自衛官OBで安保問題について聞くに値する発言が出来る人は「ほとんど皆無」なのですが・・・、そんな中で貴重な論客である織田邦男元空将が、周辺情勢、日米関係、更にF-Xの選定に関して、7日付航空産業業界紙「WING」(週刊:発行は航空新聞社)で発言しています。
記事のタイトルは「戦闘機は防空システムの構成要素と捉えるべき -最も重要なSituation Awareness(状況認識)-」となっており、航空産業業界紙らしく戦闘機の話がメインの扱いになっていますが、ここでは物事の順序として「地域情勢認識」からご紹介します。
戦闘機パイロットで、空自の防衛部長、研究開発部隊の司令官、支援任務部隊の司令官を歴任した織田氏の見方は・・・・
(中国に関し)
●20年以上に渡り10%以上の伸びを続けてきた中国軍事費の伸びが、今年度10%以下となった。今後も以前のような大幅な軍拡は出来ないとすると、軍人の不満が暴発しないか心配になる。
●先頃、中国海軍のヘリが海上自衛隊のヘリに接近して示威的飛行を行ったことなど、軍の独断専行的な動きが気になる。外交ルートを通して抗議しても、共産党の軍なので政府のコントロールを期待できない。
「中国海軍艦艇の動向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-14
●空母建造について日本は大騒ぎしているが、膨大な維持費が必要な装備を、米国以外で満足に維持し活動している国がないのも現実だ。
(米国に関し)
●2月に発表されたQDRでは、イラクとアフガンに加え、同時に北東アジアで事が起きたら対応できない、との認識が示されたと私は考えている。
●北朝鮮は、米国が出てこないと読み切って行動している。中国は、北朝鮮の体制崩壊など最悪の事態を回避するため慎重な対応をしている。
●米中関係について、現在は米国一国での対応が困難なことから日韓豪に協力を求めているが、対中妥協に転ずる可能性も無しとは言えず、中国海軍の太平洋進出を何処まで認めるかが注目される。
(日米同盟について)
●日米同盟は、北東アジアとグローバルな安定のための公共財。そしてその中核は軍事同盟であり、米軍と自衛隊の関係が重要。しかし最近、米国防省は日本と韓国とを同列に扱って言及することが多く、日本の地位低下を懸念する。
●在沖縄米軍は、極東情勢を考えれば強力な紛争抑止力である。尖閣のみ成らず沖縄への潜在的施政権を主張する中国に対し、米軍の存在意義は非常に大きい
(次期戦闘機F-Xについて)
●相手のステルス機を発見できる技術の開発に全力を挙げ、発見情報を(防空システムとして保持し)迅速に味方戦闘機に伝えればステルス機にも対抗できる。
●F-Xの絶対的条件にステルス性を加えると、機種選定が非常に困難になる。事実上選択肢が狭まり、入手時期等を考慮すると自縄自縛になる。
●戦闘機12個飛行隊の維持が困難になっては本末転倒である。当面の数合わせの方策もあるかもしれないが、やはりF-Xを早期に決めるべき。
●まず将来戦の様相を見越した航空防衛構想に基づき、日本の防空システムをどのように構築するかを考えるべき。戦闘機はそのシステムの構成要素の一つとして捉えるべき。(以上が織田氏意見)
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「数合わせの方策もあるかもしれないが、やはりF-Xを早期に決めるべき」は、ワザと表現を判りにくくしてあるのでしょうか・・・
2009年春に退官したばかりであり、後輩や空自組織への配慮をにじませた表現ながらも、「将来戦の様相を見越した航空防衛構想」の策定を一番にすべきとの訴えです。これは恐らく防衛全体のみならず、財政が厳しい国家全体の課題にも繋がるのでしょう。
相手の戦闘機が一番の脅威なのか? 戦闘機飛行隊数の維持がF-X導入後も可能なのか?・・・との疑問はありますが・・・・。
中国に関する見方や米の動向についての認識は、Holylandと共通するところ大です。
・・・・てな事を書き込んでいた時、・・・産経新聞から「防衛省は、FXをF-2の追加生産でまかなう方向で検討している」、「国内産業基盤の維持」、「F-35を待っていると平成28年度まで連れ込む恐れ」等々の報道がありました。
そういえば、織田氏は現在F-2を生産してる三菱重工の顧問だったような・・・・なるほど・・・
(関連記事)
「米空軍の戦闘機削減が本格化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-28-1
「米空軍OBが断末魔の叫び」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-05-1
「なぜ空自にステルス機?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-26-1
「嘉手納から有事早々撤退?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「州空軍の戦闘機がピンチ」
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