米MDAが2020年夏に一端中断も、21年に再開
2027年夏に基本システム設計審査を目指すとか
6月24日国防省ミサイル防衛庁MDAが、極超音速兵器を中間飛翔段階で迎撃する「GPI:Glide Phase Interceptor」開発に向け、Raytheon及びNorthrop Grummanとプロトタイプ設計に向けた契約を結ぶことに決定したと発表しました
2021年11月に上記2社にロッキードを加えた3社と、それぞれ約45億円の基本設計契約を結び、その結果を踏まえて「設計をさらに加速させる」契約を2社に絞り込み、追加で2社に約20億円を投資して「コンセプトデザインを加速させる」契約を結ぶとのことです
24日付Defense-Newsによれば、MDAは「GFI」の検討を2020年夏に一端中止したようですが、2021年にはミサイル防衛庁長官Jon Hill海軍中将が企業から入手した最新技術動向を基に可能性を確信し、「恐れず開発を進めるべき」と述べ、極超音速兵器が最も脆弱な「glide phase」段階に狙いを絞り検討を再開したところでした
全体計画の詳細は未公表ですが、主導する米ミサイル防衛庁(MDA)は2028年夏に「GPI」の「weapon system and missile systems preliminary design reviews」を行う予定だと、2023年度予算案関連文書に記載されているようです
「GFI」は米海軍イージス艦搭載を当面の目標とし、「Baseline 9 Aegis Weapon System」と融合させ垂直発射システム(VLS)から発射させるイメージで設計されており、イージス艦でうまくいけば、地上配備型が検討されるようです
「GFI」を使用した迎撃の流れは、まず極超音速兵器の発射段階で早期警戒衛星が探知し、地上の指揮統制センターに情報を伝達するところから開始します。その追尾情報を地上センターから通信衛星経由でイージス艦に伝送し、イージス艦は自艦のレーダーで探知していない段階でも迎撃体GFIを発射し対処します。
もちろん迎撃の最終段階でイージス艦レーダーが極超音速兵器を探知できれば迎撃に活用しますが、極超音速兵器が弾道ミサイルより遥かに低空を這うように進入することから、イージス艦自ら探知追尾できる範囲は限定的にならざるを得ません。詳しくは、下の解説映像をご覧ください
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「GFI」の解説動画by米ミサイル防衛庁MDA(約8分)
選ばれた2社から外れたロッキードですが、「GFI」の進展具合によってはロッキードの復帰もありうるとMDAはコメントしており、極超音速兵器開発において空中発射型の米空軍用「HAWC」と「ARRW」を担当し、米海軍用の「Conventional Prompt Strike」や陸軍用「Long Range Hypersonic Weapon」システムとりまとめも担当するロッキードへの期待も依然高いようです
弾道ミサイルより遥かに高価な「極超音速兵器」ですが、それを迎撃するとなると、恐らく「極超音速兵器」自体の数倍~数十倍のコストが掛かると想像いたします。
相手が「脆弱」な「glide phase」段階で迎撃を目指すにしても、迎撃成功確率は対弾道ミサイルよりも低下すると思われ、ますますロシアや中国のような無法者国家に有利な軍事環境になるわけです
JSFさんによる分かり易いGFI解説記事
→https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20220114-00277179
米国による極超音速兵器の開発(GFIではない)
「空軍:高価な同兵器は少数保有で」→https://holylandtokyo.com/2022/02/22/2742/
「国防省が空軍に開発の改善提言」→https://holylandtokyo.com/2022/02/10/2670/
「技術担当次官:同兵器は最優先事項だ」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「空軍長官:重要性は中国と米国では異なる」→https://holylandtokyo.com/2022/01/25/2639/
「米海軍潜水艦への極超音速兵器は2028年」→https://holylandtokyo.com/2021/11/26/2450/
「米陸軍部隊が実ミサイル以外を受領」→https://holylandtokyo.com/2021/10/18/2342/