10日、ミリタリーバランスでお馴染みロンドンの国際戦略研究所(IISS:International Institute for Strategic Studies)が、「イランの弾道ミサイル能力:ネットアセスメント」(Iran’s Ballistic Missile Capabilities: A net assessment)との報告書を複数の国際的専門家によるチームでまとめ、公表しました。
→http://www.iiss.org/publications/strategic-dossiers/irans-ballistic-missile-capabilities/
以下は、有力軍事サイト「Defense Tech」に掲載されたIISS報告書の概要の概要です。
結論とポイント
●イランの弾道ミサイル生産能力は近年格段の進歩を見せているが、依然外国の技術支援や重要部品・材料の供給に頼っており、自国で生産できない。弾道ミサイルの(重要構成部品である)航法誘導装置をイランが自国で生産できるとの証拠は現時点でない。
●西欧を射程内にすることが出来るミサイルの液体又は固体燃料エンジンの生産には、4~5年はまだ必要であろう。
●射程が9000kmで米国東海岸まで到達可能なものに関しては、まだ10年はかかるであろう。
現有能力の概要
●イランは射程500km程度のシャハーブ(Shahab)1と2(スカッドB,C)を200-300発保有し、射程900kmのシャハーブ3を北朝鮮から購入した(ノドンのこと)。またイランは、シャハーブ3を改良し、弾頭部分を小さくして射距離を伸ばす方向で、射程約1600km(弾頭750kg)のガドリ1(Ghadr-1)を開発している。(写真はBMDR掲載のイランのミサイル発射)
●また、シャハーブ3とガドリ1用に移動式発射機(TEL:transporter erector launcher)を6台、シャハーブ1/2用に12-18台を保有していると考えられる。
●また液体燃料エンジン生産ラインを自国で立ち上げ中、又は完了したといわれている。
将来及びICBM開発の見通し
●液体エンジンに関してイランは自国で開発能力がないので、現有のスカッドやノドンエンジンをベースにICBMを製造したとすると、旧ソ連が1960年代まで使っていた巨大で扱いにくいモノになってしまう。そんな巨大なモノは先制攻撃の格好の餌食になるだろう。
●現在開発中で、固体燃料エンジンを持つ射程約2200km(弾頭約750kg)のサジール2(Sajjil-2:写真左)は、イスラエルやトルコ、更にはアラビア半島諸国を射程に納める模様。これまでの試験ではエンジンが機能しているようであるが、運用開始には2-3年が必要であろう。
●この固体燃料エンジンを3段式にしてICBMにするにしても、かなりのテストが必要になる。イランにとっての大きな課題は2つ、ミサイルからの発射試験データを収集するテレメトリ装備の獲得と受信装置の海上等への配備、更には大気再突入の際に弾頭を高温から守る技術の壁が大きい。
●発射試験が10回以下で済むとは考えにくく、世界の情報関係者は試験の電子信号を傍受して、かなりの程度その進捗をフォローできるであろう。
核兵器が開発されても、ICBMの開発が遅れて米本土の射程内入りが遅れれば、となれば、米国としてはゆったり構えてアフガン・パキスタンに対応するのでしょうか。本土ミサイル防衛防衛への経費投入も先送りかもしれませんね。北朝鮮もあったか・・・。
(参考)
「BMDRの6つの優先事項」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-03
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「米イスラエル国防相がイランを」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-28
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