豪州政府から年収10億円越えオファーの例も
2015年以降、約500名がコンサルタント等で
10月18日付ワシントンポスト紙が、退役米軍人の外国政府機関等への再就職状況について報じ、法律に基づき米議会の許可を得て仕事を得たものが2015年以降で約500名にのぼり、億を超える高額報酬のケースもあるほか、人権上の問題から問題視されることが多いサウジなど中東やアフリカ諸国に集中していると紹介しています
「Emoluments Clause Restrictions」との米国規定によると、20年以上の米軍勤務経験者(年金受給資格者)は、米議会の承認なしに外国政府からポストや仕事やコンサルタント業務を請け負ってはならないことになっていますが、2015年以降で申請した約500名の95%が承認を得て外国政府等のために働いているとのことです。なお本規定違反の罰則は定められていません
WP紙は、米軍大将の基本給年額の最高額が2800万円弱なのに対し、豪州政府から退役海軍幹部に年俸14億円越えのオファーがあったとか、アゼルバイジャンから米空軍退役将官に日当70万円オファーの例を上げているほか、反政府ジャーナリストが皇太子の指示で殺害されたと非難されているサウジアラビア国防省にも、少なくとも15名の退役米軍将軍が採用されていると報じており、年俸3500万円程度とも伝えています
2つの軍事コンサルタント会社を経営するオバマ政権時の国家安全保障担当大統領補佐官を務めたJames L. Jones退役海兵隊大将はWP紙のインタビューに応え、サウジ政府と4つの契約を結んでおり、計53名の米国人をリアドに派遣していると述べ、8名は元米軍将官で、32名は下位階級の退役軍人だと説明しています。
そしてJones氏は、「誰も我々に、サウジからの撤退を考えるべきだと忠告する者はいない」、「我々が撤退したら、後はどうなると思う? 中国やロシアにサウジ政府がなびく可能性が考えられるが、それが良いことだと思わない」と語っています
ただ、Jones退役大将のコンサル会社からサウジに派遣されているCharles Wald退役空軍大将はWP紙に対し、「(反政府ジャーナリスト殺害後、)サウジから撤退すべきではないかとの議論が社内で巻き起こった。自問自答し、サウジ政府支援を続けるべきか考え、留まることを決定した」と葛藤があったと語っています
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20年以上勤務の退役軍人が外国から金品を受け取って罰せられたケースでは、トランプ政権時の安全保障担当大統領補佐官であったMichael Flynn退役陸軍中将が、退役1年後の2015年にロシアとトルコ筋から6000万円を受け取った件で、FBI捜査に虚偽証言をしたと有罪判決を受けた例があります
Jones将軍の「我々が去れば、中国やロシアが来るだけ」との言葉が言い表しているように、報酬の高低だけがメディアやSNS上で話題になって済む話ではないと思います。
現役時代に知り得た米軍の秘密情報を提供する行為は戒められるべきですが、現役ができない必要な支援を外国に提供することは、OBの役割として期待してよいのではと思います
全く別の視点ですが
「米軍退役軍人の1/3が警察や刑務所のお世話になる現実」→https://holylandtokyo.com/2022/08/31/3597/