1月31日付Defense-Newsがドイツ国内報道を引用し、老朽化が進む90機の独空軍トーネード戦闘機の後継機選定に関し、独国防省関係者が(米から購入せよ圧力があると邪推する)F-35を候補から除外したと語ったと報じ、一方でトーネードが担っていたNATO作戦における核兵器投下をどうするかについては混迷状態にあると解説しています。
ドイツの戦闘機に関しては、独と仏が中心となり欧州全体を巻き込む方向の次世代戦闘機開発が2040年配備を目指してスタートしており、トーネードの後継機はそれまでの「つなぎ戦力」の性格が強く、早くから5世代機の「F-35でなくても・・」との雰囲気が独内にあります。
これを受け昨年4月には、ユーロファイターCEOはトーネード戦闘機の後継争いにおいて、F-35よりもユーロファイターが有利に立っていると語っています。従って、今回の独国防省高官の「F-35排除発言」は、少なくとも軍事専門家や独国内では淡々と受け止められているようです。
しかし、独国防費のGDP比が低いと圧力をかけている米ホワイトハウスや米国務・国防長官、F-35製造のロッキード社は大いに不満でしょうし、トーネードが担っていた核任務の引き継ぎ先の選択肢には複数があり、機体毎の核任務の可否は米国が認可する性格のものであることから、米国VS欧州の性格を持つドロドロ感たっぷりの紆余曲折が予想されることから、簡単にご紹介しておきます
1月31日付Defense-News記事によれば
●今回の「F-35除外発言」はサプライズではない。独関係者はこれまでも、欧州企業共同生産のアップグレードしたEurofighter Typhoonが好ましいと示唆していたからである
●これは、一つには欧州企業による作戦機製造機会を維持しするという目的のためであり、更にはより重要な要素として、独仏が開始している次世代機開発などの兵器開発連合の活動に水を差すことが無いようにするためである
●ただし、現在NATOによって割り当てられているトーネード戦闘機による核兵器投下任務をどうするかについて、米国製核兵器の搭載認証を受けていないTyphoon戦闘機は答えになっていない。
●そこで今回の「F-35除外発言」以前には、例えばロイター通信のように、独国防省がTyphoon戦闘機とF-35、又はTyphoon戦闘機とFA-18E/Fの混合調達を検討しているとの報道もなされていた
●欧州製と米国製機体の混合調達は、NATO核任務遂行と欧州軍需産業保護の両面から都合が良いようにも見えるが、異なる2機種を支える維持整備上の負担は、経費面と人的・組織面の両方で大きな負担となる
●混合機種調達案以外にも、老朽化で維持経費が今後増大しても、NATO核任務用にトーネードの一部を引き続き維持してはどうかとの案も、不可能ではない案として常に検討対象として浮上している
●独政府は、核兵器搭載可能機の保有について公に議論するようなことを避けたいと強く願い、核運搬任務に関するトーネードの後継機など議論したくないのが本音であり、Typhoon戦闘機の核搭載任務承認を米国に要請するであろうが、トーネードの維持が高価でも現状維持を期待する声はやまないだろう、とドイツの政府系シンクタンク研究者は昨年8月に予言していた。
●1月31日の報道を受けても、独国防省関係者は、トーネードの核任務の後継については何も決まっていないと強調し、FA-18とTyphoonに関する情報提供をボーイングとエアバス社に求めていくだけだと述べた
●一方でF-35製造のロッキード関係者は、「F-35除外」発言について、独政府から何も聞いていないと驚いた様子で、「NATOの次世代エアパワーの基盤として、F-35は世界で最も優れた作戦機であり、電子戦分野でも全ての4世代機御上回る能力を保有している」、「長期的な軍需産業基盤や経済的機会の面からも、市場にあるいかなる戦闘機よりも優れている」と訴えた
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F-35の核兵器搭載任務への改修型の設計製造や承認も先送りになっており、米国としても突っ込みが難しい面もあるでしょうが、Typhoon戦闘機に核兵器搭載承認を与えるかも米国の微妙なさじ加減になりそうです。
核兵器を搭載するには少なくとも、核爆発時のEMP効果に耐えうる機体にするため、機体の電子回路や配線を電磁波からシールドする必要があり、F-35でも100億円の設計改修費が必要との見積もりがあったと思います
欧州での戦闘爆撃機搭載の戦術核を維持するのか?・・・との大前提となる問いにもこたえる必要がある課題です。これまた、お手並み拝見ですが・・・
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