米軍態勢見直し完了発表もほぼ非公開で日本に言及無し!?

Indo-Pacific重視、対中国重視が柱だと強調も
予期される在日米軍削減に会見で言及無し

Global Posture R.jpg11月29日、Mara Karlin政策担当国防副次官が会見し、オースチン国防長官が2月に表明していた「米軍の態勢見直し:GPR:Global Posture Review」が完了し、米国防省の重要優先地域であるIndo-Pacific地域への戦力ローテーション、投資、演習訓練等を強化し、ロシア正面の欧州には「信頼に足る抑止のための戦闘力:combat credible deterrent」を強化すると表現しました

ただし同副次官は、再編の細部については安全保障上の理由や同盟国等との関係から非公開事項だとし、強化や増強する一部の概要に言及しただけで、具体的にどこから削減してどこを強化するのか等については触れませんでした

この米軍態勢見直しGPRでは、中国のミサイル射程範囲にがっつり入る在日米軍の脆弱性も大きなテーマのはずで、昨年9月に米海兵隊司令官が「米海兵隊の西太平洋地域での現配置の見直しを行っている。太平洋地域全体に分散した態勢を取らねばならない」と明言し、数千人規模の沖縄からの移動がささやかれていました

Austin GPR.jpgまた、元々この態勢見直しは、2020年1月に当時のエスパー国防長官が開始したもので、同年9月までに固めてしまう(大統領選挙までに固めてしまう)予定でしたが、トランプ大統領とエスパー国防長官の不仲や、同盟国との複雑な調整もあり延び延びになっていたもので、それを引き継ぐ形でオースチン長官が2021年2月に再度仕切り直して開始を命じたものです

トランプ政権からバイデン政権に代わり、国防費増強に消極的なドイツ国内の駐留米軍1.2万人削減案を引っ込めたり、豪州に攻撃原潜を提供するAUKUSとの新枠組みが新たに創設されたりとの話題はありますが、日本にとって肝心の「在日米軍の態勢見直し(つまり大幅撤退)」について全く情報が出てこないのが気になるところです

ご参考:2020年9月23日:Berger海兵隊司令官発言
Berger3.jpg●(中国の脅威増大を背景に、)WW2や朝鮮戦争後に形成された米海兵隊の西太平洋地域での現配置は、今後10年を考える時、統合戦力にとって良い体制(not a great posture)ではない。見直しを行っている
●グアムにも一部を置かねばならない(We have to factor in Guam)。我々は太平洋地域全体に分散した態勢を取らねばならず、これにより地域の同盟国やパートナー国と協力し、中国のような国際規範を書き換えようとする国々を抑止しなければならない

上記発言を受けた当時の各種軍事メディア報道
●米海軍と海兵隊プレゼンスは、西太平洋で日本に大きく依存している。空母や駆逐艦を横須賀で、強襲揚陸艦は佐世保を拠点としている。海兵隊もIII Marine Expeditionary Forceの約1.8万人を沖縄においているが、専門家は、中国からのミサイルや爆撃機攻撃に対して脆弱な固定基地に戦力が集中していることに疑問を呈している
●海兵隊は今後数年(in coming years)で、数千名の兵員と家族を沖縄からグアムに移すことを計画している

11月29日付米空軍協会web記事によれば
Karlin2.JPG●Karlin副次官は会見で、「GPRの多くは、作戦運用上に理由と、同盟国等との協議の秘匿を保つため、引き続き非公開としている」、「国防長官は中国がpacing challengeだとの一貫した姿勢で見直しに取り組んでおり、Indo-Pacificが優先地域である」と述べ、
●「GPRは更なる地域の同盟国等との協議を指示するものであり、中国からの侵略を抑止し、地域の安定に寄与するものである」と表現した

●朝鮮半島情勢に関連して同副次官は、オースチン国防長官は11月30日に韓国を訪問し、「米国のextended deterrenceへの変更について議論する」、「GPRでは、米陸軍攻撃ヘリ部隊や火砲師団司令部のローテーション派遣を恒久配置にする」と述べた
Karlin3.jpg●Indo-Pacific地域への増強話では、9月に豪州国防相が更なる航空ローテーション部隊や弾薬事前集積が来るだろうと述べ、2021年度予算に「Pacific Deterrence Initiative」として約2500億円が承認されグアム島などに投入されるとの話題がある

●更に、GPR取りまとめは、他省庁との議論や、NATO諸国・豪州・韓国・10か国以上の中東アフリカ諸国との協議を踏まえて行われたことを、同副次官は強調した
ただし注意点として、GPRでは、アフガニスタン派遣兵力や特定機能分野である核戦力・宇宙・サイバーについては触れておらず、これは個別に議論すべき課題と分類していると説明した

Karlin.JPGアフリカや南北アメリカについて、会見で同副次官は細部には触れず、アフリカsub-Sahara地域から世論の圧力でフランス軍が5000名を撤退させる中、バイデン大統領が10月に仏大統領との会談で追加アセット提供を約束しているが、細部については依然不明である

●2020年12月にトランプ政権がソマリアからの全面撤退を指示したが、具体的なISRアセットの撤収について具体的な発表は依然としてない
南北アメリカおよび中米地域については、引き続き人道支援や災害対処や麻薬取引対処に取り組むと説明があったが、具体的な戦力の変化等については同副次官は一切述べていない
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Pentagon building.jpg11月30日の昼のNHKニュースでも、このGPR会見で「日本」関連の言及があったとは一言も報じておらず、上記記事を書いた記者が日本に関心が低く、書き漏らしたわけではないようで、Karlin副次官は会見で日本に言及しなかったようです

11月30日にオースチン国防長官が韓国を訪問して「米国のextended deterrenceへの変更について議論する」するそうですが、在韓米軍を削減して豪州や米本土に撤退させ、「遠方から抑止力」を発揮すると説明しそうな雰囲気です

それにしても、大きな本丸とまんぐーすが想定する在日米軍の削減について情報がないのが不思議です。メディアの皆様、視聴率は取れないでしょうが、重要な話ですので頑張ってくださいね

米国防省のプレスリリース
https://www.defense.gov/News/Releases/Release/Article/2855801/dod-concludes-2021-global-posture-review/

米軍の態勢見直し
「オースチン長官が米軍態勢見直し指示」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-06
「司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-25
「ドイツ駐留米軍削減発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-30
「在韓米軍削減案報道に長官は」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-22
「9月末までに米軍再編検討を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-14
「アジア太平洋で基地増設検討中」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-08-28
「新統合作戦コンセプトを年末までに」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-08-18
「太平洋軍司令官が議会に要望」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-29

在日米軍基地は有事には
「米空軍はアジアで米海兵隊と同じ方向へ!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
「西太平洋の基地防御は困難」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-23
「欺まんで中国軍を騙せ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21

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