米海軍のドローン&ミサイル防御用レーザー兵器開発と課題

今後5年間に1600億円以上の投資計画も
迎撃コスト抑制の夢は捨てきれないが・・・
技術的&運用上のハードルは依然高く・・・
「いつまで経っても配備まであと5年」を克服可能か?

4月28日付Defense-Newsの2本の記事が、米海軍艦艇の対ドローン防御や「Golden Dome構想」でのミサイル迎撃のため、米海軍が陸軍と協力しつつ、レーザー兵器開発に取り組んでいる様子と艦艇や空母へのレーザー兵器搭載の課題について取り上げているのでご紹介します。

末尾過去記事で一部を掲載している様に、これまで何度も取り上げてきたレーザー兵器(エネルギー兵器の一部)は、射撃1発のコストが低く(実質電力料金だけ)で、電力が確保できれば残弾数を気にすることなく無限に射撃継続可能なことから、数十年前から米国防省が巨額の費用をかけて開発に当たっていますが、技術的な難しさと運用上の難しさから、「いつまで経っても実用化まであと5年」と揶揄される状態が続いています。

しかし、昨今のドローン対処やミサイル防衛ニーズの高まりから「あきらめきれない開発案件」となっており、最近明らかになった米国防省の2027年度予算案でも、少なくとも1600億円を優に超える開発予算が積まれているようですが、陸軍や海兵隊で「地上車両に配備が始まった」とか、「イージス艦に試験搭載された」等の報道はあるものの、実戦で活躍したとの報に接したことがなく、本日は米海軍を例に状況をご紹介したいと思います。

【米陸軍と海軍が巡航ミサイル迎撃用レーザー開発に1000億円】
・2027年度予算によれば、「Golden Dome構想」の一環として、米陸軍&海軍共同の巡航ミサイル迎撃用レーザー兵器JLWS(Joint Laser Weapon System:2025年10月計画発表済)開発に、2027年度から31年度にかけ、計1000億円の開発予算を投じる模様。また、国防省は別途「Golden Dome」用のエネルギー兵器開発に、2027年度予算に600億円以上の予算を計上
・JLWSレーザー兵器は当初150kw級で開発をスタートし、巡航ミサイル迎撃のため300kw級に出力を向上させる計画が海軍予算文書に示されているが、ビーム制御部分は500kw級対応を目指している。

・JLWSには、陸軍が今年部隊配備を目指す防空レーザー「300 kw Indirect Fire Protection Capability-High Energy Laser (IFPC-HEL) system」や、海軍の防空レーザー「60kw High Energy Laser with Integrated Optical-Dazzler and Surveillance (HELIOS) system」の成果を生かすシステム開発となる

【空母George H.W. Bushが2025年10月にドローン迎撃試験に成功】
・4月20日米海軍は、米陸軍が開発中のレーザー兵器を、艦艇搭載を容易にするため「パレタイズ化」した20kw級の「Palletized High Energy Laser (P-HEL)」試験を、昨年10月に同空母で実施したと発表し、17機からなる標的ドローンを発見、追尾し、同レーザー兵器で無効化することに成功したと明らかに。目標にはドローンの群れも含まれていた
・空母や艦艇搭載が容易なパレット化(コンテナ化)されたP-HEL は、米陸軍が歩兵用走行車両に搭載して配備開始した「LOCUST Laser Weapon System」をベースにしたもの。なおLOCUSTは海兵隊の戦術車両への搭載契約が2023年に締結されているもの

【海軍艦艇や空母でのレーザー兵器活用の難しさ等】
・海軍は艦艇にレーザー兵器を搭載する改修期間を短縮するため、パレタイズ化やコンテナ化したタイプ追及に変化しており、空母ブッシュでの試験はパレタイズ化の有効性を確認。また電力確保面でも、原子力空母や最新イージスシステム搭載用に発電能力を強化された艦艇では問題が生じないことも確認

・ただし、レーザーは雲や霧や大気中の水蒸気により減衰するため、目標への影響力が気象条件により安定せず、また海面からの立ち上る水蒸気や大気温度の不安定さが光線進路を「ゆがめる」こともあり、精密な照準を基礎とするレーザー兵器の運用を難しくしている。更に海水の塩分は精密機器であるレーザー発生装置の維持整備を難しくしている

・米海軍レーザー兵器開発の一つの大目標である、艦艇や空母への脅威であるミサイル迎撃に関しては、例えば、巡航ミサイルはドローンより強固な部材で構成され、無効化にはより長時間のレーザー連続照射が必要であることや、ドローンより飛翔速度が格段に高速で連続レーザー照準が極めて困難であることから、300kw程度の出力レーザーでも技術が未成熟である
・またミサイル無効化に長時間の連続レーザー照射が必要となれば、敵によるミサイルとドローンの飽和攻撃にさらされた場合、連続発射が可能なレーザー兵器でも対処能力には限界が生じる

・空母にレーザー防御兵器を搭載した場合の運用上の課題には、空母周辺を艦載機が様々な高度やパターンで飛行し、甲板上で多数の運用要員が入り乱れて担当業務を遂行する必要がある艦載機離発着とレーザー防御兵器の同時運用が、飛行安全と地上作業安全の両面から極めて難しい点も指摘されている。
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米陸軍や海兵隊で「地上車両に配備が始まった」と言っても、私が知る限りで装甲兵員輸送車両に数十台規模であり、「本格配備」ではなく「試験的な配備」に留まっている印象です。

米空軍も基地防御用のレーザー兵器やエネルギー兵器の評価を進めているようですが、航空機搭載型レーザー兵器については、約8000億円を投入した挙句、2010年代に開発を中止して以後は「音沙汰無し」状態と認識しています。

日本では、防衛省の防衛装備庁が作成した「砲弾やドローン迎撃用レーザー兵器開発」の紹介ショート動画を目にしましたが、基礎的な研究との印象です。

米軍開発の説明は、装備品名の短縮形(JLWS、IFPC-HEL、P-HEL、LOCUST等々)が飛び交うだけで眠気を誘う世界ですが、近い将来に「目の覚めるような」成功話に接する機会があるのでしょうか? なさそうです。

米陸軍のレーザー兵器開発
「陸軍前線兵士はおよび腰」→https://holylandtokyo.com/2025/08/26/12578/
「レイセオン製を断念」→https://holylandtokyo.com/2024/05/16/5780/
「300KW級を試作契約」→https://holylandtokyo.com/2023/10/18/5138/
「50KW級搭載車両3台試験導入」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623

米海軍のレーザー兵器開発
「HELIOS試験成功」→https://holylandtokyo.com/2025/03/14/10781/
「最新イージス艦に無人機対処用を」→https://holylandtokyo.com/2020/03/16/783/
「レーザーは米海軍が先行」→https://holylandtokyo.com/2018/03/29/7055/

イスラエルのレーザー兵器開発
「戦闘機やヘリ搭載兵器を発注」→https://holylandtokyo.com/2026/03/24/14228/
「湾岸諸国が関心」→https://holylandtokyo.com/2025/03/10/10859/
「100kw級でIron Beam試験成功」→https://holylandtokyo.com/2022/04/21/3143/

ダメだった米空軍の戦闘機搭載防御用レーザー兵器
「戦闘機防御用から撤退へ」→https://holylandtokyo.com/2020/07/03/564/
「F-15用自己防御レーザー試験」→https://holylandtokyo.com/2019/05/08/6731/
「2021年に戦闘機搭載めざし」→https://holylandtokyo.com/2016/02/25/7758/

音沙汰無し:特殊作戦軍AC-130への搭載の夢
「AC-130用兵器の企業地上試験終了」→https://holylandtokyo.com/2021/10/21/2332/
「特殊作戦軍がAC-130搭載構想」→https://holylandtokyo.com/2016/07/13/7588/

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