米空軍省のソフト開発責任者が怒りの辞任

元は著名なIT&サイバー&ソフト開発若手企業家
頭の固い変化に追随不能な指導者だらけ
IT無知な少佐&中佐クラスの人事配置に怒り心頭
官僚的な縦割り行政とエゴだらけの意思決定&不作為
3年間の不満をSNS上でぶちまけ辞職

Chaillan CSO.jpg2日、2018年5月から米空軍省のソフト開発責任者CSO(chief software officer)を務めた35歳(推定)のフランス人Nicolas M. Chaillan氏が、米空軍や国防省のソフト開発やIT事業に関する理解の無さをネット上にぶちまけ、辞任しました

Chaillan氏はわずか15歳でソフト開発企業を立ち上げ、これまでに12ものソフト関連事業を起こしたフランスでは著名なIT&サイバー&ソフト開発企業家で、ソフト開発者としても最近8年間だけでも澄明なソフトを150本作製し、500企業で採用されているその道のプロです

そんな華々しいご経歴の新進気鋭の若手ですが、どのような経緯か不明ながら米国政府機関に縁があったようで、国土安全保障省でサイバー特別補佐官を2016年10月から1年半を務め、2018年8月からは空軍省勤務と並行して国防省国防長官室でクラウド&ソフト開発特別補佐官を務めていました(おそらく国防省も同時に辞任したと推測)

Chaillan CSO2.JPGご本人によれば、「米国防省のような巨大組織で成果を上げられれば、世界のどんな組織でも変えられる」との「青雲の志」をもって乗り込んでこられたのでしょうが、残念な結果となってしまいました

フランスの民間で華々しい実績を上げた若手が、巨大官僚組織である米国防省や空軍省に来れば、フラストレーションがたまるのも当たり前ですし、自らのアイディアを聞き入れない組織への不満も募るでしょう。そんな怒りが爆発状態でのSNS上への暴露ですから慎重にみる必要がありますが、「さもありなん」な内容ですので、ご参考まで紹介します

理解力も能力もあったWill Roper前調達担当空軍次官補やその関係者が政権交代と共にペンタゴンを去り、ますます動きにくくなったのでしょう・・・・。残念です

2日付米空軍協会web記事によれば
Chaillan氏の功績
Chaillan CSO3.JPGWill Roper調達担当空軍次官補、Lauren Barrett Knausenberger空軍省CIO、Preston Dunlap主任IT組織改革等のIT技術に見識のある空軍省指導層と共に空軍省のIt改革に尽力し、また国防省のクラウド&ソフト開発特別補佐官として、ソフト開発を迅速化する「DevSecOps Initiative」を推進した
この「DevSecOps Initiative」はソフト作成を分割し、ソフトの定期的反復改善を推奨する方式で、従来の方式と比較して「Windows XT PCとWindows 10 PCほどの差がある」と言われている

またソフト改革による戦力増強事例として、老朽機であるU-2偵察機に飛行中でも新ソフトを導入可能なシステムを導入し、大きな話題を呼んだ

そんなChaillan氏は辞任理由をSNS上で
Chaillan CSO4.jpg縦割り行政の非効率や官僚制の鈍重さにいらだっていたが、宇宙軍が空軍から分離することで、ますます縦割りのサイロが増えることになり、大きな誤判断だと感じている
ITやサイバーの見識がない少佐や中佐クラスを、お決まりの人事ローテーションで日進月歩のITやサイバー分野に配置することを止めるべきだ。飛行訓練を受けていない士官をパイロットとして部隊配置しないだろう。この問題はそれほど大きな障害となっている

米軍の指導層の、IT技術やIT関連投資への反応の無さや関心の無さは、私の辞任を早めることになった大きな理由の一つである。過去3年間に渡り必要な改革に向けた疲れる戦いを続けてきたが、ペンタゴン内のITチーム編成を変える力は私にはなかった
より悪いことに、国防省の規模が大きいことを言い訳に改革案を非難する者、、組織防衛のエゴや個人の栄達のため反対する者、国防でなく各軍種の利益を優先するものなど、投資の無駄を考えない者に多数遭遇することとなった

Chaillan CSO5.jpg辞任の直接の引き金となったのは、国防省や統合参謀本部が最優先事業だと公言し、私にCSOとして4か月との短期間で取りまとめるよう命じたMVP(Minimum Viable Product)について、私が現場ニーズを短期間で吸い上げ、プロジェクトにまとめる過程を承知していながら、2022年度予算案で「予算配分ゼロ」にした決定である
国防省は約10万ものソフト開発を進めている地球上最大のソフト依存組織である。ただそこでは、10万のソフト開発が相互連携や協力がほとんど皆無な縦割り体制で行われており、無駄な重複が多数存在する。開発の多様性の利益を主張する者がいるが、ほとんどの場合、偏狭な組織防衛が背景にあるのが現状である

私は、20年後の米国の子供たちが、世界で圧倒的な人口や開発力を有する中国に対抗するチャンスを失って茫然と立ちすくむ将来を恐れている。中国のハードワークな人口と対抗するには、より賢明で効率的で前向きな姿勢で機敏さと改革志向な態勢である必要があるのに。米国は時代に先んじリードする立場になければならないのに。後塵を拝することは許されないのに
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Chaillan氏の華々しいご経歴
(急いでみないと消去されますよ)
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/1926281/nicolas-m-chaillan/

恐らくWill Roper前調達担当空軍次官補がChaillan氏を呼んできたんじゃないかと思いますが、米空軍や国防省が最優先課題としているJADC2の中心的担当者が辞任したということなのでしょう

最近JADC2やABMS関連のニュースがないなぁ・・・と思っていたのですが、Chaillan氏の動きも背景にあったのかなぁ・・・と懸念しています

米国防省クラウド事業がドロ沼(JADC2やABMSの基礎事業)
「将来戦の鍵クラウド事業出直し」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-07-09
老朽機U-2をソフト改修で刷新試行
「U-2にAIセンサー操作員搭載」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-17

全ドメイン指揮統制JADC2演習の関連
「理解容易な2事業から開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-29
「国防副長官がAIDA開始発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-06-23
「具現化第1弾でKC-46に中継ポッド」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-05-22
「3回目はアジア太平洋設定で」→https://holylandtokyo.com/2020/10/05/425/
「2回目のJADC2又はABMS試験演習」→https://holylandtokyo.com/2020/09/09/476/
「初の統合「連接」実験演習は大成功」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-23
「今後の統合連接C2演習は」→https://holylandtokyo.com/2020/05/14/671/
「連接演習2回目と3回目は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-02
「国防長官も連接性を重視」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-02-09
「将来連接性を重視しアセット予算削減」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-28

→https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

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