毎年5.5兆円(日本の防衛費と同レベル)が必要との見積
2年ごとの見積も、毎回15-20%上昇
24日、米議会予算室(CBO:Congressional Budget Office)が、今後10年間(2019–2028年)に米国核戦力の維持&近代化に必要な経費を見積もって公表しました。この見積もりは隔年で行われているもので、2015年と2017年にも公開されています。
見積の結果、今後10年間で約55兆円が必要とされ、平均すると毎年の国防費の約6%を核兵器関連経費が占めることになります。
またこの約55兆円は、2017年見積の約45兆円から23%増加しており、2017年見積も2015年見積から15%アップした経緯を経ており、その急増ぶりが米議会で早くも注目を集めています
2018年にトランプ政権が核態勢見直しNPRを発表し、新たな計画として盛り込んだ低出力潜水艦発射型弾道ミサイル搭載核兵器、艦艇発射巡航ミサイル搭載核兵器、プルトニウム製造施設増設については、今後10年間で約1.9兆円と試算されています。
一方で、ロシアの欧州正面への中距離巡航ミサイル配備を受け、米国がINF全廃条約を脱退した場合の新型兵器開発や配備の経費は見積不能で含まれておらず、またNPRが示したB83核爆弾の延命措置経費についても、細部不明で見積には含まれていません
なおCBO見積では、個々の見積額を合計後、過去の同種のプロジェクトの経年経費増加率を参考に、今後約10年間のトータル経費増加額を別途約6.8兆円と見積もって追加しているもも特徴です
下院で多数派を占める民主党議員達は、到底受け入れ不可能な数字であり、今こそ核兵器削減を議論すべきだと訴え、核兵器や関連施設の近代化を強く推してきた共和党の有力議員でさえも、政党間の論点となるだろうとコメントしています
以下は項目別10年間経費見積もり
●$234 billionを戦略核兵器運搬システムと関連兵器に
戦略原潜、ICBM、長距離爆撃機と搭載核兵器、更にエネルギー省が担当する潜水艦用原子炉経費
●$15 billionを戦術運搬システムと関連兵器に
戦術航空機と関連兵器、新しい潜水艦発射巡航ミサイル
●$106 billionをエネルギー省の施設経費
核兵器関連研究所と製造整備施設(核兵器の管理保管も含む)
核兵器のメンテナンスと近代化が先送りされ蓄積中
●$77 billionを核兵器関連の指揮統制システム
指揮統制には早期警戒情報の伝達システムを含む
●残りの$62 billionはCBO予想のコスト増加額
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CBOの見積もり現物(12ページ)
→https://www.cbo.gov/system/files?file=2019-01/54914-NuclearForces.pdf
細部の見積もりや、2017年見積もりからの変化等については、現物レポートや米空軍協会web記事をご覧いただければ幸いです。
米軍ほどの数量の核兵器を保有しなくても、核兵器保有に関する基礎的な固定費は、核兵器の製造・維持整備施設や関連研究機関経費、指揮統制システム、関連人員の経費等で膨大な額になることをザックリとでも頭に置いてください。
2017年のCBO見積もり(30年間対象)記事
→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1
「2017年世界の核兵器動向」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-20
米国核兵器を巡る動向
「核兵器輸送がNo2任務」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-11-11
「ついにINF条約破棄へ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-10-20-1
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「サイバー時代の核管理」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-05-02
「リーク版:核態勢見直しNPR」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-01-13
「議会見積:今後30年で140兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-11-02-1
21世紀の抑止概念を目指す
「3本柱はほんとに必要か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-22
「米戦略軍も新たな抑止議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-11
「21世紀の抑止と第3の相殺戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03
「相殺戦略特集イベント」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-29-1
「期限を過ぎてもサイバー戦略発表なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-25
NPR(核態勢見直し)関連
「次期ICBMと核巡航ミサイルの企業選定」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-08-27-1
「マティス長官がNPRに言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-06-15-1
「トランプ政権NPRの課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-09
「2010年NPR発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「NPR発表3回目の延期」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-02
「バイデンが大幅核削減を公言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-19
戦術核兵器とF-35記事など
「戦術核改修に1兆円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-10-20
「F-35戦術核不要論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-16
「欧州はF-35核搭載型を強く要望」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-22
「F-35核搭載は2020年代半ば」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23-1
「F-35は戦術核を搭載するか?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06
ICBM後継に関する記事
「初のオーバーホールICBM基地」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-15
「ICBM経費見積もりで相違」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-09-26
「移動式ICBMは高価で除外」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-16
「米空軍ICBMの寿命」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-16
「米国核兵器の状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25-1
オハイオ級SSBNの後継艦計画関連
「次期SSBNの要求固まる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-2
「オハイオ級SSBNの後継構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-25-1
「SLBMは延命の方向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
「RAND:中国の核兵器戦略に変化の兆し」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-03-19
三浦瑠璃女史の北朝鮮と核持ち込み
→http://lullymiura.hatenadiary.jp/entry/2017/04/24/000359
ロシアのINF条約破り
「露を条約に戻すためには・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-07-20
「ハリス司令官がINF条約破棄要求」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-29
「露がINF破りミサイル欧州配備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-02-15
「ロシア巡航ミサイルへの防御なし」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06