次期ICBM計画に国防次官も実質「けつまくり」

次期ICBM計画のコストと期間超過の再承認がどうなろうと
核抑止3本柱は2022年Nuclear Posture Review既定方針だ

LaPlante7.jpg5月15日、1月に米空軍が議会に通知して明らかになった、MinutemanⅢシステムの後継となる次期ICBM計画(Sentinel計画:GBSD計画とも)の現時点で既に37%予算超過と開発期間の最低2年延長見積もりで、国防省事業の適正管理を定めた「Nunn-McCurdy法」に抵触し、その原因や改善策を取りまとめて国防長官再承認を得て議会に説明する期限が夏(7月中旬ころか!?)に迫っている中、LaPlante調達担当国防次官が上院の予算関連小委員会に出席し、

GBSD5.jpgこの問題の原因や改善策に関する検討状況に現時点では言及できないが、その取りまとめ結果がどのようなものになろうとも、核抑止3本柱(ICBM、空軍爆撃機、戦略原潜)の必要性は現政権でまとめられた「2022 Nuclear Posture Review」や「National Defense Strategy」で確認されており、絶対不可欠なものだとの趣旨を前面に押し出して証言し、その「けつまくり」具合に、議員有志が「次期ICBMスキップ(とりあえず爆撃機と戦略原潜だけ進める)」法案を提出する状況となっています

次期ICBM計画(Sentinel計画)の概要については末尾の過去記事でご確認いただくとして、当初計画約13兆円が、米空軍の年間予算に匹敵する約5兆2千億円も超過の約18.5兆円で、今後細部が明らかになるにつれさらに膨らむことが確実と見られている惨状で、

GBSD6.jpgLaPlante調達担当国防次官はその背景に関し、「契約時の企業間競争の欠如」、「担当Northrop Grummanと下請け企業の連携不足」、「インフラコストの評価能力欠如」などと「言い訳にもならない」内容を語りつつ、「Nunn-McCurdy法」の定めるコスト&開発期間の超過&遅延原因の明確化と改善計画立案を行い、Sentinel計画計画の代替案がない事とその必要性をしっかり説明したいと、まともに実現可能と誰も思わないカラ手形を切っています

このずさんな超巨大プロジェクトが生まれた背景について、1月以降に空軍長官や空軍副長官や空軍調達担当次官は「正直」に・・・
GBSD.jpg●米空軍は、次期ICBM計画ほどの巨大施設関連事業をMinuteman Ⅲ体制を構築した50年前から行っておらず、現状の施設状態に関する細部アセスメントが実施されるまで、必要な施設建設規模が把握できなかった

●Sentinelミサイル開発自体に大きな問題は発生しておらず、大きな課題は関連施設整備面に存在する。つまり現有施設の再利用を見込んでいた、ミサイル格納サイロ、地下の指揮統制施設、各種指揮統制装置やケーブルなどの通信装置インフラ等々の問題だ

GBSD2.jpg●50年以上実質的にICBM施設を放置してきた結果、施設に関するコスト推計の知見が失われており、アナログ回線を使用しているMinuteman Ⅲの地下&地上施設や指揮統制通信インフラの大部分を換装する必要が明らかになった。また、サイロや地下指揮統制施設も細部検討を進める中で老朽化から再利用が困難と判明する結果となった、

●ICBM運用に関連する3つの基地と関連施設が分散配置されている5つの州(日本の中国&四国地域を合わせた地理的範囲:かつ交通インフラや人材確保が困難な辺鄙な場所だらけ)で、これだけ秘匿度の高い施設整備事業を遂行する困難さも、本格検討を始めて初めて明らかになってきた。加えて昨今の世界的なインフレ、サプライチェーン問題、労働力コストアップが次期ICBM計画のコスト上昇につながっている。

Kendall AFA2024.jpg●米空軍の他の近代化予算から次期ICBM計画に予算を振り分けることはできない。仮に米空軍が超過分を出すことになると、他の全ての必要経費が制約を受けることになる。関連議論を直ちに始める必要がある。ただ、通常の国防省予算編成の流れで扱える問題ではない。空軍の予算内で議論することは難しく、国防省全体予算で議論してほしい
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ICBM部隊(海軍のSLBM部隊も同様)を「日陰者」「忘れ去られた部隊」「無視された部隊」扱いしてきた空軍と国防省と米国政府と米国民全てへの、「巨大なブーメラン&しっぺ返し」となっています。

Sentinel5.jpg米戦略核部隊は種々問題が表面化した2014年の国防省調査で、「忘れ去られた部隊」「インフラの老朽化で部隊の無力感増大」「国防省や米軍幹部の期待レベルと現場の実態の格差が著しい」「予算も手当ても後回し」「兵士の昇任や福利厚生は他職種優先で、現場部隊の士気は士官クラスも含め崩壊」等々と表現され、根本的解決は今もまだ・・・が実態でしょう。どうするんでしょうか?

超巨大プロジェクト次期ICBMシステム整備の苦悩
「米空軍だけでは対応不可能」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩&不安を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

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