱え、困難にも直面しているが、同時に彼らは過去10年、驚くべきペースで軍の近代化を成し遂げ、プロ集団になりつつある。決して過小評価してはならない
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Michèle Flournoy氏のパネル討議(7分頃から発言・計62分)

国防省や各軍種上層部は長期での戦力造成を中心に考え、前線指揮官は2-3年後を念頭に置いており、結果として中期的な視点での対応をけん引する者が存在しない・・・ここ最近の国防省や各軍種の動きと、前線部隊指揮官の発言を振り返ると、ひざを叩きたくなるご指摘です。

さすがに、国防省での実務担当者とシンクタンクでの研究者の両方で、大きな足跡を残してきたFlournoy女史ならではの視点です。「アポロ13号的対処」の意味がピンとこない方は、ぜひトム・ハンクス主演の映画「アポロ13号」をご覧ください

フロノイ女史の思考
「中国抑止を考える」→https://holylandtokyo.com/2021/04/05/99/
「必要な国防政策を語る」→https://holylandtokyo.com/2020/08/17/526/
「米議会で中国抑止を議論」→https://holylandtokyo.com/2020/01/22/871/

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