コソボとセルビア(ロシアと同盟関係)対立が昨秋から先鋭化
両国国境付近にセルビア部隊が近年にない増強
NATOがコソボの治安部隊を増派中
1月11日、米国安全保障協力庁(U.S. Defense Security Cooperation Agency)が、コソボ共和国から購入要望が出ていた246発の携帯型対戦車ミサイルJavelinと関連装置に関し、米国政府として売却を承認すると発表しました
同ミサイルはウクライナ紛争で大量に米国など西側諸国からウクライナに提供されたため、その在庫が急減し、穴埋めに長期間要すると懸念されていた兵器ですが、増産体制が確保できたのか、バルカン半島地域の緊張を受け、2022年にアルバニアも購入許可を米国から得、2023年12月にはロシアの脅威に直面するルーマニアも263発の購入承認を受けたところです
本日はこの武器売却を契機に、「イスラエルVSハマス戦争」以降に世界の安全保障環境が流動化する中で、「西側VSイエメンのフーチ派反政府組織」が最近クローズアップされていますが、この戦火が昨年春頃からにわかに緊張感が高まってきた「コソボ(NATO側)VSセルビア(ロシアの同盟国)」に拡大しそうな不穏な状態についてご紹介いたします
2023年春以降の動向(各種報道より)
●1990年代に激しい民族紛争が起こった旧ユーゴスラビアのコソボで、コソボ住民(多数派のアルバニア系住民)と少数派のセルビア系住民の対立が再び先鋭化
●コソボは2008年に(ロシアと同盟関係にある)セルビアから一方的に独立し、住民の多くはアルバニア系だが、北部ではセルビア系が多数を占め政府との対立が継続
●セルビア側は2023年秋からコソボとの国境地帯への部隊の増強を続けており、北大西洋条約機構(NATO)は2023年10月1日、コソボに駐留する治安部隊の増派を決め、コソボのゲルバラ外相が「近年、これほど国境地帯にセルビア軍部隊が集まったことはなかった」と危機感を表明
●この状態に至るまでには、2023年5月にコソボ北部で、セルビア系住民のデモ隊がNATO主導の平和維持部隊と激しく衝突して多数のけが人が出る事態が発生し、2023年9月末には同じくコソボ北部で、コソボ警察官が襲撃され、1人が死亡、1人がけがをする事態が発生
●この際にコソボのクルティ首相は、セルビアが支援する部隊の仕業だと主張し、「セルビアの暴力とテロへの支援は、われわれの国家安全保障や国際法などに対するひどい侵害だ」とセルビア側を非難する声明をSNS投稿
●一方、この襲撃を行ったセルビア系住民のメンバー3名が死亡したことに関しセルビアのブチッチ大統領は、襲撃したのはセルビア系住民だと認めた上で、コソボ政府に責任があると主張し、双方の緊張状態が続き現在に至っている
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上記のような状況でのコソボへの携帯型対戦車ミサイルJavelin売却承認ですから、早々にセルビア大統領はこれを非難する声明を出しています。背後で世界の混乱期に乗じ、ロシアがセルビアを煽っているような気がしてなりませんが、かつての「世界の弾薬庫」は、今再びきな臭いにおいを漂わせています
なお、以前から航空機産業基盤があるセルビアは、自国製と中国製等の無人機を大量に導入しており、その保有数からバルカン半島内で1番の無人機大国となっており、仮に本格武力衝突となれば、NATO平和維持部隊は相当のリスクを負う可能性があります
小国の対立で際立つ無人機の威力
「コソボと対立のセルビアが無人機大国へ」→https://holylandtokyo.com/2022/11/29/3970/
「無人機でアゼルバイジャン大勝利」→https://holylandtokyo.com/2020/12/22/348/