11月7日付Defense-Newsは、豪国防省の内部組織ASD(Australian Signals Directorate)が今後10年をかけ取り組むサーバー能力大増強計画Redspice(Resilience, Effects, Defence, Space, Intelligence, Cyber, Enablers)の概要文書を紹介し、約1兆円の予算で挑戦する計画の当初4年間で、予算を優先確保に動くなど豪州政府の動きを紹介しています
事柄の性質上から細部は不明な部分が多いのですが、10年計画で「サイバー攻撃能力」を3倍に、「継続的なデジタル界の捜索探知能力」を2倍に、「世界的な拠点数」を4倍にし、先進人工知能や機械学習能力開発に取り組み、そのために新たに1900名の人員を増強する意欲的な計画が、Scott Morrison前首相時の今年3月に発表され既に開始されているとのことです
背景には、中国との対立姿勢を明確にする豪州の姿勢からか、豪州社会へのサイバー攻撃が激増していることがあり、9月には豪州2位の携帯電話会社から豪州国民の1/3に相当する個人情報が大量に流出し、10月26日には豪州最大手の医療保険会社から400万人の病歴や治療歴を流出されると恫喝する事件が発生して社会的な不安が高まっていることもあるようです
1900人の人員増も、2023-24年に400名、24-25年に600名、25-26年に500名、26-27年に200名と前のめりに行われる計画で、10年で約1兆円の予算の内、スターダッシュの4年間に4200億円を投入する計画で、うち3600億円は政府の国防優先予算(Integrated Investment Program)に割り当てられ優先扱いとなっているようです
それでも経費ねん出のため、現国防装備計画からの削減が求められると言われており、無人偵察攻撃機機MQ-9を海上活動に改修したMQ-9B SkyGuardianを導入する約1300億円の計画がキャンセルされたり、450両導入が計画され機種選定が進んでいた歩兵戦闘車両の調達数が300両程度の圧縮されるとの報道が出たりしているようです。
同時に、豪州の国力に比し大規模過ぎとも言われるRedspice計画を精査すべきとの声もあるようですが、ASDトップのRachel Noble長官は、3本柱であるサイバー攻撃強化、情報収集分析能力強化、情勢認識&対応能力強化のどれもあきらめるつもりは無いと明言し、同国専門家もデジタル社会の変化速度を考えれば、極めて緊急性の高い課題だと本計画の推進に期待しているようです
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日本のサイバー体制強化の現状は、先進国の中でも「極めて寂しい」状況にあると言われており、喫緊の最重要課題のはずです・・・
Twitterが少しは見られるようになって嬉しいのですが、「検討する」から「検討を加速する」に進歩したと言われる日本のリーダーは大丈夫なんでしょうか。
豪州国防省ASDによるRedspice計画説明文書13ページ
→https://www.asd.gov.au/sites/default/files/2022-05/ASD-REDSPICE-Blueprint.pdf
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