エスパー長官が進める世界的な米軍再編検討の中
在日米軍基地が中国のミサイルに脆弱なため
23日、主要な海兵隊関係者が一堂に会する「Modern Day Marine conference」(今年はバーチャル)でDavid Berger海兵隊司令官が、中国の脅威増大を背景に、WW2や朝鮮戦争後に形成された現在の米海兵隊の西太平洋地域での配置は好ましくなく見直しを行っていると述べ、韓国や日本駐留部隊を分散配備する方向だと述べました
Berger海兵隊司令官や海兵隊計画担当将軍は直接的には述べなかったようですが、この講演をフォローしている各種米軍事メディアは、エスパー長官が命じて(9月末までにまとめると)取り組んでいる世界的な米軍再編検討の中で、沖縄駐留の海兵隊1.8万人は削減され、太平洋諸国やハワイや米本土に「転進」し分散する方向だと強く示唆しています
関連の動きとして最近では、8月末にエスパー長官が国防長官として西太平洋のパラオ共和国を初訪問し、パラオとの間で米軍が使用可能な港湾、空港、基地施設に合意したとの動きもあり、軍事的合理性に基づく米軍の動きとはいえ、中国最前線に位置する日本にとっては(韓国も)厳しい現実を突きつけられることになります
まず2020年版米国防省「中国の軍事力」レポートの表現を確認
●中国軍の近代化により、中国軍ミサイル部隊は急速に増強変革を遂げており、在日米軍基地は日増しに増強されている中国軍の中射程ミサイルや巡航ミサイルの射程内に置かれている
●空中発射巡航ミサイルを搭載可能となったH-6K長距離爆撃機は、西太平洋に進出してグアム島を攻撃可能なことを誇示し、2015年に披露された中距離弾道ミサイルDF-26も、核兵器と通常兵器の両方でグアム島の米軍基地を含む地上目標攻撃が可能な状態にある
Berger海兵隊司令官は講演で
●WW2や朝鮮戦争後、多くの米海兵隊部隊がカリフォルニア、ハワイ、そして日本と、朝鮮半島を指差すように配置されて70年以上経過した。これまではその配置で成功してきたと言えるだろう
●しかし今後10年を考える時、統合戦力にとって現在の体制は良い体制(not a great posture)ではない
●我々は海兵隊のために体制を再検討する必要がある。米国防省が世界的な米軍再編について検討しているが、太平洋地域において海兵隊は分散しなければならない
●グアムにも一部を置かねばならない(We have to factor in Guam)。我々は太平洋地域全体に分散した態勢を取らねばならず、これにより地域の同盟国やパートナー国と協力し、中国のような国際規範を書き換えようとする国々を抑止しなければならない
海兵隊で戦略作戦構想担当のPaul Rock少将は23日
●(司令官の発言を受けた記者団の質問に対し、)米海兵隊は太平洋地域で課題と機会の両方に直面しているが、豪州に続いて、米海兵隊がローテーション派遣や新たな演習を検討している具体的な国名については言及を避けた
●米国が豪州や日本や韓国と構築してきた「鉄の同盟:ironclad alliances」は、アジア太平洋で活動する米海兵隊にとって引き続き重要だと述べた
24日付Military.comやDefense-News記事は解説で
●今日米海軍と海兵隊プレゼンスは、西太平洋で日本に大きく依存している(heavily weighted toward Japan)。空母や駆逐艦を横須賀で、強襲揚陸艦は佐世保を拠点としている。
●海兵隊もIII Marine Expeditionary Forceの約1.8万人を沖縄においているが、専門家は、中国からのミサイルや爆撃機攻撃に対して脆弱な固定基地に戦力が集中していることに疑問を呈している
●米海兵隊は組織全体で、重装備や人員削減などの検討を進め、太平洋上で身軽に飛び石作戦が可能な体制を目指しており、米海軍との融合を再び進めて艦艇から着上陸して機敏に展開する方向への回帰を狙っている
●また海兵隊は今後数年(in coming years)で、数千名の兵員と家族を沖縄からグアムに移すことを計画している(The service also plans to shift thousands of personnel and dependents from Okinawa, Japan, to Guam in coming years)
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エアシーバトル・コンセプトが公表された10年ほど前から、在日米軍や極東米軍の中国正面からの「転進」可能性について、軍事的合理性に沿ったものだと予想してきましたが、すぐ目の前に迫ってきたということでしょう。
海兵隊が計画している「今後数年で沖縄グアムへ数千名の移転」が既に発表されているものなのか承知していませんが、在日米海軍も米空軍も、そして在日米空軍司令部も少しずつ追随していくことになるのでしょう
繰り返しますが、米軍の動きは軍事的合理性に沿ったものであり、政治的にも受け入れざるを得なくなった現実と認識すべきでしょう
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「中国軍事脅威の本質を考えよう」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2012-12-30
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