CSIS研究者が開戦5か月後の状況を分析
開戦1か月後ではPAC-3残弾は3/4あったが・・・
両弾種とも戦前レベルへの回復は2030年半ばと推定
国防省がペトリ3倍・THAAD4倍製造へ企業と包括合意
対イラン作戦で使用した弾薬数を開戦前レベルまで回復するには、最近米陸軍がロッキード社とPAC-3製造に関し締結した9兆円規模の前例のない2032年度までの長期大型契約を含めても、少なくとも2030年夏頃までは時間が必要だと指摘し、対イラン作戦には問題が無いにしても、台湾有事での対中国作戦や、ロシア北朝鮮との対峙を想定した場合、極めて心許ない状況にあると紹介しています。
この分析を行ったCSISのMark Cancian上級顧問が率いるチームは、今年3月末にも開戦1カ月時点でのPAC-3とトマホーク巡航Mの使用量を推計し、その時点では両弾種とも約25%使用済との分析でしたから、PAC-3に関しは以後の4カ月間で開戦前在庫の約40%が消費されたこととなります。
なお、CSISのCancianチームの7月末時点での分析は、米主要メディアのNYT紙やWP紙、AP通信等々により紹介配信されていますが、厳密なCSISチームの発表分析現物が確認できず、同チームの7月27日と31日のリリースとAP配信記事や各記事等が掲載しているグラフも参考に、このブログ記事は書いています。
CSIS・Cancianチームによる7月末時点での分析では
●対イラン開戦直前時点(2月27日)でのPAC-3とTHAADの保有弾数は、それぞれ2330発と452発だったが、7月27日時点では、それぞれが推定760-830発と推定234~278発まで減少
●同チームは「弾道ミサイル防衛において、ペトリPAC-3とTHAADに代わる優れた代替兵器は存在しない」と結論付けているが、それでも敵弾道ミサイルやドローン等の迎撃漏れは発生しており、カタール航空作戦センターの閉鎖やバーレーン艦艇指揮所の被害、更にE-3早期警戒管制機やMQ-9の地上での被害など、人的犠牲者も含め、米軍は大きな損害を受けている
●現時点までの両弾種の増産契約や関連予算措置を踏まえると、PAC-3とTHAADの保有弾数が開戦直前段階レベルに回復するのは、共に「2029FYの4Q(2030年夏頃)」以降となっている(2つのグラフの読み取り)
●CSISチームリーダーのMark Cancian上級顧問はBBCの取材に対し、「同迎撃用ミサイル製造には数年必要。今日資金を投入しても、完成には3~4年、5年必要なこともあり得る」、「現在我々の手元にあるのは、2023年発注のミサイルだ」と語り、他の大規模紛争が生起した場合の対応に懸念が生じていると指摘している
●米国防省や関連企業へ、本件を問い合わせたが、回答は得られなかった
追記【国防省と関連企業がPAC-3とTHAAD大増産に向けた包括合意締結】
●8月3日、米国防省はPAC-3とTHAADの大増産に向け、Northrop Grumman社およびロッキード社と、包括合意文書に署名したと発表
●PAC-3製造能力を3倍に、THAADは4倍にすることを目標に、上記プライム企業2社だけではなく、関連部品を製造する下請け企業とも直接協議して関連投資を促し、両兵器を計14000発調達する計画
●Duffy調達担当国防次官補は、「Acquisition Transformation Strategy」の一環としての取り組みで、産業基盤の全レベルで強固なSupply-Chain構築を目指す、と説明している。
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CSISチームが今年3月末に開戦1カ月経過時点で分析した際は、PAC-3の開戦直前保有数をCSISは4000発と推計し、1か月間で約1000発消費したと見積もっていましたが、7月末時点の分析では、PAC-3開戦全保有は2330発で、5カ月間で約1500発消費したとしており、この間に様々な情報を精査して分析精度を高めたものと理解しています。
チームリーダーのCancian顧問よれば、3月末時点でPAC-3製造量は年間600発で、米国用と他は同盟国用を5分5分で製造しているとのことですが、対イラン作戦で中東湾岸諸国もPAC-3を相当使用し、ウクライナでは残弾少量に付け込んだロシアが猛攻撃を行う事態が報じられ、ウがPAC-3ライセンス生産を米国と交渉するに至っています(同時に、ウは欧州諸国と組み、PAC-3代替兵器開発を本格化)
2022年の2月にロシアによるウクライナ侵攻以来、弾薬不足や弾薬製造基盤の強化が叫ばれていますが、4年半経過した現時点でも、「対イラン攻撃1か月分の挽回に3~4年は必要」との産業基盤の現状能力です。
長期契約で需要に企業に安定感を与える取り組みも始まっていますが、「戦いが落ち着けば、弾薬需要が急減するのでは・・・」との軍需産業側の懸念を消すには長期に及ぶ政府側のコミットメントが必要で、これは日本を含む西側共通の課題です。
追記した「国防省と関連企業がPAC-3とTHAAD大増産に向けた包括合意:PAC-3製造能力を3倍に、THAADは4倍に」の具体的な達成時期は確認できませんでしたが、米国防省内で各種ドローンや安価な精密誘導兵器の調達と共に、この分野で世界のパイオニアとなって頂きたいものです。
CSISの関連webサイト2つ
https://www.csis.org/analysis/renewed-iran-war-would-test-diminished-interceptor-inventories
https://www.csis.org/analysis/six-reasons-why-united-states-low-munitions
CSISによる対イラン開戦1か月後の弾薬消費
「トマホークとPAC-3を1/4消費と推定」→https://holylandtokyo.com/2026/04/10/14379/
弾薬増産用の政府資金を流用
「米大統領がレイセオンを叱責」→https://holylandtokyo.com/2026/01/13/13676/
安価な新弾薬の緊急調達目指し
「安価CMを5年で3万発」→https://holylandtokyo.com/2026/07/27/15247/
「半値PAC-3を企業が提案」→https://holylandtokyo.com/2026/07/24/15267/
「ウと欧州企業がペトリの1/6価格で」→https://holylandtokyo.com/2026/07/01/15097/
「欧米渇望のウ製迎撃ドローン」→https://holylandtokyo.com/2026/03/17/14163/


7月30日付Defense-Newsが、2月末から約5ヵ月経過した対イラン作戦における、CSIS研究者が発表した防空&弾道ミサイル迎撃兵器(ペトリPAC-3とTHAAD)の使用数と残弾数推計を取り上げ、PAC-3は開戦時在庫の約65%を使用して残弾が1000発を切り推定760-830発で、THAADは約38%を使用して残弾は234~278発だとの分析結果を報じると共に、