米空軍が空軍大改革の肝ICC創設も中止へ

装備品構想を一元管理する「Integrated Capabilities Command」中止
空軍司令部内に「A5/7(Chief Modernization Officer)」新設を代替に
Kendall前長官と退役迫られるAllvin参謀総長の空軍大改革は骨抜きに

10月14日から15日付各種軍事メディアは、前政権の米空軍トップ(Kendall前空軍長官とAllvin空軍参謀総長)が中心となって推進した「米空軍大改革」の柱で、現在は各関連主要コマンドが主に担っている新規装備品の構想や要求性能立案と事業推進役割を吸い上げ、専従の新コマンド「ICC:Integrated Capabilities Command」に集約する計画について、

既に2024年9月に「暫定ICC司令部」が開設され業務を開始していた状況にありましたが、新しいTroy Meink空軍長官とAllvin空軍参謀総長以外の米空軍幹部の強い反対を受け、米空軍として新コマンドICC創設計画を中止し、代わりに、空軍司令部内に「A5/7」と呼ばれる「Chief Modernization Officer」が統括する部署を新設する形に変更することになったと報じています(←写真左はA5/7に就任するChristopher Niemi少将)

2024年2月開始の米空軍大改革主要メニューは、以下3点でした

1.将来装備品の構想や開発計画を新コマンドICCに集約
●新規装備品の導入構想や要求性能や開発計画専従の「将来体制を検討する専門コマンド:ICC:Integrated Capabilities Command」を中将トップで創設し、従来この役割を担ってきた戦闘・輸送・CSコマンドは日々の作戦運用とそのための即応態勢維持に集中させ、戦闘機や輸送機や爆撃機の将来構想検討から距離を置かせる

2.戦闘・空輸・CSコマンドは戦いと態勢維持に集中
●戦闘・輸送・CSコマンドの戦闘能力強化のため、冷戦期の手引きを復活させ、コマンドの枠を超えた大規模演習や事前通告なしの戦闘能力点検を復活させるなどに取り組む。
●この際、基礎単位の航空団Wingを前方展開即応部隊や基地機能維持部隊等に区分し、各Wingへの要求を明確に区分してメリハリのある戦力造成を行う。
●また、各部隊の前線派遣と母基地での訓練や休養のサイクルを新AFFORGENとして再整理&再構築する。

3.ACE構想を全ての基準として一貫した教育体系を
●教育訓練では、ACE(Agile Combat Employment)構想の実現を教育訓練体系の共通重点目標とし、同構想を遂行可能な多能力を備えた兵士育成に空軍全体として取り組み、新兵教育から上級教育までを含めた一貫した体系で実現する

新政権のヘグゼス国防長官とMeink空軍長官就任後、今年2月に上記計画が「凍結」され、8月には空軍部隊基礎単位である「航空団Wing」の機能区分明確化の中止が発表されると共に、前政権時代からKendall前空軍長官と改革を推進してきたAllvin空軍参謀総長の辞任が発表されました。

その後Allvin空軍参謀総長の辞任は、上記改革案に反対する空軍主要幹部から退任を迫られた結果であることが明らかになり、後任者のWilsbach大将(前ACC司令官)の上院承認手続きが順調に進む中、Allvin大将が退役する直前になって、改革の柱であった「ICC創設」まで中止が明らかになったということです
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後任の空軍参謀総長候補であるWilsbach大将(戦闘機操縦者)は、Allvin大将(輸送機操縦者)よりも年長の史上最高齢空軍トップ候補者で、ペンタゴン勤務経験がなく、アジア太平洋と中東に勤務経験が偏在する既に退役が決定していた人物です。

参謀総長就任のための公聴会では、「戦闘機の稼働率アップと戦闘機パイロットの飛行時間増加が必要」、「航空機部品のサプライチェーン改善が課題」、「第4世代戦闘機の維持も重要」等々と、「戦闘機命派」を隠さない発言が前面に出て、Allvin大将時代の「航空優勢概念の変化」や「無人機対処」など広い視野の議論が全く聞こえてこない状態で、まんぐーす的には「お先真っ暗」感を持っています

それから気になったのは、Meink新空軍長官が記者団に対中国体制整備について質問を受けた際の発言、「対中国関連の(空軍内の)組織改編計画の取りまとめはgetting closeだが、私は(中国との)対立・競争側面重視の強い信奉者ではない。政権は国土防衛支援を優先している(I’m not a big believer in the competition side of the house” and reiterated the administration’s priorities for supporting homeland defense)」です

トランプ政権の国家防衛戦略NDSが注目されます

Allvin大将の辞任発表と空軍大改革
「次の空軍人トップ」→https://holylandtokyo.com/2025/10/03/12931/
「改革反対勢力に追い出されるAllvin大将」→https://holylandtokyo.com/2025/08/27/12638/
「突然の辞任発表」→https://holylandtokyo.com/2025/08/20/12609/
「最大の課題はICC創設と運営」→https://holylandtokyo.com/2024/09/03/6230/
「空軍大改革の概要発表」→https://holylandtokyo.com/2024/02/16/5579/

トランプ政権のNDSは本土防衛重視
「間もなく公開のNDSは中南米重視」→https://holylandtokyo.com/2025/09/30/12893/

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