FCASの中核の機体開発は仏独の主導権争いや要求性能不一致で決裂
ただ体面保持でFCASの「戦闘データクライド」等は継続
両国首脳が6月第1週の「EU-Western Balkans summit」で決定
独国防相:3-4案検討「F-35追加購入」と「GCAP参加」と「独自開発」と「謎案」
FCASの中核である次世代戦闘機の機体開発については、両国間で機体性能要求や開発の主導権に関する合意を得ることが難しいことからプロジェクト継続を断念し、FCASの残りの共同開発分野
で比較的順調に進展してきた「戦闘クライド」などのみを、両国の体面を保つために継続することで一致した、と報じています。
ちなみにもう一つの共同開発国であるスペインは、スペイン中核企業インドラ・システマス社が独エアバス社の下に入って参画する形となっていることから、実質的にドイツと運命共同体となっています。
その他6月8日付Defense-News等によれば
●欧州主要国である独仏が巨大プロジェクトで決裂することによるイメージ悪化や、欧州としての安保姿勢に影響が出ることを避けるため、仏大統領がFCAS全体を中止することなく、中核の戦闘機だけを放棄可能な方策を追求し、これに独側も応じ、「戦闘クラウド」等はFCASの名の下に
維持する方向となった。(まんぐーす注:「戦闘クライド」以外には、「無人僚機操作」や「エンジン開発」が含まれると推測)
●メルツ独首相は、独空軍に有人第6世代戦闘機開発が依然必要なのか公然と疑問を呈し、仏が求める空母に着艦可能で核搭載も可能な戦闘機を、独は必要としていないと述べていた。
●FCASプロジェクトは、2017年に当時の独メルケル首相と仏マクロン大統領が合意して始まった、約17兆円の巨大プロジェクトで、英伊(現在は日本も参画)によるGCAP開発と競合関係にある次世代戦闘機開発である
6月10日付Defense-Newsによれば
●9日Boris Pistorius独国防相は、代替案として3案あるが、内容に言及しなかった不明の4案目の存在も示唆した。
●3つの案とは、「F-35追加購入」と「他の国際開発計画への参画:GCAPの事」と「独によるエアバス社を中心とした独自開発」であると、同国防相は語った。
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末尾の過去記事でご紹介した内容からすると、今年2月~3月の時点で、独首相はやる気がないことを隠そうともせず、仏中核企業のDassault社トップも独の中核エアバス社CEOも、各政府からの要請があれば、別々に独自の戦闘機開発を行う「Two-Fighter Solution」で主導的役割を果たす準備があると語っており、ここ数カ月は両政府が、体面を保つための「落としどころ」を探っていたということでしょう。
仏独の中核企業は「Two-Fighter Solutionが可能」と強気ですが、メルツ独首相の様に「有人第6世代戦闘機開発が依然必要なのか?」と疑問を呈するのが自然だと思います。欧州の脅威ロシアは、単純化すれば「通常兵器での西側との対峙をあきらめ、核による恫喝で西側に対抗」が基本姿勢で、ウクライナ戦での国家疲弊から、その傾向が更に進むと予想できるので尚更です。
仏独が3月に核抑止に関する安保戦略協議体(nuclear steering group)を設置して欧州グループ形成に動き出し、日本とGCAPで組む英国も核兵器維持への再投資が必要なタイミングで、欧州諸
国には核抑止とウクライナ支援(米国の欧州離れを受けた補完体制強化を含め)が最優先の時期であり、「有人」の「次世代戦闘機」への投資優先など当然低くなるはずです。
日本が加わっている戦闘機開発GCAPに話を移します。
今、月刊誌「VOICE」7月号による日本の防衛戦略に関する特集を読ませてもらっているのですが、「防衛三文書」見直し関わる10名以上の政治家や専門家による充実した論考集となっています。
ただ、「まんぐーす」が全体から「直感的かつ強烈」に感じるのが、「既に国際合意で着手してしまっているが、巨額投資のGCAP(日英伊の戦闘機開発)を正面から戦略に取り込んだら、『脅威の現実と変化』や『新しい戦い方』との整合で理論破綻するから隠したい」との執筆者の皆様の「心の葛藤」です。ハドソン研の村野さんなど、特に苦悩しながら表現を絞り出されたのでは・・・と勝手に拝察いたしました。
もしかしたら、英国の政権不安定と英国の資金難から、6月末までの暫定契約期限切れ後の共同開発体制がまとまらない恐れを踏まえ、GCAP終焉可能性も踏まえ、最も高コストなプロジェクトなのに言及を避けたのかも・・・と考えてしまいました。
何とか暫定契約を延長できたとしても、FCAS崩れのドイツやカナダまでGCAPに絡み始めたら、既に「重要施設の強靭化や分散化」「電子戦」「サイバー戦」等々の最重要施策そっちのけで、「穴に首を突っ込むダチョウ」の様に「GCAPに猛進(妄進・妄信)する戦闘機命派が支配する航空自衛隊」が、「戦う前に飽和」するのは目に見えていますから・・・。
仏独西によるFCAS関連
「仏中核企業トップもあきらめ感」→https://holylandtokyo.com/2026/03/09/14076/
「独首相はもう終わりだと」→https://holylandtokyo.com/2026/02/27/14019/
「独がGCAPへの参加を検討」→https://holylandtokyo.com/2026/02/13/13929/
「FCASは仏独対立で分裂危機に」→https://holylandtokyo.com/2025/07/03/11970/
「ベルギーも関与へ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/26/4766/
「独仏中心に第6世代機開発」→https://holylandtokyo.com/2018/04/11/7020/
仏独主導の核抑止に関する「欧州安保体制再構築」
「Nuclear Steering Group設置」→https://holylandtokyo.com/2026/03/10/14095/
GCAPと英国関連
「3カ月暫定契約で息継ぎ」→https://holylandtokyo.com/2026/04/06/14400/
「米報道:遅延と経費増」→https://holylandtokyo.com/2026/03/13/14152/
「伊が英国の姿勢を酷評」→https://holylandtokyo.com/2026/02/02/13845/
「英が踏みとどまる」→https://holylandtokyo.com/2024/11/12/6529/
「英伊が日本に:逃げるな!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
その他GCAP関連
「ポーランド参画希望」→https://holylandtokyo.com/2026/03/31/14284/
「伊が開発費3倍増審議」→https://holylandtokyo.com/2026/01/23/13760/
「No2伊代表が語る」→https://holylandtokyo.com/2025/06/13/11826/
「陰然な雰囲気のGCAP」→https://holylandtokyo.com/2025/01/24/10678/
「やっと管理体制に合意」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/


6月8日付Defense-Newsは、同日ドイツ関係者2名が明らかにした情報として、6月第1週にモンテネグロで開催された欧州の首脳会議(EU-Western Balkans summit)の間に、仏マクロン大統領と独メルツ首相が協議の場を持ち、仏独スペインが2017年から開始している次世代戦闘機システム開発(FCAS:Future Combat Air System)に関し、