南シナ海を通過し、豪州、グアム、東京と上海にも寄港
8月2日、ドイツのKramp-Karrenbauer国防相がドイツ海軍のフリゲート艦バイエルン(Bayern)をアジア太平洋地域に派遣すると発表し、2020年に発表したアジア太平洋問題への対処戦略に沿ったものだと説明しました。ちなみにドイツ海軍艦艇のアジアへの派遣は20年ぶりとなるそうです
同日フリゲート艦バイエルン(Bayern)はドイツのWilhelmshaven港を出港し、12か所に寄港する6か月間の航海を開始しましたが、その寄港地にはDjibouti, Karachi, Diego Garcia, Perth, Guam, Tokyo, Shanghai等が含まれている模様です
ドイツのアジア太平洋戦略が発表された昨年春には、バイエルンより最新の対空能力の高いフリゲート艦「ハンブルグ:Hamburg」が、インド洋までの5か月の任務行動を実施すると発表され、インド洋での共同訓練や中東沖でのNATO及びEU枠組みの海賊対処作戦(Operation Sea Atalanta)に参加予定とされていましたが、コロナの影響で取りやめとなっており、「バイエルン」は仕切り直し派遣です
本来なら最新型のハンブルグを今回も派遣したかったようですが、規模の大きくないドイツ海軍内の艦艇ローテイション調整が難しく、今回のバイエルン派遣もドイツの新戦略の象徴として、艦艇修理サイクルや要員訓練サイクルを相当犠牲にして派遣にこぎつけたようで、同時にコスト的にもハイレベルな決断がなされた様です
2日付Defense-News記事によれば
●1年前に発表されたドイツのインド太平洋課題への対処戦略では、中国問題についてデリケートな扱いになっており、安全保障上は潜在的敵対国との認識で論じられているが、他の分野では仲間のような扱いの部分もある
●今回の6か月の任務航海は、「国際海域における航行の自由」や「開かれた社会」の理念を掲げたもので、価値観を共にする航海先地域のパートナー国へのサポートの意を表明するためのものだと同国防相は声明の中で意義を述べている
●同国防省はバイエルンの役割について、北朝鮮に対する国連制裁を後押しし、NATOやEUによる地中海でのテロ流入対処「Operation Sea Guardian」やアラビア海での海賊対処「Operation Sea Atalanta」を支援するものと説明している
●ただし全体の派遣枠組みとしては、沿岸国との共同訓練や「show-of-presence」を基調としたもので、ドイツ国内法が定める独議会承認が必要な海外での軍事作戦に該当するものではないと整理されている
●米海軍士官学校教員でドイツ海軍専門のSebastian Bruns氏は、今回の艦艇アジア派遣は、陸軍が大きな力を持つ独軍内において、独海軍の立場を国内外にアピールする格好の機会であると述べ、独海軍にとっては、経費面でも、艦艇運用のやりくり面でも大きな負担と決断を要する決定であったが、それだけ重要な意味を持つとコメントしている
●また国としても、欧州諸国に政治的アピールをする極めて重要な機会であるとも表現している。(昨年ハンブルクがコロナの影響でインド洋派遣を断念した背景もあり)
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トランプ政権時代には、国防費支出が少ないと名指しで非難されてきたドイツですが、冷戦後の軍縮の流れから反転し、ロシアの脅威増もあり、2代続けての女性国防相の下で変革を追求しているようです
まぁ、米国としては、英国に対してオースチン国防長官が本音を漏らして「インド太平洋のみで協力したいわけではない。英国は他の地域での方がより有用かもしれない」と語ったように、そんなに無理せず対ロシア正面でまずがばってくれ・・・と言いたいところでしょうが・・・
ドイツが大軍縮からの反転に苦悩
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