米空軍の新電子戦機 EA-37Bに同盟国も興味

イタリアに続き他の同盟国も関心:製造企業幹部語る

4月8日付 Defense-News は、米空軍がベトナム戦時に導入開始の EC-130H Compass Call電子戦機の後継として、米空軍が2023年9月から導入を開始して現在5機保有し、2027年と2028年に残り5機を受領予定のEA-37B Compass Call(2023年11月にEC-37BからEA-37Bへ名称変更)に関し、

製造企業であるBAE システムズとL3ハリス幹部の話として、2024年10月にイタリアへの売却(1機約 1000億円)を米国務省が承認したことを契機として、他の同盟国からも強い関心が寄せられていると紹介し、具体的国名に言及は避けたものの、「米軍とNATO との関係強化に大きく寄与する」との表現を使ったと報じています。

EA-37Bは、民間用ビジネスジェット機 Gulfstream GG50に、BAE システムズ社が開発した電子戦関連機器を、L3ハリスが組み込んで製造される電子戦機で、敵の通信、レーダー、航法信号を妨害したり、仕掛け爆弾 IED を無線信号で無効化可能で、また、敵の防空システムのレーダーや制御ネットワークや兵器間の情報通信を遮断し、米国や同盟国軍機の目標接近を容易にする役割を果たします

EA-37B の搭載電子戦機材は、能力向上改修を続けてきたEC-130Hと大差ないものの、EC-130H(速度 300ノット程度で上昇高度限界が 25000フィート)より Gulfstream G550(速度600ノット弱で高度 40000フィート飛行で航続距離は2倍)は、早く高く飛行可能なことから、より広範囲の敵に対し影響を与えることが可能となります。

また母機である Gulfstream G550が、人気のビジネスジェット機として世界で650機以上使用されていることから、世界中で 30時間以内に機体整備が可能な体制が確立されており、稼働率90%台後半が達成可能と製造企業幹部が豪語するほどの維持体制が存在する点も少数機運用上のポイントです。

前任のEC-130Hは、イラク戦争とアフガニスタン戦争で酷使され、2017年に米空軍が15機保有も、2024年には4機にまで減少し、実戦で継続的に運用可能な機数を確保困難な状態にあります。

一方で 2023年9月から導入を開始して現在5機部隊保有のEA-37Bですが、当初の2機が性能確認試験中で、次の 2機が操縦者&操作員訓練用に使用され、最新の1機は機器改修中とのことで、EA-37Bとしてまだ実戦投入段階にはありませんし、具体的な態勢完了時期は明らかにされていません。
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米空軍は「ステルス戦闘機やステルス爆撃機があるから大丈夫」との理屈で、使い捨て電子戦用デコイMALDを保有しているものの、敵の防空エリアに随伴突入型だった F-4G Phantom やEF-111 Raven の後継機導入予定はなく、唯一戦闘機タイプの電子戦機である米海軍「EA-18Gの他軍種支援用機体」も、2025年には退役する予定です

EA-37Bは基本的に、敵レーダー等に妨害をかけ味方の発見を妨害し、味方の生存性を高める「防御用」で、現有 EC-130Hと共に電子攻撃(EA: Electromagnetic Attack)能力は引き続き限定的で、無人ウイングマンCCAも、電子戦機器を搭載したとしても搭載量は限定的で、CCAがEC-37Bの取って代わることはなく、EC-37Bの能力を、F-35やF-15EXやCCA 搭載の電子戦装備が補完するようなイメージだと説明されています

このような中途半端なEW態勢で、「本格紛争に備えよ!」との掛け声だけがむなしく響き、F-35 や次期戦闘機に資金が集中して、電子戦機のような重要な脇役への投資が疎かになっているのでは・・・と米空軍OBや専門家から懸念の声が絶えない今日この頃で、以下過去記事で紹介する「道遠し」状態に変化の兆しは見えません

2023年9月の記事
「EA-37Bの初号機受領」→https://holylandtokyo.com/2023/09/20/5052/

海軍EA-18G電子戦機の他軍種支援用が2025年に退役
「大御所米空軍OB研究者が大懸念」→https://holylandtokyo.com/2022/05/27/3249/

米空軍とEA-18G関連の記事
「米空軍電子戦を荒野から救出する」→https://holylandtokyo.com/2016/06/24/7631/
「ステルス機VS EA-18G」→https://holylandtokyo.com/2014/04/25/8476/
「米空軍の電子戦文化を担う」→https://holylandtokyo.com/2012/09/12/9074/

米国防省EW関連の記事
「低性能な大量のEW兵器連携に圧倒される」→https://holylandtokyo.com/2024/06/24/5992/
「SpaceXのウクライナ対処に学べ」→https://holylandtokyo.com/2022/04/22/3173/
「電子戦とサイバーと情報戦を融合」→https://holylandtokyo.com/2020/11/17/389/
「国防省幹部、道は遠い」→https://holylandtokyo.com/2020/01/08/862/

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