太平洋軍トップ:中国との偶発的事案への懸念なし

かつて主張の「2027年台湾侵略想定」も引っ込める
代わりに「ウ」や「イ」関連の弾葉不足を懸念

11月19日、有事に対中国作戦の指揮を執る米太平洋軍司令官のPaparo 海車大将がブルッキングス研究所で講演し、中国軍事に関する過去数年の米軍幹部の表現ぶりを大きく転換し、「2027年」は中国による台湾侵攻の期限だとは考えていないし、また挑発的な中国軍行動や演習が増加している中でも、米国との偶発的な衝突が大きな紛争に発展する懸念は低いと語りました

2027年や2026年との年次は、例えばグアム島のミサイル防衛態勢完成の期限とされ、MDA 長官は期限前の態勢確立を最優先事項だと度々発言し、また有事には大統領直属の軍事作戦指揮官として対中国作戦をつかさどる前任からの太平洋軍司令官や米軍幹部が何度も、「2027年までに中国は・・」との表現で繰り返し危機感を訴えてきたところでした

代表的なシンクタンクである CSISも、2026年を想定した様々な前提で24回もの台湾有事 Wargameを実施して 2023年1月に結果を公表し、「甚大な被害想定を国民にも知らせ心の準備と抑止を」、「米軍は空母2隻を含む数名の損失と莫大な装備被害で当面弱体化」、「日本も平均 122機の航空機、26の艦船を損失」等のショッキングな中身で世の緊張感を高めたところです

そんな最近の米軍幹部の横並び姿勢を突然大転換する驚きのPaparo司令官講演ですが、以下では19日付米空車協会web記事から、4つの部分「2027年の意味について」、「偶発的事案への懸念程度」、「北朝鮮の最近の動向関連」、「武器備蓄量への不満」に区分してご紹介します。 北朝鮮や弾薬備に関しても、普通は言及しない部分まで触れている気がします

【2027年の意味について】
●2027年に近づくにつれ、日付の意味は薄れていくが、我々はより一層準備を整えていかなければならない。
●それは決して『販売期限』ではなかったし、中国が『出荷期限』と宣言した日付でもなかった。これは、我々が細心の注意を払うべき基準だった。
●2027年という日付の本当の意味は、中国軍の侵攻の可能性に備えなければならない時期が2035年から早まったことだ

●中国の反国家分製法(2005年制定)は台湾を対象とし、以下の3事態でのみ力に訴えるとしているが、この条件に合致する状況にはない。また中国は軍事的征服ではなく、他の手段による強制によって目的を達成することを好む
・台湾が中国からの独立を宣言
・第三勢力が紛争に介入
・中国政府が「他のいかなる手段でも、不可逆的に統一が不可能である」と判断した場合

【偶発的事実への懸念程度】
●最近増えつつある、中国が自国の船舶や航空機を米国の航空機や艦艇に異常接近させるような挑発的な行動をとった場合でも、事態が急激にエスカレートするとは懸念していない
●米軍部隊は安全に規則を遵守するよう訓練されているので、夜眠れないほどではない。米軍に2つの選択肢があれば、安全な方を選ぶよう訓練されている。公海上での一時的な名誉のため、3000億円の軍艦で「度胸試し」を行うことはない。衝突が起こっても、冷静な頭で事に臨むだろうと自信を持っている
●衝突がより大きな紛争につながる可能性はゼロではないが、そうなる可能性は極めて低いと考えている

【北朝鮮の最近の動向関連】
●(最近試験を行った北朝鮮 ICBMは、複数弾頭を個々に精密誘導する技術を備えているか?・・・との質問に対し、)まだである。
●ウクライナ戦争への北朝鮮武器と兵士供給の見返りとして、北朝鮮は「潜水艦技術と推進技術 propulsion technology」の入手を期待している。

【武器備蓄への不満】
●武器備蓄が減少しており、アジア太平洋地域の即応体制を懸念している。これは特に最近数か月間で、緊張が高まるウクライナやイスラエルへの武器提供が急増しているからだ。防空をサイルPAC-3や空対空ミサイルが特に心配であり、この懸念について沈黙を守るのは不誠実だ
●アジア太平洋地域は中国との大きな潜在脅威を抱えており、弾菜の量と質の両面で負荷大の地域である。私は2つの紛争発前から弾薬備の少なさに不満を持っており、幸直に協議すべき時を迎えている
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なぜ今になって「表現ぶり」を大転換したのか?・・・について記事は何も触れていませんが、まんぐーすは以下のような要因が絡まって背景にあると考えています

●今後ますます中国経済破綻の影響が顕在化し、中国軍の活動低下や土気の低下が表面化する可能性が高く、従来の「2027年までに中国は台湾を・・」的な発言を続けていると、米軍への信頼性が損なわれるため
●米国防省や米軍予算が厳しく、「2027年までに・・」的に中国脅威を声高に訴えても、米軍自身のずさんな装備品開発導入計画の影響もあり、それまでに装備や兵器の拡大充実が見込める可能性がないため

●トランプ次期大統領が、ウクライナや中東への軍事力提供を抑え、対中国に集中する姿勢を明確に打ち出していることから、太平洋軍が中国脅威を従来同様に(過剰に)アピールしていると、世界全体での軍事力提供バランスを欠くことになる懸念が米車や国防省内にあるため

それにしても、「手のひら返し」が過ぎるような気がします・・・何の理屈もない浪花節的な「ベタ」な説明ぶりにも驚くばかりです。

中国の台湾侵略を2026-27年との前提発言&検討
「CSISのWargame結果」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「2025年に中国と戦う」→https://holylandtokyo.com/2023/01/31/4241/
「グアムMD態勢は2026年までに」→https://holylandtokyo.com/2022/06/07/3295/
「6年以内に中国は台湾を併合」→https://holylandtokyo.com/2021/03/19/165/

台湾の前総統は正直に
「中国は台湾侵攻を考える状態にない」→https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/

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