台湾:真の注目は2月1日の台湾議会議長(立法院長)選出

国民党52、民進党51、民衆党8 過半数は57議席
民衆党がキャスティングボードを握るのか?
総統選で候補統一失敗の国民党と民衆党が協力可能か
総統選に勝利の民進党は、民衆党との協力関係なしでは・・・

台湾 立法院.jpg1月16日付で防衛研究所が、13日の台湾総統選挙結果を踏まえ、速攻で中国研究室の五十嵐隆幸・研究員による「台湾・総統選挙の結果と今後の展望」とのクイックレビューを「NIDSコメンタリー」枠組みで発表しました

中国によるSNS等を巧みにフル活用した統一戦線工作「情報化作戦」にもかかわらず、13日の選挙では民進党の頼清徳が当選し、1996 年以降初めて同一政党が3期以上続けて政権を握ることとなりましたが、立法委員選挙では 10 議席を減らし、14 議席を増やした国民党に1議席及ばず、第二党に転落しました

台湾 立法院5.jpgこのため、議会では第一党である国民党でも過半数に5議席足りず、第三党の民衆党の協力関係を、民進党と国民党がどのように構築するかが国政を占うことになり、第三党の民衆党が言わば「キャスティングボード」を握る形になっています

過去を振り返れば、民進党は 2000 年に初めて政権交代を選挙で成し遂げましたが、陳水扁政権の 2 期 8 年は「ねじれ」状態が続き、政局が混乱して低迷を続けた苦い過去を経験しています。

台湾 立法院3.jpg一方で2016 年からの蔡英文政権は、2 期 8 年を通じて立法院の過半数を維持し、多くの政策を推し進めてきましたが、その反面、滲み出る「驕りと慢心」に有権者は不満を募らせ、これを利用した(中国と)国民党が、立法院での選挙で逆転した形となりました

今後台湾では、5月20日に新総統就任式が行われる前に、当選した立法議員が2月1日に初登院し、新たに議長である立法院長が選出されますが、これがある意味「民進党・頼清徳政権」の命運を左右すると言っても過言ではありません。

台湾 立法院7.jpg言い換えれば、1996 年以降初めて同一政党が3期以上続けて政権を握ることになりましたが、「民進党・頼清徳政権」は初めて 1 期 4 年で終わる政権になる可能性も少なくない状態です。総統選挙は1月13日に終わりましたが、「民主党の取り込み」を狙う二大政党の争いが、2月1日の立法院長選出に向け激しさを増していく事になります

五十嵐隆幸氏による「立法院長」選出の解説をご紹介
台湾 立法院4.jpg●野党である民衆党が国民党と組むことで、民進党を少数与党に追い込む可能性がはあるが、民衆党主席の柯文哲は、2014 年の台北市長選挙では民進党の支持を受け、国民党の候補を破って当選した過去がある。
●また今回の総統選挙では、一時は国民党と候補者一本化で合意したが、それを反故にして民衆党トップとして出馬しており、両党関係の悪化は否めない

●一方で、立法院の副院長や閣僚ポストと引き換えに、民衆党は立法院で民進党との協力に合意する可能性はあり、民進党が民衆党と政策協定を結ぶことができない限り、頼清徳は厳しい政権運営を迫られることになる。

台湾 立法院6.jpg●例えば国防政策面では、米国が台湾に対し武器売却を決定したとしても、立法院で予算案が通過しなければ実際の購入は困難になる。議会で予算案や重要法案が通過せずに政策が停滞すれば、蔡英文政権のように高い支持率を維持することは難しくなり、「ねじれ状態下」の陳水扁政権の二の舞になりかねない
●「民進党・頼清徳政権」の「陳水扁政権化」を見越して、民衆党の柯文哲が 4 年後の総統選挙に再チャレンジを狙っているのであれば、国民党とも民進党とも距離を置き、是々非々の路線を取るであろう

●台湾では、これまでにも「第三極の誕生」と期待される現象が起きたが、その度に二大政党のどちらかに吸収されるか、議席を失っている。
●どちらかと組むことを決めれば、民衆党はキャスティングボートを握るどころか、衰退の道を辿ることになるかもしれない。 民衆党は、チェック・アンド・バランス機能を果たすことで、存在感を示す道を選ぶことも可能だろう
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習近平 愛される国.jpg中国の経済崩壊に伴う国力低下が影響し、大半はもう大丈夫だ・・・との雰囲気が日本に漂っていますが、中国によるなりふり構わぬ「情報化作戦」は、ボディーブローのように民進党政権にダメージを与えており、「頼清徳政権が初めて 1 期 4 年で終わる政権になる可能性」は決して低くない模様です

台湾の状況は「対岸の火事」ではありません。日本では岸田政権がフラフラ状態ですが、この隙に・・・と考えるのが大陸の赤い星国でしょう。

7ページの同コメンタリーPDF現物
https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary292.pdf

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「中国の台湾への非接触型・情報化戦争」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「中国は台湾侵攻どころではない」→https://holylandtokyo.com/2023/12/08/5330/
「中国の影響工作/概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/

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