ポンペイオ国務長官の発言とは微妙にズレが
15日、エスパー国防長官が第56回ミュンヘン安全保障会議で講演し、中国を米国の主な敵対国(main adversary)だと表現しつつ、中国のファーウェイ製5G機器を導入することは、米国との情報共有や安全保障協力体制を危機にさらすことだと表現し、同盟国等にファーウェイ製5G機器導入を避けるよう警告を発しました
一方で、10日の週にポンペイオ国務長官は、英国のジョンソン首相が部分的にファーウェイ製5G機器を導入すると発表したことに対し、米英同盟には影響ないとの発言を行っており、米政権内の本件に関する温度差も話題になっています。
同様にエスパー長官講演前日の14日には、ホワイトハウスのRobert Blair国際通信政策担当官も記者団に、「米国はファーウェイ製導入が招く結果を注視して行くが、(英国がファーウェイ製品を導入しても、)米英間の情報共有全体が侵食されることはない(no erosion)」と述べていたところです
このように、今後ドイツなど西側同盟国のファーウェイ製機器導入への姿勢やその影響が明らかになるにつれ、米国内でも立場立場で様々な意見があることから、米国の姿勢も揺れ動くものと考えられますが、本日は中国に対し強い姿勢を今後も示すであろうエスパー長官の現時点での考え方をご紹介しておきます
15日付Defense-News記事によれば
●エスパー長官は、「5Gを中国企業に依存することは、例えば、我が同盟国等の重要なシステムを脆弱にし、妨害や攪乱やスパイ活動にさらすことにつながる」、「(ファーウェイ製導入は、)また、我々の意思疎通や情報共有能力を悪化させることにつながり、同盟関係を損ねることにもなりかねない」と強い懸念を表明した
●更に長官は、「(ファーウェイ5G導入は)、我々の国防協力に重大なレベルのリスクをもたらす」と強い表現でファーウェイ5G製品導入に危機感を表明した
●米政権内部にも本件に関する発言のトーンに差はあるが、本会議におけるエスパー長官、ポンペイオ長官、米国両政党の議員(ペロシ下院議長を含む)の発言は、中国はファーウェイ製5G機器を使用してサイバースパイ活動や監視活動を実施可能で、大きな安全保障上の脅威であるという点では一致していた
●ポンペイオ長官は同会議で、「ファーウェイや中国が背後にいるハイテク企業は、中国情報機関にとってのトロイの木馬である」と述べつつも、「西側は専制国家に対して勝利を収めつつある」との認識を示していた
●昨年12月、NATO加盟国首脳たちは初めて、中国の台頭が経済や軍事面で与える影響について、NATOとして考える必要がある点で合意しているが、2月12日から13日に掛けてエスパー長官はNATO本部で、加盟各国代表に中国への懸念を公に改めて説明した
●同長官は15日の講演で、NATOの対中戦略は引き続き検討中であると述べたが、北京政府が人工知能や最新技術を、少数派であるイスラム部族、ジャーナリストや民主化推進活動家の監視や圧迫に使用している点も交え、中国への深い懸念を説明した
●一方で同長官は、「NATOは、ロシアの悪行を抑止し、欧州大陸の安全保障確保に焦点を当てたものであるべき」との大原則にも言及している
●エストニアの前大統領からの質問「ファーウェイの代わりになる5G機器を、米国は準備検討しているのか? その進捗具合は?」に対し、ホワイトハウス主導でサムスン、ノキア、エリクソンとパートナー関係を構築し、米国防省はそれら企業に5G機器の試験用に施設や演習場提供を申し出ていると対応した
●5Gの側面からだけでなく、エスパー長官は同会議出席者に、「多くの国が数十年に渡り享受してきた国際ルールに基づく秩序を、中国が勝手に変更しようとしている問題に目を覚ますべきだ」、「習近平は中国を悪い方向に加速度をつけて引っ張っている。国内抑圧、前時代的な経済習慣、そしてより私を懸念させるアグレッシブな軍事体制などが目立っている」と警鐘を鳴らした
●これらの話のほかにエスパー長官は、米国が中国との紛争を望んでいないこと、各種ミサイル防衛システムに投資している事、宇宙軍を立ち上げたこと、2021年度予算案で旧式の装備を早期退役させ、超超音速兵器やAIや無人システムに資源を再配分していることなどを説明した
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NATOは本来ロシアに対処すべき組織である点を再確認しつつも、エスパー長官は対中国への協力を欧州諸国に要請し、5Gが極めて重要な課題だと訴えています
ここで本来なら「5G」に関するうんちくを語り、なぜ西側諸国がファーウェイ製品になびくのかをご説明できればよいのですが、そこまでの知見がありません
残念ながら、中国が人材と資金に物を言わせ、5G技術で一歩も二歩も先んじているということなのでしょう・・・・
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