様々な想定下で 26回の War-Game
発電用天然ガス等枯渇が深刻な影響を
中国にとって低リスク・低コストの選択肢ではないが
2022年以降、中国が台湾封鎖を模擬した軍事演習を数多く実施している一方で、CSISは中国による台湾封鎖(blockade of Taiwan)を、「北京にとって低リスク・低コストの選択肢ではないだろう。いかなる封鎖も、抑制が困難なエスカレーション圧力を生み出し、大規模な戦争につながる可能性がある」と認識しつつも、
同時に、恐らくWar-Game 参加者の反応等から、「封鎖は、流血と危険を伴う中国の水陸両用侵攻を必要とせずに、台湾が中国との「統一」に同意する可能性を提供する、北京にとって魅力的な選択肢である」とも評価しており、一度開始されると、プレーヤーの思惑により、どう事態が推移するか読みにくい事象だとCSISは見ているようです。
そして報告書は、報告書の結果や提言を踏まえ、台湾と米国が封鎖に備えた必要な準備を行うことで、封鎖が高い代償を伴うリスクの高い選択肢であることを中国に意識させ、抑止力を強化すべきと、報告書の意義を説明しています。
以下では、同レポートを紹介する8月1日付 Defense-News が、膨大なレポートの一部をピックアップ紹介している記事を、更にまんぐーすの好みで「つまみ食い」&「短文切り抜き」紹介させていただきます。いつもの記事よりも、更に誤解や誤認識が含まれる可能性大との前提でご覧ください。
●本War-Gameで重要な封鎖の厳しさ設定は、単なる「停船捜索」から、「米国と日本の基地にミサイルを発射する全面的な軍事作戦」まで多岐
●その他の変数として、「台湾関連インフラの強靭性程度」、「燃料輸送船舶の追加調達程度」、「中国ミサイル攻撃の強度」、「日本が台湾防衛を選択するか否か」、「戦闘地域の拡大程度」等々を設定。またプレーヤーの意思決定裁量範囲も制約有と制約なしで実施
●エネルギーの大部分を輸入に依存する台湾は封鎖に対し脆弱で、封鎖により台湾の発電能力が大幅に低下し、島が機能しなくなる可能性がある。また、ロシアがウクライナに対し行っている様な、電力網への攻撃を封鎖を補完するために実施することも想定される
●封鎖により台湾電力量を2割削減できれば、米国を始め世界経済を支える台湾のコンピューターチップ産業を含む全ての製造業が停止する
●最も米側に厳しい「悪夢のシナリオ」では、台湾の電力網や日本とグアムの米空軍基地への(中国ミサイル)攻撃が含まれるが、米国は中国本土空軍基地への攻撃を抑制した。この想定では、米国と台湾は空母2隻を含む水上艦艇 33隻と商船153隻を失い、台湾の電力供給は需要の24%しか満たせず、経済崩壊をはるかに超え、台湾国民の最低限の健康と安全を守るレベルも満たさないまでに低下した。
●「悪夢のシナリオ」時、逆に中国側では「米の空爆リスクなしに沿岸前線の空軍基地に中国軍機を集結可能」で、「中国港湾や沿岸に避難した中国の軍艦や潜水艦の生存性が大幅に向上」した
●別のシナリオ、例えば、台湾が電カインフラの強靭性を高め、米国がより積極的な対処姿勢を取った想定下では、多数の商船が台湾への物資輸送可能になり、台湾需要の大部分を満たす十分な電力が確保された。逆に、中国の空軍と海軍の損失は急増した。
●26 シナリオの内、5個シナリオでは、参加プレーヤーは行動大方針に縛られることなく、紛争終結のために「エスカレート」、「non エスカレート」、「交渉」を自由選択制にした。この想定で大部分のプレーヤーは「エスカレート」に消極的だったが、しばしば「小規模なエスカレーション」を行って相手にシグナルを送った結果、相手の「反撃的なエスカレーション」を招き、両海軍の砲撃戦に発展して損害を出している
●CSIS報告書は、米国と台湾が封鎖防止の抑止力強化のために取り組むべき準備として、「多数の商船と必要な乗組員を確保、特にための十分な液化天然ガス (LNG)タンカー確保」を上げ、更に民間保険会社に代わる船舶への政府保険の提供も提言している。
●(まんぐーすは理解不能ですが、)燃料輸送では、大部分の船舶は積荷を日本の港で降ろし、台湾を航行する船舶に積み替えるとしており、この積み替え(Transshipment)が鍵だと報告書は表現している
●当然、台湾が石油、天然ガス、石炭の備蓄を増やすことや、5月に閉鎖された最後の原子カ発電所の再稼働も検討すべきと提言されている
●米国に対しては、米海軍は船団護衛能力を向上させる必要があると提言し、空輸については、台湾のニーズを満たすには不十分だが、状況によっては、空輸が台湾国民の土気を向上させる効果が期待できると報告書は触れている
●報告書は、中国による台湾封鎖と米国等による報復は、中国と米国と世界経済に壊滅的な影響を与える可能性が高いことから、常に外交オプションが存在するようしておくことが重要だとし、一案として「米国と台湾の創造的な提案で、中国が勝利を宣言し、連合軍にとって受け入れ可能なコストで封鎖を解除する方策追求」の可能性を上げている
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同レポート紹介のCSIS作の動画(2分30秒)
燃料輸送に関する日本での積み替え(Transshipment)に関する記事原文は、「Transshipment will be key: most merchant ships won’ t run a blockade, but their cargo can be unloaded in Japanese ports, and then reloaded aboard vessels that will make the Taiwan run.」で、なぜそうなるのか理解できませんが、ご紹介しておきます
最後の「中国に勝利を言させる」落としどころと共に、誤解や誤認識がありそうなので、ご興味のある方は、是非、以下のレポート現物をご確認ください
「”Creative offers by the United States and Taiwan might allow China to declare victory and lift the blockade at an acceptable cost to the coalition」
CSISの現物レポート紹介webページ
→ https://www.csis.org/analysis/lights-out-wargaming-chinese-blockade-taiwan?auHash=YOekg8PEUS-AyxOwx5U5XxcVYBi1F2c3TfECPX6BkU4
CSIS による台湾関連レポート記事
空母 2隻・数10隻の艦艇と数百機の航空機喪失、
台湾経済大打撃・米軍の影響力当面喪失
「台湾有事の War-game 結果」→https://holylandtokyo.com/2023/01/11/4135/
「台湾軍に非対称戦術を迫る」→https://holylandtokyo.com/2023/01/16/4160/
別の米国専門家の指摘
「旧態然とした台湾軍の根深い問題」→ https://holylandtokyo.com/2023/01/04/4103/

