前半:サイバーと宇宙演習の教訓

Schriever.jpg2010年5月、ネバダ州のネリス空軍基地で米空軍宇宙コマンド主催による宇宙とサイバー空間を対象とするウォーゲーム「Schriever 2010」演習が非公開で行われました。
非公開部分が大半の演習ですので史料は少ないようですが、「AirForce Magazine」2月号の記事「Hard Lessons at the Schriever Wargame」は、半年以上をかけて関係者に行った地道な聞き取り等を総合し、演習の概要とその教訓にアプローチを試みています。
抽象的な部分も多いのですが、本日と明日の2回に分けて、記事の概要を紹介します。
演習シナリオ上の敵はもちろん仮想の国ですが、誰が見てもその相手は「中国」で、記事もその前提で書かれています。
cyberOP2.jpgなお本演習には、先日第14空軍司令官への就任をお伝えした女性のヘルムス中将(Lt. Gen. Susan Helms:当時は少将で米戦略軍の計画部長)やジェームズ中将(Lt. Gen. Larry James:当時は14空軍司令官)も参加し、米側の作戦を担当しています
「宇宙戦争の指揮は女性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-30
Schriever 2010演習の概要は・・
●2022年に太平洋の片隅で始まった宇宙とサイバー紛争を主題とする。無論、明確に言及はしていないが、相手は中国をイメージした国
約600名の軍人と民間人(元議員や企業関係者等々)と同盟国関係者(英、豪、カナダ)が参加して4日間にわたり開催
味方側の参加者は以下の5つのカテゴリーを演じて参加。米軍、民間の宇宙やサイバー企業関係者、同盟国、米国政府及び他省庁、米国情報機関
大まかな演習の進み具合は・・
太平洋の片隅で発生した宇宙やサイバー空間関連の小さな事象を発端となり、相手(中国を想定)はそれが重大な挑発と認識する。
cyber01.jpg●相手の対応は激しく、米国とその同盟国による宇宙とサイバー空間へのアクセスを遮断する強烈な先制攻撃を行う
●米国側が対応・反撃を開始し、以後双方が大規模攻撃に繰り出す。ただし相手側の作戦は事前によく練られており、意志決定も我が方に比較し格段に素早い
●本ドメインの重要アセットはあらゆるタイプの攻撃にさらされる。
演習目的「如何に本分野での本格戦争を抑止するか」に関しては・・・
●宇宙やサイバー空間での作戦の推移は極めて早く、瞬く間に地球規模に拡大してしまった
●宇宙やサイバー分野の紛争をそのドメイン内に封じ込めることは出来なかった
冷戦時代の抑止理論は、本分野の紛争には適応していない
各界のリーダーが集まってどのように抑止し対応するか、またどのように関係者が協力するかを議論したが、敵のエスカレーションを防ぐことは出来なかった
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出し惜しみして申し訳ないのですが、マングースも頭をひねりながら書いていますのでご勘弁を・・・
さわりの部分だけですが、独裁国家の方が、このような新規分野では自由に迅速に好き放題(法規や国民の権利等を無視して)動けるだけに、法治国家はつらいです
明日は演習の中で生起した特徴的な事象」と「演習の教訓的事項」をご紹介します。
「NATOとのサイバー協力強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-26
「豪でのプレゼンス等を強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-09
「米とカナダが国防協議」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-28
宇宙関連記事(あまり関係ありませんが)
「核抑止の代替?CSMについて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25
「PGSのHTV-2試験失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
「X-37Bをご存じですか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-20
「X-51Aは初期実験段階」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23

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