7月号の米空軍協会機関誌が「ISR Explosion」との記事を掲載し、最近の約10年間で急増しているISR無人機(攻撃型も含む)の様子を数字で紹介していますので、メモ代わりでご紹介致します。
残念ながら、度々ご紹介しているように、米空軍は自身の判断で無人機導入に舵を切ったわけではありません。自らのポストや職域が犯されると考え、又は無意識のうちに無人機を排除する感情が働き、1990年代には無人機の導入が進まなかったのが実態でした
ロバート・ゲーツ語録12
(http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19)
私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。私は3年前(2008年)、今度は国防長官として、無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
それが今では、現場からの無人機ISR要求が供給を大幅に上回り、「需要3:1供給」程度の現状で、ISR無人機(攻撃型も含む)を増加したくても無人機操縦者の養成が追いつかない状態で、加えて無人機操縦者の急増に人事管理制度改革が追いつかず、不満を抱えた離職者が減らない苦境にあります
そんな無人機急増の様子を数字で
●ISR航空機の急増(主要因は無人ISR機の急増)
—2007年には米空軍航空機の3.2%がISR機であったが、2016年9月時点では9.9%にまで3倍増
—2016年9月時点で米空軍の全ISR機は533機で、無人ISR機は357機の67%。10年前は18%だった
—2006年9月時点でU-2 (34), E-3 (32), RC-135 (22), EC-130 (16)、そして無人機RQ-4が11機で、その他を含めISR無人機は計24機
—それが2016年9月には、MQ-1B Predators (129), MQ-9A Reapers (195), そしてRQ-4B Global Hawks (33)、更に有人機U-2 (27), E-3 (31), RC-135 (23), EC-130(14)
無人機と有人機でISR:戦闘機や爆撃機も
●無人ISR機は、CIAが1993年にボスニアで初めて使用した。米空軍は911同時多発テロ以降にISR無人機に本格的な関心を寄せ、アフガン、イラク、シリアは同アセットの技術革新に最適な作戦地域となった
●2008年3月には、ISR機からのフル動画量が3倍になり、「需要4:1供給」のペースで要求量が大きく上回っており、有人機操縦の経験が無い者も無人機操縦に当たらせる決断等により、2012年までに無人機操縦者を450名から1100名に増し、ISR無人機による哨戒CAP数を33個から50個に増やす計画も明らかにした
●2009年にゲーツ国防長官は、ISR無人機による哨戒CAP数目標を50個から65個に引き上げると発表した。しかしその時点で、米空軍はISR要求の66%が満たせない「需要3:1供給」状態である事を明らかにしていた
●有人ISR機のMC-12Wは米空軍救急能力造成室の輝かしい成果でアリ、2011年に僅か1年間で構想から部隊編成が完結し、その後の2年半で通常の11年半の飛行時間に当たる10万飛行時間を達成している
●そしてその1年後には30万戦闘飛行時間を達成する働きで、「ISR需要を満たすアセット」のキャッチフレーズを獲得した。しかしその後は維持費がまかなえなくなり、米空軍は41機を陸軍や民間契約企業に売却し、特殊作戦群が13機のみを維持する事になった
●この様に急増するISR無人機からの情報やデータを迅速に処理するため、「機械や人工知能を活用した、分析する人の負担を軽減する対策が必要だ」と2013年に当時の米空軍ISR部長は語っていた
有人機(戦闘機や爆撃機)もISR重視
●無人ISRアセットだけで無く、有人ISR機も引き続き需要が高い。運用開始後25年が経過したRC-135 Rivet Jointは、引き続き中央軍エリアで最も需要が高いアセットである
●現在16機保有しているE-8C JSTARSについても、2016年9月に100万飛行時間を達成する働きぶりであり、米空軍は後継機を17機導入する前提で3企業を対象に機種選定を実施中で、2018年に契約を予期している
●更にE-3 AWACSは、2030年までの継続引用を念頭に現在能力向上を進めている。無人機の機数が増加すると見込まれル中でも、この様に有人ISR機は今後とも重要な役割を担っていく
●しかしここで注目すべきは、米空軍指導者達が戦闘機や爆撃機のISR能力について語り始めていることである。
●Global Strike Command司令官が「率直に言うと、最も重要でない任務は単に爆弾を投下することでアリ、もっと重要なのは、誰かの命を救うISR情報を持ち帰ることだ」と爆撃機操縦者に語り、教育訓練コマンド司令官が「F-35は戦闘機と言うより、AWACSのようだ」と表現している
●爆撃機や教育訓練のボスが、強力な航空アセットのISR能力を語るようになったとすれば、ISR革命が起こりつつあると見るのが正しいであろう
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前半部分の無人ISR機関連データが、最近の数字で無い部分もありますが、相場観を養って頂けたかと存じます。
1990年代に無人機導入を拒んだ「黒歴史」には触れず、最近の頑張りだけをアピールする、判りやすい歴史観です。
これを本当の意味で「サクセスストーリー」の歴史に書き換えるには、無人機操縦者の処遇を今後どう改善し、有人機操縦者との関係をどのように位置付けるか等、世界の空軍の手本となる無人機コミュニティーを空軍内に築けるかどうかにかかっています
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