GAO最新報告書がエンジン問題を酷評も
国防省F-35計画室はいつものように対処中と
導入開始のODINについて現場は「ストレス依然高い」
4月28日、下院軍事委員会でF-35の維持費高止まり問題が取り上げられ、議員からは「維持費問題を無視したF-35導入は止めよ」「F-35はロッキードは金づるになってしまっている」等々と厳しい批判が国防省F-35計画室長や調達担当国防次官に投げつけられ、特にエンジンブレードの耐久性問題が表面化しているF135エンジンや、兵站情報システムALISの後継であるODINへの疑問が噴出しています
2020年に発覚したF135エンジン問題は、タービンブレードの耐久性が想定より低くエンジン故障が頻発し、修理能力限界を超え、40~50機のF-35が搭載エンジン不足から飛行不能に陥っている問題です。
これに対し国防省F-35計画室長は3つのアプローチで対処すると述べ、修理に必要な時間短縮、修理施設の増設、他の修理サイクルを調整しエンジンの前線部隊所在時間延長に取り組むと言い続けてきましたが、実際には修理能力強化以上に故障が頻発し、例えば2021年5月には38機がエンジン待ち非稼働でしたが、9月末には52機に同様機体が急増していることが暴露されています
また兵站情報システムALISの後継システムODIN(Operational Data Integrated Network)については、2022年1月末に14セットを米国の各軍種用基地や英国とイタリアのF-35拠点基地に提供したとの発表がありましたが、その後について会計検査院が配備先を訪問して聴取した現場の声を記事が取り上げているのでご紹介しておきます
4月28日付米空軍協会web記事によれば
●国防省は2021年1月にF-35稼働率が70%に達したと宣伝したが、そこをピークに2021年9月には53%にまで低下しており、2021年全体では目標の65%を下回る61%であった。
●そして4月28日に米会計検査院が発表したレポートでは、F-35の稼働率は68%以下と報告されており、同軍事委員会の議員は口々に「受け入れがたい数値だ」と不満を口にし、このような稼働率や維持費高止まりの問題を放置したまま、新たな機体を導入することは許容しがたいとF-35計画室長や国防次官を非難した
●エンジン修理待ちによる非稼働機は2022年2月で36機にのぼり、何か月も30機以上の状態が続いており改善の兆しが見えないとも、同委員会の委員は非難した
●F-35計画室長(Eric T. Fick空軍中将)は前述の3つのアプローチにより、F135エンジン修理能力は向上しつつあり、2021年の77個エンジン修理から、2022年には122個まで修理能力を高める予定だと説明した
●そして同室長は、米会計検査院GAOが4月末の報告書で「このままでは、2030年のF-35非稼働機の43%はエンジン問題に起因することになる」指摘した件に関し、必要な対策をとっており、GAOの指摘の様にはならないと反論した
●しかし議員らはGAOが指摘したように、F-35計画室の将来見通しが楽観的な予算配分見通しや故障発生見積もりの前提で導かれている点を懸念しており、この点に関し議論は平行線のままだった
●GAOレポート執筆のDiana MaurerはF-35計画室の説明に関し、同計画室の計画が完全に遂行されることを期待するしかないが、(現実には、これまで様々な課題に関し、)同計画室の計画はその一部が実行されたにすぎない・・・とコメントしている
ALISからODINへの移行について
●F-35計画室長は、ALISからODINへの移行によって、スイッチを切り替えるように従来の不具合が解消されると説明したことを反省していると述べた
●同室長は、実際にはF-35の兵站情報システム生態系が、徐々に変化していき、部屋の照明が次第に明るくなるように変化が見えてくるのが現在の状況だと説明した
●このような説明に対し、ODINが導入された前線部隊を視察したGAOのDiana Maurer氏は、前線の維持整備担当兵士は、依然として相当レベルのフラストレーションをODINになっても感じており、改善されているとは思うが、前線兵士が望むレベルにはないと感じていると指摘した。
●また同氏は、ODINが目指す改善のレベルとその評価をどのように実施するのかを明確にし、改善をしっかり把握して資源投入すべきだとかねてから主張していると訴えている
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米会計検査院GAOがF-35の問題点を指摘すると、国防省F-35計画室は「GAOの指摘は目新しいものではない」「その点は既に把握済で、対処している」と常に答えてきましたが、最終的にはGAOの指摘したとおりに問題が大きく顕在化し、小手先だけの対処措置しか行われなかったことが白日の下にさらされる結果を繰り返してきました
「F135エンジン問題」はさらに悪化の一途をたどるでしょうし、、「ODIN導入」にしても、最終的なしわ寄せは現場の整備員が背負ってカバーすることになるのでしょう・・・・。
これが多かれ少なかれ産軍複合体によって生み出された国防装備品の実態ではありますが、F-35クラスの史上最大の国防装備品ともなると、「亡国のF-35」と呼ぶほどの威力を発揮することになります。担当する皆様は本当にかわいそうです
F-35のエンジン問題
「エンジン問題で15%飛行不能」→https://holylandtokyo.com/2021/07/27/2022/
「エンジンブレードと整備性問題」→https://holylandtokyo.com/2021/02/17/263/
「Lord次官が最後の会見でF-35問題を」→https://holylandtokyo.com/2021/02/03/254/
F-35のALISをODINへ
「ODINまず14セット提供」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2022-02-02
「ODINの開発中断」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-04-24
「ODIN提供開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-24
「元凶:ALISとその後継ODINの現在位置」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-17
「ALISを断念しODINへ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-22
「ALIS問題を議会で証言」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-11-15
「ALISは依然大きな障害」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-02-02