JASSM-ERは500nmも、JASSM-XRは推測1000mm射程
ロッキードが独自開発中で2026年に試験飛行か
背景には米空軍の「大幅射程延伸」要望が・・・
9月30日付米空軍協会 web 記事が、9月27日に米国防省が発表した長射程空対地ミサイル JASSM (空対艦LRASMも若干含む)購入の約5300億円大型契約を紹介するとともに、9月 16日の空軍協会「Air, Space & Cyber Conference」でロッキード社が独自開発を発表した、JASSM-ER (Extended Range)の射程を大幅アップする「JASSM-XR(Extreme Range)」を紹介していますので取り上げます
長射程空対地ミサイル JASSM や空対艦ミサイルLRASM は、兄弟関係にあるステルス形状の兄弟巡航ミサイルで、1000ポンドの弾頭を搭載して射程延長ER 型で約500mm(約900km)の射程を持つ兵器ですが、強固な防空網を持つ中国との戦いで最も需要が高いと想定されており、例えば現在年間約720発製造のJASSM は、年1,100発まで増産予定だとロッキー ドが明らかにしています
今回発表約5300億円契約の4800億円分はJASSM用で、6割が2032年までに製造する米空軍分、約3割がFMS用で日本、オランダ、フィンランド、ポーランド向けのJASSMだと公表されており、約540億円がLRASM用とのことですが、具体的なミサイル数と配分先(軍種や国)までは公表されていないようです。以上がJASSMとLRASM 大型契約についてです
JASSM-XR (Extreme Range)の独自開発発表について
●9月16日にロッキード社のMichael Rothstein 副社長は、JASSM 本体を数フィート延伸して追加燃料を搭載可能にすることで、従来型より射程距離を大幅にアップ可能な「JASSM-XR」を独自開発中と発表したが、正確なミサイルの大きさや射程距離は語らなかった
●ただ同副社長は、射程はERに比し「大幅に拡大され、その増加は小さなものではない」と付け加えた。なお業界筋は、XRの追加燃料容量から推測してERの2倍の射程約1,000mmになる可能性があると述べている。
●同社広報担当者は、XR はJASSM-ERやLRASMと共通性があり、爆撃機、F-35、F-15、FIA-18に搭載できるが、F-16には搭載できないと説明している。同副社長はこの点に関し、XRは標準的JASSMに比し重量が増すため、戦闘機に搭載すると航空機の航続距離は短くなるが、ミサイル射程延伸で相殺されると説明している。
●また同副社長は、まだ政府の承認も資金提供もないが、米空軍が JASSMとLRASMに何を求めるかを予測し、要請があれば直ちに対応でるよう準備していると語り、別の関係者は、より長い射程距離は「当然の要請」で、空軍は漸進的な改善ではなく「ステップ的な変化」に関心があると述べた
●なおXR 開発状況について同副社長は、2026年に試験飛行が可能だが、量産準備が整うのはまだ「数年先」になると述べた
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射程1000nm(約1800km)とは、第一列島線を構成する沖縄など南西諸島と中国大陸との距離の約2倍を意味します。
遠方からの長距離攻撃は米空軍の任務で、地上部隊や米海軍は他の分野で頑張るべき・・・と空軍はかねてから主張していますが、一方で、それだけ遠方から兵器を発射するような戦いでないと、米軍兵士を派遣できないと、米国防省や米軍は考えているということです。単純に言えば・・・
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