配下部隊に業務指針や指示事項を示す年頭文書
空中給油機の連続運用や少人数運用に挑戦する粘血指揮官
「出る杭は打たれる」で「後ろから撃たれた」か・・・
米国時間の1月27日からSNS上やメディア報道で、米空軍大将が「2025年に中国と戦うことになろう」との見積もりを含む文書を配下部隊に配信する準備をしていた・・・と話題となっています。
文書は、本ブログでも3回取り上げている米空軍輸送コマンドの熱血司令官Mike Minihan大将が新年に当たり、配下部隊に自身の情勢認識や部隊運営方針及び当面(2月と3月)の指示事項を周知するためのもので、2月1日付で配信される予定だったもののようです
「2025年に中国と戦うことになる」・・・との部分は、「2025年」を強調したいというよりも、戦いへの準備に十分な時間が無い可能性が高い事を部下に注意喚起するために、一つの見方を取り上げたものと見るべきで、それ以上のものではないと思いますが、話題になったのでご紹介しておきます
「2025年に中国と・・」は文書冒頭の情勢認識を述べた部分で、
●私が間違っていることを望むが、部下の分析によると、我々は中国と2025年に戦うことになる
●習近平は3期目の任期を確保し、2022年10月に戦争準備委員会(set his war council)を設置した
●台湾は2024年に総統選挙を予定し、これが習近平によい条件(reason)を提供する。米国の大統領選挙も2024年にあり、習近平に混乱した米国をもたらすだろう
●このように全ての情勢が、習近平と戦争準備委員会に良い条件と機会を2025年に提供することになる
●2022年を使って我々は勝利をつかむための基礎設定を行った。前年の基礎を基に、2023年を我々は明確な作戦行動につなげるために活用する
●私が「明確な作戦行動」との言葉で意味するところを知りたければ、1月に「Total Force Team Charleston」が行ったことを確認してくれ
国防省報道官は直ちに、「Minihan空軍大将の見解は、米国防省の見解ではない」とコメントを出し、「国家防衛戦略は明確に、中国は国防省にとってのpacing challengeであり、我々の焦点は同盟国等と協調して平和で自由で開かれたインドアジア太平洋地域を維持することだ、と規定している」と述べています。
また中国に関しては常に、「pacing challenge」で、米軍はアジア太平洋に指向する必要があるとの姿勢を明示しながらも、喫緊の衝突が差し迫っているわけではないとのトーンで情勢を説明しています
一方で過去にも軍人司令官は、例えば2021年に当時のPhil Davidson太平洋軍司令官が「中国は2027年までに台湾に対して軍事行動を起こす」と発言したり、米海軍トップのMichael M. Gilday大将が昨年10月に「米軍は2022年や23年に(中国と)戦う準備が無ければならない。私はそれを否定できない。それを言いまわって警告するつもりも、それを望むこともないが」と語ったりしています
今回の話題の発言の主であるMinihan大将は、前職が太平洋軍副司令官で対中国作戦の難しさを知り尽くした高級幹部で、KC-46が不具合を多数抱えたままの状態にもかかわらず、「不具合による運用制限の中でも、乗員や整備員に必要な訓練や各種手順の改善徹底を図ることで、リスクを抑えて実戦運用に提供可能だ。我々には今必要でなんだ。今の戦いに敗北すれば将来は無い」と運用開始を宣言したり、
中国作戦での空中給油機ニーズが膨大であることを踏まえた対策検討として、KC-46の最大能力発揮のため、様々な事前訓練やメディカル面での検証や配慮を行いつつ、36時間連続飛行の試みや「操縦者1名・給油操作員1名」での運用などに挑戦を続け、最前線の要求に対応しようと模索を続けている熱血指揮官です
2月1日付で正式通達予定の司令官名の文書が、1月27日時点でSNS上に流布する米軍の悩ましい現状ですが、熱血司令官の熱血ぶりについていけない部下の中に、「リークして司令官を苦しめてやろう」との意図を持った者がいたと解釈するのが自然でしょう・・・。難しい時代になったものです・・・
当該文書は以下の1月30日付米空軍協会web記事でご確認ください
→https://www.airandspaceforces.com/read-full-memo-from-amc-gen-mike-minihan/
Mike Minihan大将関連の記事
「KC-46A空中給油機が36時間連続飛行」→https://holylandtokyo.com/2022/12/12/3974/
「KC-46を操縦者1人で試行運用」→https://holylandtokyo.com/2022/11/02/3881/
「不具合抱えたままKC-46運用開始宣言」→https://holylandtokyo.com/2022/09/21/3688/