米海軍は、18隻の戦略核ミサイル原子力潜水艦(SSBNオハイオ級)を保有していましたが、2002年からその中の4隻を核ミサイル搭載型からトマホーク巡航ミサイル搭載型へ改修し始めました。潜水艦の隠密性と大きな搭載能力を生かし、大量の精密誘導兵器と特殊部隊で複雑で多様な世界情勢に対応しようとの狙いを持つ取り組みです。
そして現在、ミサイル原潜(SSGN)に改造された原子力潜水艦がOhio, Michigan, Florida, Georgiaとの艦名で就航しています。
SSGNはそれぞれが154発のトマホークを搭載し、更に60名の特殊部隊を搭乗させて行動出来るよう艦内が改修されています。また、特殊部隊兵士の移動を支援する小型水中艇も内蔵しています。
その4隻の中の3隻が、最近アジア太平洋地域に展開しました。
6月28日、オハイオがフィリピンのスービック基地に、ミシガンが韓国のプサンに、そしてフロリダがディエゴガルシアにそれぞれ配備されましたが、7月8日付の米Time誌電子版は、「ISR能力の向上に努めている中国は、恐らく彼らの司令部のスクリーンに映し出された潜水艦と合計で462発のトマホークを厳しい眼差しで見つめであろう」と報じています。
この潜水艦増強は、昨年6月にキーティング前太平洋軍司令官がQDRの方向性についてのシンクタンクでの講演で示唆していたところです。
また、中国に対しては「より遠方から」との「Air-Sea Battle」の考え方に沿ったものです。
読者の皆様は、ディエゴガルシアも中国関連か?との疑問を持たれるかもしれませんが、「Air-Sea Battle」に関するCSBAレポートには、中国の戦略的持久体制を妨げるには、中東・アフリカからの海上交通路を遮断する必要性が示されており、イラン対応だけではないと見ることも可能です。
米海軍はこの展開を、それぞれの母港からの初めての「作戦的展開(Operational Deployment)」と発表していますが、専門家は米国による戦力の大西洋から太平洋へのシフトの一部であると理解しています。
もちろん、プサンの原潜は朝鮮半島にも、フィリピンのは南シナ海の領有権問題にも睨みを利かせるものでしょうが、米主要軍事サイトやTime誌は「対中国」のみで解説しています。
ほぼ同じタイミングで、7日から海軍の多国籍演習「リムパック」が14カ国2万人規模で開始され、9カ国1.7万人と約70隻が参加の「CARAT 2010」がシンガポール周辺で実施されており、これらを含めて全て「対中国」扱いになっています。
日本のマスコミは・・・選挙でしたか・・・。
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(おまけ)「ゲーツ改革のまとめと整理」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「400記事記念 反響大の記事特集」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-18
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時代は変わりつつあります。残念ながら、「すっきり、さわやか、かっこいい」を追求するだけでは対応できない「どす黒い、陰鬱な、長引く」脅威の時代へ向かっています。
9日、20機のF-22がハワイのヒッカムに配備されたようです。すがるなよ・・ニッチな装備に・・・。
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