英空母エリザベスは米軍F-35B部隊と一体運用へ

2021年の初作戦派遣時には米軍F-35Bも搭載予定と
35機搭載可能な空母なのに夏で保有機わずか17機の悲しい現実

Elizabeth.jpg21日、米東海岸沖に展開して米海軍や海兵隊の支援を受け「作戦能力試験:Operational Trials」を終えようとしている英海軍の最新空母Queen Elizabethの艦上で、英海軍参謀総長Tony Radakin海軍大将が講演し、米海軍との単なる「相互運用性: interoperability」ではなく、相互に保有アセットを入れ替えても作戦運用可能な「戦力互換性:interchangeability」を目指していると語りました

F-35に関して、英国は米国を除く8ヶ国の中で唯一の「レベル1共同開発国」で、唯一システム設計や実証段階に人を関与させることが出来るほど関係が深い共同開発国です。

そんな深い関係から、英海空軍のF-35部隊建設要員は自軍のF-35Bの最終確認試験を、米空母で実施したほどの関係を築いています。まぁ・・・空母エリザベスの完成が間に合わなかったから、先行して運用体制を確立する必要のある自軍F-35Bを米空母に持ち込んだのですが・・・

Elizabeth3.jpgちなみに空母エリザベスは2017年春に進水し、昨年2018年夏から秋にF-35B搭載試験を米東海岸沖で3機の英軍F-35Bで開始し、今年の秋は更に搭載機数や運用レベルを上げて「作戦能力試験:Operational Trials」を終了させ、2020年12月には初期運用態勢を宣言予定で、その後2021年に初の作戦展開を予定しているようです。

空母エリザベスは約800名の乗員で運行可能で、これに艦載機が加わると乗員は2倍になるようですが、F-35Bを最大35機搭載可能で、加えて対潜水艦哨戒ヘリなども搭載するようです

単なる「相互運用性: interoperability」ではなく、相互に保有アセットを入れ替えても作戦運用可能な「戦力互換性:interchangeability」を目指すと美辞麗句で主張されても、英軍で予算不足で、F-35Bを十分に購入できないからでしょう・・・と突っ込みたくなりますがが、難しい空母運用を2か国の戦力で行うという離れ業であることは確かですので、順調な練度向上をお祝いし現状を紹介させていただきます

映像:空母エリザベスとF-35Bの訓練風景


21日付米海軍協会web記事によれば
21日、チェサピーク湾に停泊中の空母エリザベス艦上でTony Radakin英海軍参謀総長は、10年の空白期間を経て復活した英海軍艦載固定翼部隊は、米海軍との一段とレベルの高いパートナシップ関係を体現すると語った
●そして「本空母が作戦能力試験を通じて示したように、英軍と米軍の連合戦力は成功裏に空母攻撃群の形を生み出した。私はこの形態が更に発展し、単なる相互運用性から戦力互換性に昇華することを楽しみにしている」と表現した

Elizabeth2.jpg●同英海軍大将はまた、空母エリザベスが2021年に作戦展開する際には、英海軍F-35Bと米海兵隊F-35Bがミックスして艦載航空団を形成し、英軍の部隊として行動すると説明した。なお米海兵隊部隊はVMFA 211となる予定である
●空母エリザベスの艦長であるSteve Moorhouse准将は、同空母は第5世代機搭載を念頭に設計された最新空母で、少ない乗員で必要な空母の運行と兵器運用が可能であり、この秋に米海軍と海兵隊兵士たちの支援を得て行った演習でも、作戦運用態勢や即応性において米軍との運用に問題ないことが確認できたと語った

●また、英軍F-35Bは米軍の射爆撃演習場を借用して攻撃訓練を行い、英海軍対潜水艦哨戒ヘリは米海軍潜水艦を目標に追跡訓練を行った。昨年の秋にはわずか3機が初歩的な飛行訓練を行うレベルだったが、この一年で米海軍との共同運用レベルにまで練度を引き上げることが出来た
「米国との相互運用性確保は多くの国が成しえるが、所属する国旗のデザインの違いに拘わらず、真に融合した戦力として運用できることが我々の求めるレベルである。この秋の演習で、我々はその方向に大きな一歩を刻んだ」と空母エリザベス艦長は語った
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Elizabeth4.jpg英軍はF-35AとF-35Bを合計138機購入する計画を立てていますが、EU離脱が決まって経済混乱や低迷が予期されるようになる以前から、多くの英軍関係者が実現不能な調達機数だと考えており艦載機が不足する悲しい新型空母の現状を、「本音を語らず、前向きに表現している」ということです

英米間の「戦力互換性:interchangeability」は素晴らしいことなのでしょうが、あくまでも苦肉の策が生んだ「副産物」であることを忘れてはいけません

英空母エリザベスの悲しき現実
「英海軍と英空軍共有のF-35Bが初任務」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-27
「米海兵隊F-35が英空母へ展開へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-05-09
「米軍F-35Bを英空母に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-16
「英空母が航空機不足で米軍にお願い」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03
英国軍を考える記事
「EU離脱で英国防計画ピンチに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-01
「英軍新空母を南シナ海に!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-12-06
「新空母の艦載機が不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-03

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