24日、近く交代が予期されるロックリアー太平洋軍司令官が国防省で記者会見を行い、記者からの質問に答える形で、ベトナム戦争終了後から継続している「ベトナムへの武器禁輸」見直し議論が両国間で始まっていることを認めました
ベトナム戦争後の米ベトナム軍事関係は、2010年にゲーツ国防長官がASEAN国防省会合時にベトナムを訪問して壁を突破し、2012年にはパネッタ長官がかつてソ連に支配されたカムラン湾を訪問、更に今年8月にはデンプシー大将が米軍人トップとして43年ぶりに同国訪問を果たしています
中国による南シナ海での力による支配拡大姿勢を受け、ベトナムとフィリピンが正面にたって中国と対峙していますが、石油採掘を巡って大型の中国巡視船がベトナムの小型巡視船を「いじめる」様子は、中国の国際イメージ低下に大いに貢献したところです
29日付米空軍協会web記事によれば
●南シナ海での米国機への異常接近事案等で緊張が高まる中、夏には米軍トップの歴史的ベトナム訪問があり、そして今度は太平洋軍のトップがベトナムに対する長年の武器禁輸撤廃に言及した
●24日、ロックリアー太平洋軍司令官が記者団に、米国とベトナム政府間の武器輸出に関する議論が行われていると語ったのだ
●同司令官は何も決定されていないと念を押しつつも、「ベトナムとの軍事関係を有する軍司令官からすると、同国により良い支援を提供できるよう制約が取り払われるのは前向きな事だ」と語った
●更に同大将は、特に海洋安全保障や状況掌握ツールでの改善を必要としているのではないかとの見方を示す一方で、ベトナムが米国にどのような装備を求めるかが重要だと語った
●そして改めて、「両国間の協議は初期段階にあり、どのようなタイプの軍事援助が、どのような目的でベトナムに提供可能かについて話している段階だ」と付け加えた
●「ベトナム自身も多くのパートナーと隣国があり、それに伴って多くの安保上の懸念を抱えているのだ」と語った
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モンゴルの征服を許さず、自力でフランス占領軍を駆逐し、米国に勝ち、中国軍の侵入も退けてきた「骨のある」ベトナムのことですから、米国ともしっかり交渉しているのでしょう。
ベトナムへの支援はハード面での意味だけでなく、ソフト面、つまり中国包囲網の構成面で大いに効果がありそうです。今後の進展に期待いたしましょう
今年8月、日本政府はベトナム政府に対し、ODAとして巡視船に転用できる中古船6隻を無償で供与することを決めました。「軍事」が絡むとODAの枠組みで扱えないのですが、ベトナム自身で改修してもらうという「知恵だし」の結果です
会見のトランスクリプト
→http://www.defense.gov/Transcripts/Transcript.aspx?TranscriptID=5507
米国とベトナム関係
「43年ぶり米軍トップが訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-16
「パネッタ長官がカムラン湾に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-04
「ASEAN会合@ベトナムにゲーツ長官が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-11
「頑張れベトナム」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-18
「ベトナム難民が米艦艇艦長で故郷に錦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-18-1